木ノ葉隠れ創設編

-固まりゆく里の地盤とうちはの石碑-


次の日、まだ朝日が昇って間もない朝早くにマダラと柱間、それから二人を見送りにセンリと扉間が里の出入口に来ていた。

五日は火影が里に不在という事態にはなるが、扉間とセンリは里に残るので、柱間はそんなに心配した様子ではなかった。だがその分仕事の量が半端ではないだろうと危惧していた。センリは柱間を安心させる様に大丈夫だと何度も伝えた。


マダラの方は最後まで見送りに来たセンリへと「危ない事はするな、戸締まりをきちんとしろ」等と様々な念を押していた。


「知らない奴には絶対着いていくなよ。誰か家に来ても入れるんじゃないぞ。あと、うちはであってもイズナ以外の家に入るのもダメだ。それから…」


この様子だと延々忠告をされるんじゃないかとセンリは思ってマダラの言葉を手で制した。


『わかってる、大丈夫だよ!満月と被ってないし、そんなに心配しないで』


眉を下げて困ったように笑いながらセンリが言う。まだ納得していなそうなマダラだったが『早く行かないと時間なくなっちゃうよ』というセンリの言葉に朝日を見上げ、確かにそうだと思い直した。


「子供の頃からマダラはセンリに対して過保護だな。まるで父親ぞ!」


扉間は腕を組んで呆れたような表情をしていたが、柱間は面白そうに笑っていた。


「なんだとコラ………いや、まあいい。行くぞ柱間」


柱間に向かって意気込んだがセンリが諭すように自分を見ているのに気付いたマダラは今度こそ背を向けた。やっと出発する気になったようだ。柱間が慌ててその後をついていく。

二人は一度振り返り、柱間はセンリと弟に手を振りながら去っていった。

戸締りの件について大体忍ならば簡単にピッキングか何かで鍵開け出来そうだとマダラと柱間の去りゆく後姿を見てセンリはふと思っていた。


初っ端から、土の国まで休憩を挟む、挟まないで言い争いながら歩いて行く二人を見送ったセンリは扉間と共に火影邸へと向かった。


「あの二人…少々心配だな」


昇り始めた朝日を背に扉間はフーッと息を吐いた。仲が良いんだかそうでないのか中々よく分からない二人の事を扉間は少し心配だった。


『そうだねえ。でも大丈夫だよ、きっと』


二人を信頼しているセンリは幾らか呑気に伸びをしていた。


「土の国の者達を前に失礼な事をしなければいいが…」

柱間が側にいてもいなくても心配の種とは、扉間も苦労も休まる事はないようだった。肩にてをやりため息をついている扉間を見上げてセンリはクスクス笑った。


『扉間くんもマダラと同じくらい心配性だね』


マダラと同じと言われ何の自覚もなかった扉間は怪訝そうにセンリを見下ろした。


「マダラ程ではない」


扉間が切実にそう言うのでそれも可笑しくてセンリは笑った。何がそんなに面白いのか、本当に楽しげにセンリが笑うので扉間はつられて唇の端を上げた。


『マダラは心配しすぎだよね。扉間くんもいるし、それに私は強いのに!』


センリは途端に真剣な顔付きでファインティングポーズの戦闘態勢をとるので扉間はふっと笑いを洩らした。

「まあ……気持ちは分かるが」


拳を上げながら隣を歩く姿を見て扉間は小さく呟いたが、センリは気付かなかった。

―――――――――――――――――――

柱間とマダラが居なくても仕事の量は普段とそう変わらない。二人がいない間センリは扉間と共に仕事を手伝おうと思い火影邸に向かえば、その日は朝からそのまま火影室に缶詰状態だった。

火影用の書類確認などは勝手に柱間の判は押す事が出来ないため、保留しているとその書類の束はどんどん厚くなっていった。柱間が帰ってくる頃には山のようになっているのだろうと考えてセンリは気の毒に思った。

センリも執務には慣れている為、柱間とマダラがいなくともそこまで滞る事なく仕事はスムーズに進んでいた。

里のそれなりの実力の忍達の中には火影が不在という事を知っている者達が多くいたので、普段よりは火影室に顔を出す者が少なかった。しかしそれでも任務の報告等にくる忍は多少なりともいる。


もうすぐで昼の十二時を迎えるという時、火影室の戸がノックされ、一人の忍が現れた。センリは表情を綻ばせた。


『あ、サスケくん、こんにちは』

「センリさん、何だか久しぶりですね」


扉間も顔を上げる。

少し茶色がかった短髪黒髪の忍は猿飛サスケといった。戦乱の時からかなり有名で、その名を馳せていた一族の長であった忍だった。サスケはここしばらく会っていなかったセンリを見て僅かに驚いたように瞳を大きくして挨拶を返した。


「例の件か?」


扉間が手を止めて問い掛けるとはっとしてサスケは扉間に近付いた。


「ええ、わたし達の一族と、それから猪鹿蝶……それぞれの一族のを全部纏めて記しておきました」


サスケは綺麗に纏められた紙の束を扉間に差し出した。それを「ご苦労だったな」と扉間が受け取る。そういえば前に柱間が一族をまとめていたサスケに、各一族事の資料をまとめておいて欲しいと言っていたなとセンリは思い出した。

猿飛一族と密な関係にある、奈良、秋道、山中一族は木ノ葉の里でもよく知られた一族だった。センリも戦争時代、何度か戦った事のある一族だった。その中でも猿飛サスケは確かに強く、実力もある忍だった。同盟を結んで分かったが、サスケは礼儀正しく、柱間や扉間の命にも従順に従う真面目さも持ち合わせていた。


『ねえサスケくん、ヒルゼンくんは元気?このところ会わなかったからどうしたかなーって思ってたんだ』

ヒルゼンというのは彼の息子で、浅葱程ではないが、ヒルゼンも会う度にセンリと仲良く話すくらいの仲だった。このところサスケも任務で忙しかったし、息子のヒルゼンにも会えていなかった。


「元気ですよ。ただ忍として修業を始めたもので……昼間は大体近くの森で修業してるんです」


頭に手をやりながら微笑みを浮かべるサスケを見て、なるほど、だから町で会う事が少なくなったのかとセンリの謎が解決した。


『えっ、そうなの?まだ小さいのに凄いね!』


忍の子どもの成長が早いことは特別珍しい事ではなかったが、センリは感心したようにうんうん頷いた。

「父親の強さを継いだのだろうな」


扉間もサスケの実力は知っている為、彼の息子には期待していた。


『今度一緒に修業しようかな』

「センリさんに修業を付けてもらえるなんて、息子は喜びます」


センリがにっこりして言うとサスケも嬉しそうだった。ヒルゼンがセンリの強さを知っているかどうかは分からなかったが、前に戦場で刀を交えた時に一瞬で刀を払われてしまったことをサスケは思い出していた。


『今度見かけたらそうする!』


センリが元気よく言うのでサスケは笑みを浮かべ、次の任務のために火影室を出て行った。


様々な一族の忍達を知るのは楽しかったし、戦争では敵同士だった忍と仲良くなれるというのはセンリにとってこの上ない喜びでもあった。

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