- ナノ -


木ノ葉隠れ創設編

-不死になった夫、捧げる愛-


結婚した事をあまりおおっぴらにしない方がいいかと二人は思っていたが、指の印もあり、数日も経たずに柱間や扉間、それからミトや桃華達は二人が婚姻した事に気付いた。

イズナにはすぐに報告をしたが、その時のイズナの様子はこれまでで一番嬉しそうだった。



「本当に……本当に、おめでとう。ボクにとって一番大切な二人が結ばれてくれたなんて…多分今までで一番嬉しい出来事だ」


泣きそうになりながら、それでも嬉しそうなイズナの姿に何故かセンリの方が感動してしまった。

「これで本当の“姉さん”になったわけだ」

そう言ってイズナは心から微笑んだ。
イズナにとっては二人が夫婦になるというのは何年も前から願ってきた事だったし、兄弟として本当に喜ばしい事だった。


里が出来て里内の人々に関する情報は全て忍達で管理している。誰かが夫婦になれば報告しなければならない義務もある。婚姻届けの様なものだ。
二人は火影直々に報告をし、正式な夫婦となった。


「祝言を挙げなければいかんな!」


柱間もこれまでにないくらいニヤニヤした……満面の笑みを浮かべながら友のめでたい婚姻に浮かれていた。

しかしセンリは苦笑いをした。


『そういうのはしない予定なの。ほら、マダラも、他のみんなも忙しいしさ』

「そ、そんな」


思いがけない言葉に柱間はショックを受けた様に固まった。

実際柱間とミトも身内だけでひっそりと祝言を挙げただけだったし、長く続いた戦国時代では正式な祝言を挙げる習慣は薄かった。


『私たちはこの先何年も生きるから、いくらでも機会はあるからさ。それよりも今は、たくさんやることがあるでしょう?』


カルマの力を分け合った事も報告したが、柱間はそれ程驚いた様子ではなかった。マダラとセンリが同じ歳をとらない体になったというのは傍から見れば中々実感がわかない事だったが、むしろ柱間はそれがいいのではないかと思っていた。

祝言についてセンリの言い分は分かったが、しかしそれでも謙虚すぎるのでは無いかとも思って柱間は小さくため息をついた。


「そんな暇が無い事くらいお前にも分かってるだろう」


柱間が納得しないようだったのでマダラが言い聞かせる様に言った。

確かにそれも本当だった。
祝言を挙げるにも場所が必要だし、役人も呼ばなければならない。二人の晴れ姿を見たいのは山々だったが、仕方なくその言い分を認めた。


「む………まあ二人が婚姻した事は確かだし、無理にするものでも無いしな…。しかし二人が結婚とは本当にめでたいな!なあ、扉間よ!」


切り替えが早い柱間は豪快に笑い出して、隣に立っている扉間の肩を叩いた。


「いちいち力が強い!……まあ、めでたい事ではあるな。おめでとう」


力任せに叩いてくる柱間の手をなんとか制して扉間は祝いの言葉を二人に向かって言う。

まさか扉間がこんなに素直に祝いの言葉を口にするとは思わなかったマダラは、少し面食らっていた。扉間はセンリに想いを寄せていると思っていたのでざまあみろという気分だったが、扉間の表情は穏やかでどう見ても自分達を祝っている様にしか見えない。


『ありがとう、二人共!』


センリはにっこりして礼を述べる。予想していた扉間の反応では無かったため動揺したがマダラも一応小さく礼を返した。

相変わらず鈍感なセンリと柱間が「祝言は挙げずとも祝の集いを開こう」と話している会話がマダラの耳を駆け抜けている最中も扉間の表情をちらりと見たが、格段変わった様子は無い。


「(まあ…諦めた、という事か)」


一人結論付けてマダラは納得した。


「――…なあマダラ、いいだろう?」


突然柱間が問い掛けてきてきちんと話を聞いていなかったマダラは反応が遅れた。


「何がだ?」

『柱間が私達をお祝いしたいんだって』


そう言うセンリは少し申し訳なさそうだったが笑顔だった。


「何もしないのも寂しいだろう。近々祝いの会を開こうぞ!少しくらいならマダラがいなくても…それに火影の仕事なら…分身でどうにかなる!」


柱間の木遁分身なら確かに誰も分身だと気付かないかもしれないが、マダラは目を輝かせる柱間を前に少し引き気味だった。


「なあ、扉間、いいだろう?」

柱間が弟に問い掛けると扉間は軽くため息を吐いた。


「ハア……兄者は宴がやりたいだけだろう……まあ業務に問題が無いなら止めはしないが…」


仕方なしという口調で扉間が言う。しかし宴は忙しい兄にとってもいい休息になるかもしれないと思うと許可するしかなった。


「よし!では早速桃華達に参加を促してこよう!」

「あ、おい柱間…」


マダラの声は聞かずに柱間は扉間と共に笑いながら去っていった。



「本当にあいつ、騒ぎたいだけだな……」

『いいじゃない、たまには。祝ってくれるって言うんだから、嬉しい事だよ』
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