- ナノ -


木ノ葉隠れ創設編

-ただの友、師弟、夫婦、微かな予感-


尾獣の件に関しては、木ノ葉隠れが出来てから四年も経つと地盤は完全なものになり、あとは他里が確実なものになるのを待つのみとなった。


カルマは、封印術が弱まっている時期においては外に呼び出す事が出来た。実体化する事もできたし、人間の姿になる事も出来た。カルマがあまり外に出たがる事は無いが、一度自らセンリの中から出てきた事があった。


「これは我の勘にすぎぬが、うちはマダラの中からインドラの魂の欠片が剥がれたかもしれん」

カルマの言葉に、数秒遅れてセンリが反応する。

『えっ、ホントに?そうなったらマダラは死んじゃうだろうって言ってなかったっけ?』

何年も前のカルマとの会話を思い出し、センリは少し焦ったように言葉を返した。


「確かにそうだと我は考えていた。だが…――これは完全に我の感覚でしかないが――あの日、御主が婚姻をした日、言葉では表せぬ不思議な感覚をうちはマダラから感じたのだ。あやつの精神から何か棘のようなものが抜かれたような…」

『それが…インドラのチャクラの…欠片ってこと?』

「それは分からぬ。しかし…何か良い予感を感じた」

神妙な顔付きで、確証はないと言っていたが、センリはその事実を信じた。


『なるほどね…。実は私も…結婚してからのマダラはなんて言うかこう、言葉じゃ中々言い表せないんだけど……ちょっと変わったっていうか。本当に少しだけだけど、柔らかくなったような気がしてたんだよね。私も言葉にすると難しいんだけど…』


実際、マダラは昔より確実に笑顔が増えた。柱間といる時は特に、子どもの頃のような無邪気な表情を浮かべている時もある。 戦時中というのもあったのかもしれないが、明らかにその時より丸くなったとセンリは思っていた。口調や目付き、というよりは物事の考え方や捉え方等だ。

今も忍としての実力を重視していたが、それでも周囲への接し方は良いものになっていた。

ヒルゼンらと手合わせするにも容赦はないが、それは彼等に本当に強くなって欲しいという思いからの行動で、「強くなるにはそれに伴った意思が必要」だとうちはの子ども達に教えている時もあったし、それを考えるとインドラの魂が剥がれたというのも頷ける。



「それでこれも我の憶測に過ぎぬが……千手柱間からもアシュラの魂が離れたのではないかと見ている。兄弟喧嘩は本当に収まった、と見ていいのかもしれんな」


それを聞くとセンリの心がふわっと喜びに包まれた。


「よくやってくれた、センリ。ハゴロモもあの世で喜んでいるのではないか?」


センリが心から嬉しそうな笑みを浮かべるのを見て褒め讃えた。しかしセンリはブンブンと首を横に振った。


『私の力じゃないよ!柱間とマダラが協力して里を守って…それに、他の仲間達が応援してくれたから!これで終わりじゃない。これから先も私はちゃんとみんなを見ていくから!』


確かにそうかもしれないと、センリの花が咲いたような笑顔を見てカルマは思っていた。

尾獣の事も、他里の事も、木ノ葉隠れの未来を担う子ども達の事も、センリには考える事もやる事もまだ沢山あった。



うちは一族も、その他の一族も贔屓はしたりせずにセンリは平等に接した。

子ども達の修業を見て欲しいと頼まれればそうしたし、子ども達に遊んで欲しいと言われれば全力で遊んだ。子どもが好きなセンリからしたら体力が無くなる程遊んだとしても楽しかった。


中々表情を崩さない扉間だったが、ヒルゼン達を弟子に持つようになってから色々と思う事もある様だった。幼い頃戦死した兄弟に重ねて見ているのかもしれないと柱間は思っていたが、師匠の方が弟子から学ぶ事も多くある様で、扉間の様子も少しずつ変わっていった。

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