- ナノ -


木ノ葉隠れ創設編

-固まりゆく里の地盤とうちはの石碑-



マダラと柱間が土の国に行った四日目。

お昼休憩の時間、私は桃華と共に商店街の食堂で昼食を一緒に食べていた。柱間とか扉間くんほどじゃないけど桃華も忙しくて中々会えないからこういう時間は本当に嬉しい。


頼んだ親子丼を食べながら数日ぶりの会話はすごく弾んだ。


「センリとマダラは昔から一緒にいたんだろう?婚姻しないのか?」


話は広がり、マダラの話になると桃華がふと思ったように問いかけてきた。突然の言葉に私はご飯を喉に詰まらせそうになった。


『う、うん…それはまだ先かな。マダラの気が変わるかもしれないし』


何とか米粒たちを飲み込んで水も口にする。桃華は何だか呆れたように笑っている。


「気が変わるって…」

『だって、すごく年の差だってあるし、この里ができてからマダラも他の一族と接する機会が増えたし……それにほら、可愛い人なんて他にたくさんいるし』


私は大真面目に話してるのに桃華は声を上げて笑ってる。そんなにおもしろいかな?


「センリは本当にバカだな!マダラが心変わりするなんて…くく……有り得ないだろう」


喋ってる途中にも笑いが込み上げてきている桃華はそれを抑えようと口元を手で覆ってる。


『なんで桃華が自信満々なの?』


桃華の言葉は自信が溢れていてちょっと分からなくなった。そう言っている最中にも笑いを抑えてるし…いや、本当に笑いすぎだよね!


「いや、あまりにもセンリが真剣に言うのでな……」


そう言う桃華はまるで子どもみたいな笑みを携えてる。普段キリッとしている桃華が笑うと胸がきゅんとする。なんかこう、いつも見せない表情を見せてくれてるんだって思って………ってそういう事じゃなくて!


『私はいつも真剣だよ?』


そうそう、私はいつだって真面目に物事を言ってるのにな。イズナも結構バカにしてくるんだけど、顔が悪いのかな?そんなに嘘っぽい顔してるのかな?ほっぺたを右手でさすってみるけど…別に普通だよね?


「だってマダラはこちらが見ても分かるくらいセンリにベタ惚れだろう。センリといる時のマダラの顔は本当に幸せそうだ。戦で戦っている時からしたら考えられないくらいだよ」


事もなげに桃華はそう言ったけど、うん。え、マダラがベタ惚れ?ううっ、今度は水を変な風に飲んじゃってむせた。


『うう………そ、そうかな?昔のマダラとそんなに変わりはないけど…』


私はマダラの様子を思い返してみたけど、昔も今もあんまり変わりはない。意地悪な時もあるけど、私が本当に嫌がる事はしないし、かわいいだとか言って褒めてくれる。

……うっ、考えたら恥ずかしくなって来た……。いやね、マダラといると結構恥ずかしくなるんだけど仕方ないよね。マダラってば意外と直球というか…言葉もあんまり隠そうとしないから…。


『桃華はどうなの?里ができて色んな人と接する機会も増えたでしょ?気になる人とかいないの?』


考えたら恥ずかしくなるので私は桃華に話を振った。桃華にしても浮ついた話は聞かない。美人だし強いからそういうのがあってもいいと思うんだけど。
でも桃華は何も言わず自笑して一口水を飲んだ。コップの中の氷がカラカラと音を立てる。


「そんな奴はいないさ。わたしに声をかけるなんざ相当の輩だな」


桃華はそう言うけど実際は分からないものだよね。


『何言ってるの。桃華、強いし美人だし、勿体ないなあ………あっ、扉間くんとかどうなの?同じ一族だし、結婚してないし』


桃華の顔を見ていたら扉間くんを思い出した。いい考えだと思ったけど桃華は苦笑して首を横に振った。


「ないな。第一あの扉間が色事に興味があるとは思えない」


色事って恋愛の事だよね?テーブルの上で手を組んで考える。


『そんな事分からないよ!扉間くんはちょっと意地っ張りだけど強いし、柱間に厳しいけどお兄ちゃん想いだし、ちょっと怖い時もあるけど…』


扉間くんの様子を思い出して一つ一つ言うとまた桃華はおもしろそうに笑った。


『んんん……桃華はどういう人が好みなの?見た目とか性格的な面とか』


いよいよ分からなくなってきたので逆に桃華に聞いてみると、桃華は顎に手をついてうーんと天井辺りを見た。


「好みか。そうだな……」


しばらく考えたあと桃華は思い付いたようにぱっと私を見た。やっぱりかっこよくて強い人とかかな?


「センリのような奴がいいな」

『ほっ?』


予想外の言葉に思わず間抜けな声を出してしまった。聞き間違いかな?と思ったけど桃華は呆気にとられている私を見てくすくす笑っていた。


「もし誰か好きになるなら、センリのような奴がいい。小さい事は気にしないし、それに一緒に居て気が休まる。何事にも笑ってくれるし。それに見た目によらずめちゃくちゃ強いしな」


何、褒め殺し?友だちにそう言われると照れるというか嬉しい。


『チビでもいいの?』

「いや、それは困るな。少なくとも自分より背の高い男がいいな」


桃華は背が高い。175センチって言ってたな。イズナとちょうど同じくらい。でもこの世界の人たちって、特に忍の人たちは男女共に平均身長は高いから簡単にクリア出来そう。


『私が男だったら良かったね』


声を潜めて桃華に囁くと涼しげな口元をニヤッとさせるのでつられて笑っちゃう。今度変化で男の人に化けてみよう。


「そうだな」


桃華と過ごす時間は楽しい。基本的にすきな人と過ごすのは楽しい。でもマダラとか桃華とかイズナは特別だ。あとミトと浅葱と柱間と扉間くん………いや、結構いっぱいいるな。

けどやっぱり友だちと過ごすのは心がほっとする。こうやって何でもないことを話して、それで笑いあうっていうのは戦争が無くなってからさらに大切な事のように感じる。


『桃華と話してるとすぐ時間が過ぎちゃうな』


お昼ご飯も食べ終わったのに、私たちはお店に居座ってる。あんまり混んでなかったから余計話し込んじゃったよ。


「そうだな……」


桃華はお店の壁掛け時計を見上げて、はっとしたように私を見た。


「おい、センリ。もう一時間以上経ってるぞ」


一時間以上か。どうりでお客さんもいなくなるはず……。ん?


『ええっ、まずい。扉間くんに少ししたら戻るって言ったのに!』


私は慌てて立ち上がってがま口の財布からお金を取り出す。


「センリ、会計はしておくから早く扉間のところに戻ってやれ」


桃華も柱間とマダラがいない事を知ってるから急ぐ私に気を使ってくれた。親子丼の分のお金をテーブルに置いて私は足早にお店を出た。


『ありがとう。じゃあまた明日ね、桃華!』


桃華は微笑んで手を振り返してくれた。
自分で言ってから、明日は会える日だったかなと考えた。任務の続きがあると言ってたから会えないかなあ。

そんなことを思いながら火影邸までの道を走った。

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