- ナノ -


木ノ葉隠れ創設編

-固まりゆく里の地盤とうちはの石碑-


土の国との同盟も無事に成立し、里の者達もセンリも、相変わらず充実した毎日を送っていたが、カルマからは未だに音沙汰は無かった。

カルマに何かあればすぐにセンリには分かるはずなので特に異常は無いところを見ると尾獣探しに手間取っているか、はたまた尾獣達との思い出話に花を咲かせているか……どちらにせよセンリにはカルマを信じて待つ事しか出来ない。桜が満開期を過ぎて徐々に散り始める様をセンリは洗濯物を干しながら眺めて思った。


春になり暖かくなってきたので里の者達も活発に町に出て動き回るようになる。浅葱もそれは同じで、センリが柱間邸を訪れては待ちかねていた様に抱き着いて来て汗が滲むまで遊ぶのだった。


「とどめだ!でぃやっ」


目に見えない刀を振りかざし浅葱はセンリに飛び込んで来る。センリは動かずにそれを受けて畳の上に倒れ込む。

『だあぁ!くっ…浅葱め…覚えてろ…!』


悪役面満載でセンリが浅葱を見上げてがっくりと顔を落とす。それを見ると浅葱は満足した様に刀を鞘に戻す動作をして、額の汗を拭った。幼い頃の柱間と良く似た癖のない黒い前髪が汗で少し乱れていた。

まだ三つだったが浅葱も忍という存在にだんだん興味が出てきたのか、遊びにもそれを取り入れる事が多くなった。

遊び終わると浅葱は満足したのか、尻餅をついてセンリの隣に寝転がった。センリは息切れ一つしていなかったが、組手ごっこをぶっ通しでしているとさすがの浅葱も疲れたようで「つかれた〜」と言いながらセンリに擦り寄ってきた。


「ねえ、センリ。父さまの話して」

浅葱は時々こうして柱間の事を話すようせがんだ。火影として忙しく、あまり遊ぶ時間も無い、普段父の温もりを欲して寂しがってもいる浅葱の小さなお願いだった。


『いいよ。じゃあ…………柱間父様はね、どんな人と戦っても負けないぐらい強くて、でも優しさもあって、みーんなから頼りにされてたんだよ。それから小さい頃から弟思いでね、扉間叔父さんのことをすっごく大切に思ってたの。今でも二人はすごく仲が良くてね………』

センリは体を横にして浅葱の小さい体をとんとんと叩きながらゆっくりと昔を思い返して浅葱に話して聞かせる。最初は嬉しそうにセンリの顔を見つめていた浅葱も、センリが話している内に目がとろりとしてきて、そして最後には目を閉じて夢の中に旅立ってしまう。十分後にはクークーとかわいらしい寝息を立てて寝入ってしまった浅葱を見て、センリも欠伸をして目を閉じる。時刻は午後三時半。開け放した障子から射し込む春の木漏れ日が暖かく、センリの眠気を誘う。


――――――――――――

「………あら」


物音が聞こえなくなり、前掛けで濡れた手を拭きながら二人の様子を見に来たミトが部屋を覗くと、スヤスヤ眠る息子とセンリの姿。浅葱は四肢を投げ出し大の字で、ミトは夫を思い出した。二人の姿にミトは少し笑みを漏らし、その上にそっと自分が着ていた長い羽織りを掛ける。


それから三十分すると扉間が帰ってきた。帰ってきた、と言うより仕事で使う書類を取りに来た様だった。センリの靴があるのを見て扉間がミトにセンリが来ているのかと確認しようとすると、ミトは人差し指を出し手しーっという動作をした。

扉間が疑問符を浮かべているとミトが言葉無くにっこりして隣の部屋を指差した。扉間が覗くとそこには並んで眠るセンリと浅葱の姿。なるほどそういう事かと納得して、口元に薄く笑みを浮かべる。


「浅葱は本当にセンリに懐いていますね」


声を押し殺し、ミトが囁き声で扉間に言う。もしかして浅葱は柱間よりセンリに懐いているのではないかと扉間は思って少し可笑しくなった。


「姉弟のようだな」


同じようなあどけない表情で眠っているセンリと浅葱は、親子というより姉弟のように見えた。


柱間が忙しく、それによってミトも浅葱も表には出さないが少し寂しがっている節がある。しかしこうしてセンリが浅葱と遊び、ミトの話し相手になる事は思っているよりも重要な事なのではないかと扉間は思った。そして明日は少し早めに兄を家に帰してやろうかと考えて再び火影邸へと戻った。

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