- ナノ -


木ノ葉隠れ創設編

-不死になった夫、捧げる愛-


眠ってしまった柱間の意識をどうにか戻して扉間は兄を半ば引き摺るようにして寝室に消えていった。

他の者達も若干千鳥足になりながらも夜の町へと出て、自宅に帰って行った。最後にはかなり酔っ払っていた山中みのりは、一族の集落同士が近い奈良一族の忍に抱えられて夜に消えた。センリは皆の明日の任務に支障がないか心配になったが、でもたまにはこういう騒いで楽しめる場は必要だろうと考えてむしろ嬉しくなった。

ヤヨイもそこそこ酔っ払っていて、「わたひもセンリさんがすきですう」と最後まで引っ付いて離れなかったのでマダラが無理矢理引き離し、迎えに来た彼女の兄に引き渡した。


最後に少しテーブルを整えたとはいえ使用人達は後片付けが大変だろうかと申し訳なく思いながらセンリは自宅までの寒い帰り道をマダラと共に歩いていた。

冬の夜は、特に自宅付近の森道は寒かったが酒が入っているおかげで体はほんのりとあたたかかった。だいぶ酔っていたようにみえたマダラだったが足取りはいつも通りで、しかし血色良くなった頬は珍しものだったので隣を歩きながらそれを見上げてセンリは笑った。センリの笑い声に気付きマダラが何かとそれを見つめた。


『たのしかったね』


柔らかな笑みを浮かべてセンリが言うのでつられてマダラも微笑んだ。


「戦争がある頃はいつ戦うか分からないから酔うまで呑むなんて事はなかったからな」

そういえばマダラの父であるタジマもいつも頬が赤くなる前に止めていたなあとセンリも思い出す。


『そうだよね。嬉しいことだね』


しかしマダラはよくよく先程までの宴を思い出し、微かに不愉快な気分になった。
遠くに自宅が見えてきたところでマダラはふと呟いた。


「…センリは俺のだ」


鼻歌を唄っていたセンリはそれを止めて少し驚いた様にマダラを見上げたあとふっと笑い出した。


『ふふ!別にみんな本気で言ってないから大丈夫だよ!』

センリは可笑しそうに笑っていたがマダラはじっとりと見下ろした。


「…」

そういう事に関しては何故か深く受け止めないセンリにどうやって分からせようかと考えたがいい案は浮かばなかった。少しモヤモヤする心の靄を消したくてマダラは立ち止まって隣を歩くセンリを抱き締めた。


『!…マダラ?』


突然自分をきつく抱き締める腕に吃驚してセンリはその名前を呼ぶ。細い肩に顔を埋めていたマダラだったが、ふとセンリの顔をじっと見つめ、噛み付くように口付けた。またもやいきなりの事にセンリはあっと驚くが、すぐにその開いた唇の隙間から熱い舌が入り込んできて自分の舌が絡め取られた。


『んっ、ま、マダラ…!待っ……ここ外だか、ら…!』

マダラの肩を押し返して何とか離れようとしたが体に回された腕がきつく抱き締めて、右手も頭の後ろに回され阻止されて半ば無理矢理される口付けを拒否する事は出来なかった。酒を飲んだ後の舌は熱く、その舌が口内を犯し、アルコールの香りだらけでセンリは息が止まりそうだった。

ただでさえ火照った体なのにマダラの口付けに翻弄されてもう呼吸が苦しくなった時やっとその唇が離れた。

センリは一気に酸素を吸い込んだが、しばらく呼吸が元に戻らなかった。


『マ、ダラってば…!』

怒ったようなセンリだったが上目遣いの潤んだ瞳では全く効果が無い。マダラは少々荒い息を吐きながらも余裕そうで、いっぱいいっぱいといったセンリを見てニヤリと笑った。


「今度は柱間の前でしてやろうか」

『だっ、だめ!絶対だめ!』


意地悪そうな笑顔はろくな事ではないと思っていたが予想以上の事を言われてセンリは焦って制する。


『絶対だめだからね。そんなっ…―』


センリの言葉を遮り再び口付けるマダラだったが、これ以上すると止まらなくなりそうだと諦めて仕方なく柔らかな唇から離れた。


『はあっ、……もう……やめてって言ってるのに……こうなったら…逃げるが勝ち!』

「あっ、おい、」

言うが早いか突然マダラの前からセンリの姿が消える。


「(光速移動しやがったな…)」


センリが光速で家まで帰ったと理解してマダラは軽く溜め息を吐いて後を追うように走った。

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