- ナノ -


木ノ葉隠れ創設編

-帰還した不死鳥と、体の謎-


次の日の朝早く、センリの頭の中にカルマの声が響いたかと思うと次の瞬間目の前に広がっていたのはいつもの白い異空間だった。まだ疲れが残っている様子だったが早くセンリに報告をしなければと思い、カルマは尾獣探しをしていた間の事を話聞かせてくれた。


尾獣達は、センリとハゴロモが探し出したあの故郷に留まってはいないという。人間から逃れる為に色々な地を行き来していた。

その為探し出すのに時間がかかったらしい。しかし柱間の言った通り一尾の守鶴は風の国の忍寺の者達が封印してしまっていた。どうにか守鶴の元に行こうと試みたが、既に守鶴は人間に封印されてしまっていて、失敗した。俗に言う人柱力である。センリと一緒であればその人間の心に入り込み、守鶴に会う事も可能だが、それには風の国に入国し、砂隠れを訪れる必要がある。柱間やマダラは簡単には許可しないだろう。



「今この地にセンリがいる事に皆驚いていた。特に牛鬼や孫悟空などは中々信じなくてな……信用させるのに骨が折れた」


牛鬼と孫悟空の驚愕し、動揺する姿がセンリの頭に浮かんだ。あの頃小さかった尾獣達は一体どのくらい大きくなったのだろうかと想像を膨らませていると、カルマが神妙な表情でこちらを向いた。


「しかし、未だ共通して奴らは人間達の事を信用していない。むしろ…憎しみを抱いている」


前に少しだけ聞いていた。戦争が終わっても尚彼らは人間達に憎しみの目を向けている。長年利用され、人間に忌み嫌われてきた尾獣達はもう簡単にはそれを覆すことが出来ないほど憎しみが膨れ上がっているのだ。

センリはそれを聞くと悲しそうに目を伏せる。自分とハゴロモが人間と協力して欲しいと願い世に放ったのは彼等にとっては遥か昔の事。


「特にクラマはその怨念がずば抜けて大きい。尾獣の中でも強い力を持っていると思われていたクラマは何かと人間に恐れられ、狙われていた。この世界ですでにクラマは憎しみの象徴とされているくらいだしな…この人間の姿で会いに行ったら殺されそうになったくらいにな。人間を見るだけであ奴は殺意を抱くくらいその恨みは大きいものなのだ」

『クラマが…』


そしてその中でも特に懐いていたクラマ。素直でないところがあったが、純粋で、そしてセンリの事を大事に思っていた。そのクラマが今となっては憎しみの象徴だ。

自分も会いに行きたい。もう一度、皆に会いたい。
口に出さずともセンリの切実な願いをカルマは感じ取っていた。


「何にせよあ奴等に会いに行くのはもう少し忍界の情勢が整ってからの方が良い。我も地上を巡って分かったが…丁度どの国も里づくりが本格化している重要な時期で、他国の人間に対してかなり疑って掛かっている節があった。国境の警備も戦時中より厳しくなっておった。忍達は多里の状況を知りたいながらもやはり手の内を知られてはなるまいと目を光らせている。御主も今はこの里の人間だ。それを考えると今、迂闊に動くのは確かに薦められんな」


カルマは柱間が言っていた意見の意味が分かり、そして柱間と同様の思いだった。確かにセンリ個人は誰にも負けないくらい強いが、センリはこの里の中の人間の一人。その命は一つではない。もしもセンリが何か微かな下手をしてもそれは重要な情報にもなる。どちらにせよ動くのは各里の内情が整ってからの方が良いとカルマは思っていた。


『分かった。確かにみんなには早く会いたいけど…今派手な動きをしたら里にも影響しちゃうって事だよね。それなら早く里の地盤がちゃんと整ってからの方がいいって事だね』


センリは少々抜けているところがあるが、決して馬鹿ではない。その目にはいつも真剣な決意が篭っていて、そしてそれは揺らがない。


『なら尾獣のみんなのこと柱間達に知らせた方がいいかな?柱間もそれを知りたいって言ってたし』


これからの忍界と里の為に尾獣達の事を把握しておきたいと柱間は言っていた。しかしカルマは何処か信じきれないところもあった。柱間やマダラの事を心から信頼しているセンリには言わなかったが、でもさすがにセンリでも尾獣達が利用されるような事には気付くだろうかとカルマは思い直した。

明日、柱間達にこの度のことを教えるのを承諾してカルマは一旦センリの中に戻った。

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