木ノ葉隠れ創設編

-固まりゆく里の地盤とうちはの石碑-


仕事をこなしていると時間はあっという間で、特にその日の午後は忙しく、扉間もセンリもよく動いたので夕日が傾いてくる頃にはその日の作業は一通り終わらせたのだった。一日目にして扉間はクタクタだったが、センリと共に仕事をこなすのは楽しくもあった。


仕事が終わるとセンリはイズナが住んでいる平屋に向かっていた。マダラがいないのではセンリが寂しがるだろうと思い、夕食を一緒に食べようと誘ったのだった。

センリが夕食の食材を買ってからイズナの家に着くとすでにイズナも帰ってきていた。そしてそこにはヒカクも一緒だった。


センリは台所を借りて三人分の食事を作り、そしてテーブルを囲んで夕食を食べた。普段マダラと二人の食事も楽しいが、こうしてイズナと食卓を囲むのも久々だったし、話も絶えなかった。


「しかし、センリさんの料理は美味いな。そこだけはマダラさんが本当に羨ましい」


ヒカクが炊き込み飯をかっこみながら感心して言った。

『えっ、ありがとう………でもヒカク、褒めてるの?』

そこだけ、と言われセンリは首を傾げてヒカクを見る。口をもぐもぐと動かしながらヒカクは笑いを堪えた。

「いや、姉さんの作るご飯は本当に美味しい。料理についてだけは天才だよ」


続けてイズナも言うがさらにセンリは首を曲げる。


『だけって…!』


衝撃を受けているセンリの反応を見て二人は笑った。センリといると飽きなかった。久しぶりのセンリの反応の良さにイズナは無意識に顔が緩む。


「冗談さ。姉さんは全てに置いて天才だ」

『むっ…馬鹿にしてるでしょう?』


イズナは弁解したが、センリは意地悪そうなその表情を見て口をすぼませていた。それを見てイズナはまた笑った。センリにとったら何故二人がそんなに楽しそうなのかよく分からなかったが、その笑顔を見てバカにされているはずなのに何故か嬉しくなった。


「でも本当に皆羨ましがっているだろうな。センリさんがマダラさんの恋人、だなんてな」


食後の温かいお茶を呑みながらふと思い付いたようにヒカクが言った。


『?』


食器をまとめながらセンリが疑問げにヒカクを見るとイズナも同調した。


「悔しがってる奴らは五萬といるだろうな」

「まあ、マダラさんにとってはセンリさんが馬鹿みたいに鈍感で良かっただろうが……」


イズナに続いてヒカクもしみじみ言うがセンリは二人をみて眉を下げていた。


『なに?もしかして二人とも……マダラが好きだったの?それなら何かごめん…』


「「違う」」


イズナとヒカクの言葉が重なった上に二人とも同じようにじっとりとセンリを見ている。


「兄さんの事は好きだけど……でもそういう事じゃなくて、」


好き、という言葉を聞いてはっと口を覆うセンリを見て言葉を付け足すイズナ。


「センリさんって本当に阿呆だな」


本当にを強調させながらヒカクは呆れたように笑っていた。


『ヒカクってさ、本当小さい頃から私のことバカにしてくるよね…』


大袈裟に泣き真似をするセンリだったが、それはもう大人になったヒカクには通用しなかった。


その後夜も更けてきたので、心配して送ろうと言うイズナを何とか制してセンリは自宅に帰った。

一人で帰る夜道は何故だか少し寂しく感じた。森の近くで見上げた星空は爛々と光っているにも関わらず、儚げに見えた。


『(毎日一緒にいると、ちょっと離れただけで寂しいものだなあ………マダラは今頃柱間とご飯食べてるかな?…………うう、さすがに薄着だからか、寒い。早くお風呂入って寝よう)』


誰もいない家に向かいながらセンリは身震いした。もう春だと言うのに夜の気温は余計に身に染みた。


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