- ナノ -


木ノ葉隠れ創設編

-はじめてを、ぜんぶ-



四月も下旬になると朝晩も多少は暖かさを増してくる。服の中に着込むこともなくなったし、掛け布団も少なくなった。

でも昼間丁度いいあったかさだからどうしても眠くなっちゃうんだよね。私、結構どこでも寝れるんだけど、この前なんて火影室で巻物持って立ったまま寝てたんだよね。いや、嘘じゃないよ?柱間に笑いながら叩かれて起きたんだけど……。よく学校でもあったよね。授業中窓側であったかいとだんだん眠くなっちゃうっていう。


そのくらい平和になったって事でもあるんだけどね。

私とハゴロモが教えた忍宗の力が忍の戦いを引き起こして、それがやっと今、少しだけ収まった気がする。チャクラの絆はいつの間にか個々の力を高める為のエネルギーになっちゃったけど、だからといって今からまた教えを説くつもりはない。

こうなってしまった以上元に戻すよりこれをどうやって変えていくかだよね。どうにかみんなの力が間違った方向に行かないように出来たらいい。チャクラの絆がなくともこの世は色々な繋がりで溢れてる。


たぶんこの先も里をつくった事で、そこに生まれた繋がりは未来に繋がっていくんだろうな。

ハゴロモは見ていてくれてるかな?ハゴロモの事だから簡単には成仏しなさそうだからなあ。


そんな事を考えていると何だか口元が綻ぶ。

不死ということは大変な事もあるけど、そうやって目の前で人々の心の繋がりを見て行ける。ずっとみんなを見守っていられる。

この世界に来てはや百……十年くらい経ったかな?前の世界と合わせると百三十年くらいか………。改めて考えるとめちゃめちゃ長寿。金さん銀さん越したな…。でも実際は全然疲れてない。そうだな、まだ十年ちょっとしか経ってないような気分。体的には成長しないからピンピンしてますよ!


さすがにこの世界にも不死についても慣れたけど、未だに不思議な事はある。


まずトイレ関係はしなくて良し。おしっこもうんちもそれにおならも出ないの!楽と言えば楽なんだけど、しないとしないで寂しいというかなんというか。

カルマが言うには「数ヶ月は食べたり眠ったりしなくても生きる事は可能」らしいんだけど、やっぱりお腹が空くし、美味しいものは食べたい!



ちなみに背は伸びてないよ。前の世界で中学三年生の時から止まってる。これはこの世界に来てからもっと悩みの種になったんだけどね…。

ずっと思ってた事なんだけど、男女共に身長が高いの。特に忍の人たち。柱間なんて185センチもあるんだって言ってた。いいなあ、本当に羨ましい…。

まあ柱間はいいとして……マダラも私とかなり身長差がある。前後に並んで私の頭のてっぺんからマダラの顎までちょっと空くぐらい。ぎゅっとすると胸に顔が埋まっちゃうんだ。私はあんまり背が高いほうじゃないから、余計なんだけどね。

いつも涼しげな顔で私を見下ろしてくるから…。小さい時は私の方が大きかったから、それはちょっと寂しいところではあるんだけど…。大人になってからも小さな時と同じように、人前だと眉間にしわ寄せてちょっと怖い表情してる時があるんだけど、ほんとは怒ってるわけじゃないんだよ。


元々子供の頃はマダラは感情表現は豊かな方だった。私がほっぺたつんつんしたりすると「やめろ!触んなコラ!」とか言って怒ってたりしたし。人の成長ってすごいな……。今なんて私の方が気圧される時あるもん…。

目付きはちょっと鋭いけど、その顔が笑うと子供の時みたいにニカッてなって、すごくすごーくかわいい。たまに私の行動見てすごく笑ってる時もあるんだけどね。マダラが楽しそうにしてくれると、私も嬉しい。ニカッより、ニヤッてしてる時の方が多いんだけどね……。


……そうそう。ニヤッとする瞬間言えばね…ほら、みんなって恋人が出来たらどうしてるのかな?その…ちゅーしたりとかさ。
手を繋いだり、ぎゅってしたり、ちゅーしたりってどこで覚えてるの?ほら、順序?とか。誰かに教えてもらうのかな。それだったら誰に教わればいいんだ?

ミト…イズナ…桃華…?それに何て言うの?

『マダラとくっついている時とかすごく恥ずかしいんだけど、どうしたらいいのかな?順番はどうするの?行程は?』

…いや。
いやいやいや!!聞けない!絶対聞けない……。


あああ、何でそういうこと学んでこなかったのだろうか私は……。カルマに力の使い方とか教えて貰ってる場合じゃなかったよね、こんなことになるなら…。ハゴロモ助けて!

前の世界でも、友だちとそういう話になる事は多々あったけど「私には縁のないものだな…」とか思ってたから…。もっとちゃんと聞いとけばよかった…。

マダラとインドラはちょっと似てるところがあるけど、もちろんインドラにこんな気持ちは感じなかったし、どうしたらいいか分からない。

赤ちゃんの頃からお世話してたからかな?いやでもマダラだって七歳の時から一緒にいたのになあ。それが今では……。


マダラとその…恋人同士になってから数ヶ月過ぎた。あの時はちょっと私は動転してて訳もなく泣いてしまったりして…今思うとお恥ずかしい話なんですが…はい…。でもあの時、マダラの気持ちを聞いた時は本当に驚いたなあ。ショック死するかと思ったよ。…いや、死なないんだけどね!

初めて人に弱音を吐いて、でもそれをマダラは受け止めてくれて。すきな人が自分の弱い所を受け入れてくれるなんて、すごく嬉しかった。それに同じ気持ちだったなんて、こんなに幸せなことはない。


あれからの生活は特に変わったわけじゃないけど……マダラにくっつく事は多くなったかな…。もうそれをしても許される関係なんだって思うと嬉しくて、ついぎゅっとしたくなっちゃう。大きい体に包まれるとすごく安心する。私の腕の中に入り切るマダラもかわいくてよかったけど、今はそれ以上に愛おしい。


でもマダラとちゅーすると体の力が抜けるみたいになって、すごくすごく顔が熱くなる。だだだだって、だって口と口だよ?ほっぺたとかじゃなくて、口だよ?マダラの唇はすごく薄いけどふにゃってしててそれであったかくて………。

どうしよう考えてたらドキドキしてきた。


とにかくとにかく。どうしたらいいか分からないんだけど、どうしたらいい?


やっぱり誰かに相談するのが一番だよね……。

私とマダラの事をよく知ってる……扉間くんとか?いやいや、桃華が扉間くんはそういうのに興味無いって言ってたし……。でもイズナはお兄ちゃんとのそんな話聞かされるなんて嫌だよね…。ヒカクは………すごく馬鹿にしてきて笑うだけのような…。


うーん、

一人で唸りながら商店街を歩いていて一瞬何をしに来たんだか忘れるところだった。

食材は昨日買ったし……あ、そうそう髪留めのゴムを買おうとしてたんだった。


雑貨屋さんに向おうと道を歩いていると道の先に見慣れた後ろ姿を見付けた。商店街で見かけるのは珍しい。そして私はその姿を見てハッとした。


私とマダラの事をよく知ってる人物……悩みを相談できそうな相手。忙しくなければいいけど…。


私は後ろから追いかけて走り寄った。

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