- ナノ -


木ノ葉隠れ創設編

-ただの友、師弟、夫婦、微かな予感-


婚姻したからと言って特別今までの生活に変わりがある訳ではなかった。最初のうちこそ商店街を歩いていれば祝いの言葉を投げかけられたり、祝いの品を貰ったりもしたが、それもだんだんと収まってはくる。

二人が自ら口外せずとも、里のほとんどの者が婚姻の事実を知っていった。

名前も知らない商人に「おめでとうございます」と言われる事もあったが、里の者達全員が祝ってくれているようで、嬉しく心があたたかくなった。そう言われる度にセンリはとびきりの笑顔を返していた。


そしてその頃には、ほとんど扉間は火影室に姿を現さなくなった。業務を放棄したわけではなく、火影の側近は完全にマダラに任せ、扉間にも個人でやる事が増えたからでもあったし、その他にも理由はあった。



『弟子?』


火影室でセンリはその理由を柱間から聞いていた。


「そうだ。子どもの忍びの中で実力がある者を三人選んで、その子どもたちに修業をつけてやるんだ」

一族間でも修業時に大人の忍が子ども達に教える事はあったが、師弟となるとまた変わってくるのだろうか。センリは考えたが、確かにそれはいい案かもしれないと結論を出した。


『へえ〜!それいいね!師匠と弟子、かあ。いい響き!』


選ばれた子どもの中に猿飛サスケの息子、ヒルゼンも居た。その他の二名は、水戸門ホムラという忍とうたたねコハルというくの一だ。三名とも弱冠六歳という年齢ながらその実力はそれなりの大人の忍を越すという。


「猿飛サスケの息子か。イズナも期待できる忍と言っていたからな」


ふと思い出した様にマダラが言う。
センリもヒルゼンとは何度か手合わせをした事がある。マダラが七つの時には及ばないが、確かに腕の立つ忍の子どもだ。


「そうだろう?暇な時はオレも修業を付けてやろうと思ってな!」

楽しみだと言って柱間は笑ったが、マダラは何やら不機嫌顔だ。


「お前…俺に仕事を押し付けるつもりだな」

『たまにはいいじゃない。それにマダラも手合わせしてみたいんでしょう』


元来マダラは戦う事や手合わせの類が好きだ。ここ何年かは側近の仕事に時間を費やす事が多かったので体も鈍っている事だろう。



それから柱間も自分で言った通り、実務や任務が無い時はヒルゼン達の修業を扉間と共に見る様になって、マダラもセンリの予想通りたまにそこに参加しているようだった。

家に帰ってきては「手応えがない」等と言って首を振っていたが、ヒルゼンらと手合わせしている時のマダラは何だか楽しそうだった。扉間達の修業の様子を森の木の影から見ながらセンリは微笑みを浮かべた。


皆で修業している時には水や休憩食を差し入れしてやったり、組手や実践訓練ではなく普通に子ども達と遊んだり食事をしたりと、センリの方も毎日が楽しかった。



日にちがたつ事に忍の子ども達も増えて、それに伴って育成施設で教鞭をとる大人の忍達も増えた。イズナも今では一番の先輩として、皆を引っ張って行く立場だった。


そのうち浅葱も育成施設に入れる年齢になり、勉学に励む様になった。この間までたどたどしい言葉遣いで遊んでいたのに子どもの成長は本当に早いものだとセンリは考えていたが、思えばマダラやイズナや、ハゴロモ達の成長もあっという間だったなと思い出した。



センリに加えてマダラの体も本当に成長が止まってしまったようで、突然尿意が無くなってマダラは驚いた様子で報告をしてきた。

「用を足さなくていいというのは便利なものだな」

そう言って感心した様子だったが、確かにこれからは後ろに立たれて止まる事はなくなるから良かったんじゃないかとセンリも思って笑いがこみ上げた。センリからすると尿意が無い事を少し寂しく感じる事があったが、マダラは逆だった様でそれには少し安心していた。
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