- ナノ -


木ノ葉隠れ創設編

-第1次忍界大戦-


そらからまた時が経ち柱間の暗殺計画事件から二年後…木ノ葉隠れの里を設立してから約十二年後の事だった。二年前の柱間とマダラの予想は最悪の形で当たる事になる。



少し前からさざ波のような不安は感じていた。しかしセンリが突然火影室に呼び出され聞かされた事は自分の予想を幾らも上回る言葉だった。



『戦争……まさか…』


戦争が始まる。

その言葉が柱間の口から紡がれた数秒後は何かに全身が摘ままれた様に動かなくなった。センリは俄に信じ切れずに隣に立つマダラと扉間とを交互に見た。


「つい先ほど火の国の国境警備をしている忍から連絡があった。恐らく……いや、すでにもう戦争は始まっている。火の国に他里の忍が攻め入ってくるのも時間の問題だろう」


説明したのはマダラだったが、その表情はここ何年か見なかったくらいに厳しく、その言葉が嘘ではない事はすぐにセンリには分かった。


『一体どうして』


平静を保ってはいたが、センリの心臓の鼓動は僅かに速まっていた。


「戦争の発端は砂隠れと岩隠れの忍達のいざこざらしいが…詳しくは分からん。それぞれの国境付近ではすでに戦闘が幾つも勃発しているらしく、それがどんどん大きくなり……火の国周辺でも戦闘が確認された。

恐らくどこの国でも里の地盤やシステムが完全なものになり、他里の内状を探る意味合いも兼ねての戦いだろうが……多分それがここまで大きなものになり、戦闘に発展したとみている」


柱間の声は冷静ではあったが、それでもどこか焦った様な呼吸を含んでいた。


「これからそれぞれ忍達の隊を決めて戦いに送り出さなければならない」

『子ども達は…―』


また戦いが始まると聞いてセンリが真っ先に心配したのは子ども達の事だった。元々幼い子どもを戦場に送り出さな為に柱間とマダラが望んだ里だ。センリの気持ちは痛い程分かっている柱間は安心させるように手を前に出す。


「己で戦いに出たいと志願した忍だとしても十二歳以下は絶対に戦場には送らない事はもう決めてある」


十二歳、という数字を聞いてそれが学校を修了する時の年齢だからだとセンリはすぐに理解した。しかし十二歳以上だったとしてもまだ未成年だ。センリの表情は晴れない。


「まだそれ以外の全ての忍が戦場に赴くと決まった訳では無い。戦力が足りている状態なら若年者の忍を送り出す必要は無い。一体どの程度の規模の戦争になるか分かった訳では無いが…」


マダラが付け加えて説明した。


「どちらにせよ他里の忍が攻撃してくるようなら戦いに備えて、そして敵と戦うしか道は無い。今里の忍達全員にそれを知らせている。この後すぐに隊を組み、早々に里外に送り出す」


扉間は普段通りの口調で、声にも一切の乱れは無かった。

信じ切れ無かった言葉はもう理解するしかないのだとセンリは悟った。


『そう、なの』


深刻そうに瞳を伏せるセンリの表情は何年ぶりだろうかとマダラは思ったが、事態は一刻を争う。ここでもたついてはいられない。


「柱間には指示を出す火影という立場上なるべくなら里内にいて欲しいが、それも場合によりけりだ。俺も扉間も戦いの場へ出向く」


マダラの話し方はまるで数年前の戦国時代を思い出させた。センリは鋭い瞳を同じように強く見返す。


『私も戦う』


凛とした声が火影室に響く。三人とも驚いた様子とはいかなかったが、それでも微かに顔を顰めた。


『私なら隊を組まなかったとしても戦える。もし怪我人が多く出る様なら里で治療もする』


センリが戦場に出るということはハッキリいえば木ノ葉にとって大きな要となる。センリも自分の実力は理解しているつもりだったし、今の扉間くらいの忍が何十人束になってかかってきたとしても勝てる自信もあった。


「…分かった。センリも戦闘員として数え、作戦を考える」


柱間は頷いて小さく言った。意志のこもった、燃える様な瞳の強さは柱間も見覚えがあった。何度も戦ってきたセンリの顔だ。


『私、武器庫の整理してくる。マダラの分も』


一通り話を終えるとセンリはマダラに向かって言った。戦争が始まるのならば今までの武器をきちんと整理する必要がある。マダラは無言で頷いた。


「一族の当主達をそれぞれ呼んで来る。そこでまた話をしなければならんからな」


センリに続き扉間もそう言って二人は火影室を出て行った。



「やはり…危惧した通りになってしまったか」


二人が出て行った後で柱間が大きく溜め息をついて頭を抱えた。


「…なってしまったものは仕方ない。もし戦争になったとしてもすぐに終わらせる」


マダラは火影室から里の家々を見下ろした。これから戦争が始まるという日に相応しくない、真っ青な青空だった。

幼い頃と同じ状況だが、その時とは全く異なる覚悟を決めたような友の横顔を見て柱間は心を奮いたたせた。


「この里は…絶対に守ってみせる」


ささやきのような限りなく小さな声だったが、それでも柱間の耳にはそれがハッキリと聞こえた。
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