- ナノ -


木ノ葉隠れ創設編

-帰還した不死鳥と、体の謎-


その後カルマの言った通りセンリの胸元の呪印も濃い黒になり、またカルマは実体化する事が難しくなったが、マダラの方はとりあえずは聞きたかった事が聞けて少し安堵はしていた。


「(大体の予測は合っていたが…逆にセンリについて謎が深まったな……。死ぬまでの記憶は思い出さなくとも、まあ問題は無いだろう。不死鳥の言う事が本当だとしたらあいつの抜けた記憶は凄惨なものなのかもしれない…戦いのない世だというのに、あいつは二十五で死んだ、という事を考えればそれとなく察しはつく。

…しかし……あいつの体の仕組みは本当に謎だらけだな……だがまあ、何にせよ俺が側に居ればいい事だ。里の事も、センリの事も…俺がこの先、必ず守っていく)」


カルマが自分を信用しているか否かはマダラにとっては取るに足らないような些細な事だった。誰に言われなくともセンリの事も里の事も…大切な仲間も守ってみせると心に誓った。


カルマと二人で話したことについてマダラはセンリには詳しく話さなかった。多分カルマもそう思っているだろうし、センリに余計な心配は考えさせたくなかった。やはり体液には治癒の力があったという事だけを伝え、センリの過去の事もその他の事も一切話さずにいたが、センリも納得したようだったし、彼女の単純さにこの時ばかりは感謝した。



センリの方も尾獣達の事が心配ではないといえば嘘になるが、それでもこの先近い内に皆に会える事を信じて柱間とマダラの、里の為の仕事の手伝いを続けていった。


いつくかの季節が過ぎ、そしてまた同じ季節を迎えるという事がセンリには本当に短く感じた。忙しくなればなるほどその時間が過ぎ去るのがとても短く感じ、次の瞬間には一日が終わっている。


カルマとの間にある封印術は不定期に弱まったり強まったりを繰り返していて不安定といったらそうだったが、カルマが実体化出来ないくらい縛りが強くなっても燃焼日に熱などの症状は出なくなったし、戦時中と違って制御できないほど体力を消耗しなくなった為、もう消えたり眠ったままだったりする事はないだろうとカルマは踏んでいた。

マダラと手合わせをしたり、忍の子ども達と一日修業をしても前に比べて疲れづらくなった。



イズナが忍養成機関で仕事を始めてから一年過ぎる頃には里の人々もかなり増えて、一族間の戦争は一つも起きなくなった。

イズナも仕事が板についてきて子ども達の相手にも慣れ、写輪眼が無い事を気にすることも減り、その分の笑顔も増えた。


相変わらずマダラと扉間の距離感は微妙ではあったが、センリと柱間のお陰もあり大きな悶着も無い。


一族が里に入りたいという申し込みをし、査定した上でそれを許可して、里をどんどん広くする、という工程を何度も繰り返した。

火影の仕事は忙しく、それに伴いもちろん側近の仕事も同じだ。センリとマダラが二人でゆったりと過ごす時間は限られてはいたが、着々と二人の愛情は深くなっていったし、お互いが大切な存在だという事は変わらずだった。

マダラにとってセンリは日々の疲れを癒してくれる大事な居場所だった。

センリが居るならば里の事も守らなければいけないし、友も、弟も望んだ里は、一番にセンリが夢見ていた事だった。一日中顔を見ない日があると確かに気落ちはするが、柱間の近くで側近として業務をしているとそれがセンリの願いに繋がっていると思い、それだけでやる気が湧いてくるのだ。


いくら時間が経とうとセンリに対しての愛情は薄まること無く、むしろ日々が過ぎる度に大きくなっている気がしていた。

センリと初めて気持ちが繋がれた日、あの時の幸福感は忘れられなかったしその時の言葉もすぐに思い出せるくらい心の側にあった。


弟が、一族が、友がいる里の為に尽くす事が出来るのは大部分がセンリの影響だった。



時間は止まる事なく廻り、そしてその時間をセンリと共に過ごせるのはマダラにとって本当に幸せな事だった。
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