- ナノ -


木ノ葉隠れ創設編

-帰還した不死鳥と、体の謎-


その次の日、カルマはセンリの共に火影室で柱間と、それからマダラと向き合っていた。



「なるほど……一尾以外の尾獣の姿は確認できた、と」


机に肘を付き、顔の前で手を組む柱間の問い掛けにカルマは何も言わずに首を縦に振った。


「それで、それぞれが何処にいるのかという事はオレ達には言いたくない、とな?」


カルマは守鶴以外の尾獣達を無事に探し出せた事を柱間に報告した。


「そういう訳では無い」


柱間はあまり乗り気でないようなカルマの姿にそれを話したくないのではと予想していたが、カルマは首を横に振り、違うという事を表した。


「尾獣達の殆どは一定の場所に居らずに移動を繰り返している。尾獣の力を狙う人間達からな。ただ幸い今はどこの国も各々里づくりを始めていてそちらに皆は集中している。襲ってくる人間達は少ないのが救いだが」


長く続いた戦争が集結し、それと共に一国一里というシステムが定着しつつある今は、戦争の為に尾獣を利用しようと考える人間は居なくなってきているという訳だ。

攻撃を仕掛ける人間達が少ないと聞いてセンリは安心したが、それでも人間達を避けているという事はセンリが一番気にかかる点な事には変わりはない。


「千手柱間……そしてうちはマダラ。御主らは尾獣達に関してのこれからの事、何か考えはあるのか?」


突然質問を振られ柱間は微かに目を開く。そしてマダラの方に目を向けてうーん、と唸った。


「今まで確かに、戦争の為に尾獣を利用したいと考える忍達はかなり多くいた。それは事実ぞ。しかしオレの立場として、今は里の内部を確実なものにして、組織や制度…忍の育成方法の確定を優先したい。お前が言ったように多分それは他の国も同じだと考えている」


真面目に語る柱間の目をじっと見るカルマ。すると次はマダラが口を開いた。


「だが一国一里が定義づいたとすると、これから先里同士の争いが起きないとも考えられない。そうしたらまた尾獣は確実に忍達の争いの種になる。あの獣の力は脅威だ。このまま野放しにしておいて良いという訳は無い」


柱間の考えはマダラと同じだった。一族間の争いは治まったが、今度は里同士の戦いが起きる可能性も十分ありえる。もちろんそんな事にならないように自分達の役目が重要になってくるのだが、先の事は誰にも分からない。

カルマは少しの間何も言わずにマダラを見ていたがふと金色の瞳をセンリに向ける。


『カルマ』


センリが名前だけを問いかけると、カルマもその目を見返す。“柱間達を信用して話してくれ”という切なる願いが伝わってきた気がしてカルマはまたしばらく黙った後小さくため息を吐いた。


「我の予測も御主らと同じだ。このままではいずれまた人間達は尾獣を狙う。むしろ神出鬼没の尾獣が争いの種になるとも考えられる………。今の里々の仕組みには我も賛成してはいる。尾獣の力を求めるが為にこの仕組みが壊れてしまうようでは困る…」


そこまで言うとカルマは一度言葉を切り、柱間の後ろに見える夕暮れに照らされる里をじっと見てからまた言葉を続けた。


「もちろん一番良いのは人間が尾獣に干渉せず放っておく事だが、時の移り変わりを何年も見てきてそれが実現するのは難しい事くらい分かる……。里々が認めた上で尾獣達をそれぞれの国に住まわせるというのが現状では良いのではないかと我は思う。尾獣が指定された国にいるという事をそれぞれの国の忍達が認めていれば、好き勝手に尾獣を捕らえようとする者も減るのではないかと考えておる」


カルマの考えを聞いて、柱間は顎に手をやり「なるほどな」と呟いた。


「しかし、今の時点でそんな機会があるとは思えないが」


マダラの言う事も一理あった。里システムがまだ完全なものになっていない現時点では他里の忍達との交流の場さえ難しいところだ。

それはカルマも薄々分かっていたようで同調するように小さく頷いた。


「それは我も分かっておる。ただ、今の時点でそう出来なくても、この先色々と定着してくれば可能になるとも思う。火、水、土、雷、風…この五大国の存在はかなり大きい。その国にある里の長が皆集う機会がこの先訪れると我は踏んでいる。その時、尾獣達の事をよく話し合って欲しいのだ」


マダラはまだ難しい顔をしていたが、柱間はウンウンと大きく頷いていた。


「あと十年もしない内には実現できるのではないかと我は考えておるのだがな…」

『じゅ、十年…』


カルマの言葉にセンリは驚いて反応した。


「一つの村が誕生し、確実に出来上がるまでだとしても数年はかかるものだ。それが一里という規模ならそれ位になるだろう」


長年この世を観察してきたカルマだからこその予想だがセンリはその年月に驚きを隠せない。


「我も何もせずに戻ってきたという訳では無い。尾獣達の周りになるべく広く結界を張り、そこに敵意がある侵入者がいれば尾獣が気付くよう仕組んできた。これで大幅に忍達の犠牲も減るだろうし、尾獣達も攻撃をしなくて済む。忍として手練の者だとあまり意味は無いかもしれぬが…」


仕方なし、不本意にという言い方だったが、柱間もマダラも関心した様子だ。


「なるほど…伊達に尾獣の親玉と呼ばれている訳では無い。お前の言うように今はまだその兆しはないが、必ずオレがその機会をつくろうぞ」


隣で少々難しい表情をしているマダラと対称的に柱間はやる気に満ちた顔付きだった。まだ完全に信用したわけではなかったが自分の言う事を真剣に受け止めた人間は初めてだったのでカルマは表情には出さなかったが少し柱間を見直していた。


「(確かに…アシュラの面影を感じるな)」


物事を信じやすいのはセンリ共々危うい事でもあるがその純粋な心が未来をいい方に導くかもしれない。ここは柱間をひとつ信じてみようかとカルマは思った。


『そうだね。十年以内には頑張って里の影たちが集まれる機会をつくろう』


センリと柱間は似た表情で頷き合った。


「その為に何か出来ることがあれば我も僅かながら協力しよう。センリと我との間にある封印術が弱まっている時に限るが…。センリ、そろそろ我は御主の中に戻る」


カルマは隣に立つセンリに向き直って言った。しかしセンリが返事をする前に口を開いたのはマダラだった。


「待て」


自分を止める声にカルマはまた声の方を見る。


「話したい事がある」


センリは何かと思ったが、二か月ほど前のあの事かとすぐに理解した。カルマはどうするか考えるように数秒間マダラの表情を見た後、「良かろう」と頷いた。


「柱間、少し席を外す」


柱間はとぼけたような顔をしていたが二人で話すとなるとセンリについての事だろうかと予測を立てて「分かった。商談室を使うといい」と言って了承した。

マダラはカルマを火影室の外に促し、意味ありげにセンリを見つめてその後を出て行った。

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