- ナノ -


木ノ葉隠れ創設編

-火影と側近-


「ここに居たか…」


突然後ろから声が聞こえて三人が同時に振り返った。扉間だった。


「こんな所で何油売ってる!火の国の大名達が会談に来る頃だぞ!」


扉間はどうやら三人を探していたようで少し息を荒らげてそう叫んだ。


『えっ、そうだったの?』


センリが柱間を見る。バツの悪そうな顔を見る限りどうやら忘れていたようだ。


「そういえばそれも二人に言いに来たのだった…」


一番重要なことを忘れている柱間に呆れたような顔をするマダラ。扉間の厳しい目を見て柱間は苦笑いした。

―――――――――――――――


「オレとマダラはもちろんだが………大名たちがどうしてもセンリに会いたいと言っていてな」



崖の上から降りて会談する場所に向かう途中柱間が少し参った様子で言った。マダラと柱間、それから扉間も何度か大名たちと会ったことはあったがセンリの方は一度も顔を合わせたことがなかった。



『?』

センリが不思議そうに首を傾げた。


「まあ大名たちも一目お前を見れば満足するだろう」


少し後ろを歩くセンリを見やりながら柱間がため息と共に呟いた。



「老いぼれ共が色気づきやがって…」

マダラが憎々しげに言う。


『大名さまって偉い人たちなんでしょ?いつもそんな感じなの?マダラ』


その態度に少々驚きながら隣を歩くマダラを見上げる。


「いや、いつもマダラは頑張って感情を抑えているぞ」


それがさぞ面白いことのように柱間が振り返って言う。


『マダラってばすぐに顔に出るから分かっちゃうよね』


くすくす笑いながらマダラをツンツンと指さすセンリ。拗ねたようにうるせェと言いながらも決して怒った様子ではないマダラ。三人の様子を後ろから見ながら扉間はこの三人の仲の良さには少々驚いていた。

普段バカみたいに明るい柱間とセンリには同じようなにおいを感じるが、根本的なところは意外と違う。それに普段心穏やかに話すところを見た事がないようなマダラでさえも二人の前では表情を緩めている。友のように見えるが姉弟のようにも見える。三人の関係はとても不思議でそれでいて違和感がない。ずっと昔から一緒に居たような、そんな感じだと扉間は考えながら歩いていた。



十分も歩けば“火”の印がついた大きな邸に着いた。そこには会議をするための部屋があり、大体そこで大名や上役たちと里についての相談をするのだ。

四人が邸に入ろうとした時、道の先から幼い子どもが駆け寄って来た。


「父さま!センリ!」


それは柱間の息子である浅葱だった。父親譲りの黒髪を揺らしながらこちらへ走ってきた。


「浅葱か。どうした?」

『こんにちは、浅葱くん』


センリが膝を曲げて浅葱の目線に合わせればにっこりと笑う浅葱。その表情は幼い頃の柱間そっくりだ。


「おかいものしに来たんだよ!ホラ、母さまと」


浅葱が振り返り後ろを指さすと道の影からミトが姿を現した。


「ねえセンリ!いっしょにあそぼうよ!父さまはどうせいそがしいから…」


浅葱がじとっと柱間を見る。柱間は乾いた笑い声を上げながら困ったように息子を見る。


「浅葱、悪いんだがセンリはこれから…」

『いいよ。遊ぼう!』


柱間の言葉を遮りセンリが浅葱に向かってにっこりする。側に来たミトが窮したように柱間たちを見た。


「良いのですか?柱間もセンリもこれから会談か何かあるのでしょう?」


しかしセンリは問題ないというように親指を立てる。


『大丈夫!ね、柱間、ちょっと行ってきていいでしょう?少ししたら戻るから』



見下ろせば同じようにキラキラした目で自分を見つめるセンリと息子。そんな目で見上げられたらもちろん頷くしかない。


「まあ、センリの出席は強制ではないからな…」


柱間の返事を聞いて浅葱に笑みを向けるセンリ。威厳の無い兄の姿に呆れる扉間。


「別に大名たちに会わせる義理もないんだから大丈夫だろう。適当に取り繕えばいいさ」


マダラも賛成した。
途端に浅葱はセンリの手を握り引っ張る。


「じゃあかいものは母さまにまかせていっしょに家に行こう!」


小さな体でグイグイと一生懸命自分を引っ張る浅葱を制しながらセンリはミトを振り返る。


「はやくはやく!」

『あ、じゃあミトが帰ってくるまでお家で遊んでるから…!』


小さな手に引っ張られていくセンリをミトはクスクス笑って見送った。センリが着いていれば安心だ。


「浅葱は本当にセンリが好きですね」


ミトは微笑んだが柱間は走り去る二人を見て頭に手を当て苦笑いした。


「いつもすまんな、マダラ」


会う度にセンリに遊んでほしいとせがむ息子に代わって柱間がマダラに謝った。


「あれはあれでセンリは喜んでる」


センリが子どもを好きなことは今に始まったことではないのでマダラは別に気にしていなかった。

[ 7/230 ]

[← ] [ →]

back