- ナノ -


木ノ葉隠れ創設編

-帰還した不死鳥と、体の謎-


多くの初めてを経験した夜について、センリは子どもっぽいところも多々あったが、私的な感情とそれとは別のことを切り替えられない程幼くは無かったので火影室でマダラと会えば普段通りに会話したし、格段距離が近くなったという事も無かった。

だが家で二人となるとまた少し話は違ってくる。

センリはマダラと体も、それから心もより強く繋がる事が出来た気がしていた。


センリは求められればそれに応えたし、多少苦痛は伴えど、全く嫌では無かった。マダラの方も、いくらセンリの体が魅了的と言えど、理性を抑えられないくらい垂れ流しにする事はなかった。
確かに色欲云々は男にとっては切っても切り離せない事情ではあるが、里内の仕事も楽ではなかったし、センリの体の面を考えるとそう何晩もそうする訳にはいかなかった。

センリが、今は定着し始めた隠れ里の事を第一に考えているのは分かっていた。それにいずれセンリと婚姻すれば何年も共に生きる事を考えるとマダラはそれだけで満足だった。



―――――――――――――――

普段通り、いつも通りの日常だ。


着々と里内の任務も増えてきて、それに伴って勿論火影の仕事も多くなる。柱間は毎日大量の書類と睨めっこをし、ウンウン唸りながらもその紙切れ達を片付けていたし、マダラも側でそれを手伝っていた。

扉間はこの頃は修業なりにも励んだり、仕事以外の事に時間を費やすようにもなって、火影室に居ない場合も増えてきた。それは扉間がマダラなら兄の仕事の補佐を出来ると考えていたからであり、里を作っていく先導に立つ者として信用し、認めたからでもあった。


その日は扉間は不在で、柱間とマダラと二人とで執務に取り掛かっていた。センリは二人にお茶を入れにきたついでに簡単な事務仕事を手伝っていた。

時計が差す時刻は午後三時。

普段より執務の仕事量が少なく、早めに昼食を済ませた柱間は、午後の眠気と戦いながら書類の判押しを遂行している時だった。



『…!』


その気配は突然だった。
柱間の判済みの書類を種類ごとに分けていたその時、センリはその手を止め辺りに耳を澄ます様に顔を上げた。


「ん?センリ、どうした?」


目の前のセンリの様子に気付いて柱間が不思議そうに問い掛ける。その声に隣の方のマダラも巻物から目を上げた。

センリは柱間の後ろ側、大きな窓から見える夕方になりかけてきた空をじいっと見つめていた。数秒間、遠くの何かを確認するように目を細めた後、センリはその気配を確信した。


『カルマだ』


柱間は一瞬何の事か分からなかったが、それが数ヶ月前尾獣を探しに旅立った不死鳥の名前だとすぐに思い出す。マダラの方は素早く反応した。


「戻ってきたのか?」


センリはマダラの声に一度その顔を見て頷き、窓にサッと近付いてガラスに顔を寄せる。柱間とマダラもセンリが見ている方向を同じく観察してみるが、いればすぐに分かるだろうあの大きな不死鳥の姿は全く見当たらず、太陽が傾きかけた雲一つない空が広がっているだけだ。

だがセンリは確信しているようで、一点を見ていた。長くカルマと共にいたセンリにはその気配がすぐに分かり、そしてそれが確実なものだという事も知っていた。


『やっぱそうだ……私ちょっと行ってくる!』

「あ、おいセンリ…!」


センリは二人を振り返って一言言うと、目の前に透明な板だけが存在しないかのようにガラス窓の淵に手をかけ、鉄棒でそうするようにそのままくるりと前に一回転してガラスをすり抜けた。

マダラと柱間が驚く間もなくセンリは視界から消え去り、次に窓から見るとすでに遠くの家の上を走り去って行くところだった。


「あいつもすり抜けられるのか…」


センリがすり抜けられる物体は透明なガラス窓に限ってだったが、それを知らないマダラと柱間は驚嘆した。数秒間窓の外を見つめていたマダラだったがふと我に返り柱間に視線を移す。


「俺も少し様子を見てくる」


柱間も本当に不死鳥が戻ってきたのかは気になるところであり、それがいいというふうに頷く。それを見たマダラはドアから火影室を出てセンリの出ていった方向を確認し、後を追った。

―――――――――――――

マダラとセンリが里の正門に迎えば門から伸びる森の道には確かにあのカルマの少年の姿があった。

しかし人間の姿で行動していたらしいカルマは実体化して長く過ごすと疲れてしまうと言い、里につくなりセンリの体の中に入ってしまった。


『二、三日すればカルマも回復すると思う』


センリはそうマダラと柱間に伝えた。
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