木ノ葉隠れ創設編
-火影と側近-
「それに…この里の仲間に入りたいという者たちもどんどん増えている。猿飛一族に志村一族も仲間に入りたいそうだからな」
柱間が嬉しそうに手を広げる。
「うそだろ……本当かよ、それ」
マダラの驚いたような表情を見る限り、センリにはどういった一族かは分からなかったが相当すごい事なのだと悟った。
『猿飛?』
どこかで聞いたことのある名前にセンリは首を傾げた。戦争で戦った事があったか思い返してみるが分からなかった。
「どちらも有名でかなり手練の一族ぞ」
見かねて柱間が説明をする。
「その他にもまだまだ……この里はもっと大きくなるぞ!」
マダラとセンリは顔を見合わせる。センリが大きく作った建物の数々はかなり意味があったようだ。
「そろそろ里の名前を決めないとな。何か案あるか?」
柱間の言葉にセンリはマダラを見上げる。マダラはそれを聞いて手に持つ穴の空いた木の葉をじっと見やる。マダラがその小さな穴から里を覗くと色とりどりの家々が見えた。
「……木ノ葉、隠れの里…ってのはどうだ?」
そしてふと思いついたように小さく言った。すると途端に柱間がガクッと肩を落とした。
「単純ぞ………ヒネリもないぞ………見たままぞ……」
「火影とどう違うんだコラ!てかまだ治ってねーのかその落ち込み癖!」
ずぅーんと沈む柱間に鋭く突っ込みを入れるマダラはセンリの記憶にあるその二人の姿だった。昔の仲に戻った二人に挟まれてセンリは声を上げて笑った。
『柱間、何その五七五!』
楽しそうに笑うセンリを見て柱間は立ち直ってニコニコした。マダラはため息をつく。
「それで………その火影ってのは里にずっと居て皆を見守る役目ってことか?」
再び真剣な顔に戻り問いかけるマダラ。柱間はうーんと唸り手を顎に当てた。
「それもあるがそういう意味だけじゃない。これから里作りが本格化するに当たって火影も忙しくなるだろう……」
すると柱間は顎に手を当てたまま少し考えるような仕草をした。センリとマダラが見つめていると柱間はマダラの方を見る。
「オレがその火影になるかはまだ確定ではないが……もしそうなったとしたら、マダラ。火影の側近をやってくれないか?」
マダラがその言葉を理解するには少し時間がかかったが、自分を見つめる真剣な柱間の瞳を見て冗談を言っている訳では無いとわかった。
「お前無しじゃオレはやっていけそうにない」
柱間は破顔してマダラを頼るようにそう言った。
『それいいね!二人はこの里を作った一族の長だったし、きっとみんな納得するよ!』
センリも喜んで賛成した。
「俺が…お前の側近…」
マダラが柱間の言葉を小さく繰り返す。
『イズナも扉間くんもいるし、最強だね!』
センリがにっこりして楽しげに言うので柱間もそうだな、と頷いた。そしてマダラの顔を見て「どうだ?」と聞き直す。マダラに拒否権は無さそうだった。
「前に立たれるのも後ろに立たれるのも好きなわけじゃないが……まあ、どうしてもと言うなら、やってやらんことも無い」
素直にはい、とは言わなかったがマダラは内心嫌では無かった。むしろ自分には火影という里の代表より、その側近の方が向いているような気もしていた。
それに火影は柱間だ。他の忍ならば了承はしなかった。
なぜなら柱間は自分よりも強い。
素直に認めたくは無いが自分よりも強い忍といえば柱間とセンリくらいだ。柱間の下につく事は嫌では無かった。いや、下につく、と言うより。
『やっぱり二人じゃないとね!』
そう、二人で、だ。
柱間の後ろにつくわけではない。隣に立つのだ。
センリと柱間は顔を見合わせて微笑み合った。すると柱間はふと思い出した様に崖に視線を戻した。
「そうそう、それから里を守る象徴として、この足元の岩壁にデカイ顔岩を掘ろうと思ってな。でもそうしたらオレの顔になるのか…」
柱間は神妙な顔で悩んでいるようだった。それを見てマダラがニヤリと笑った。
「お前のその情けねー落ち込み顔が里の奴ら全員に晒されるのか…」
自分で言ってクククッと笑うマダラ。
『マダラの悪人顔と良い勝負だね』
センリが本気で葛藤しているようにマダラと柱間の顔とを交互に見る。
「なんだとコラ。柱間の情けねー面よりはマシだ」
「そ、そんなに情けないぞ…?」
『どっちもどっちだよ!』
そうして三人で笑い合うのは何年ぶりだろうか。長い時間がかかったが、三人の心はまた一緒になれた。
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