木ノ葉隠れ創設編
-火影と側近-
こんなに時間を気にせずに散歩をしたのはいつぶりだろうかと、マダラは隣を歩くセンリを見て思った。こうしてセンリからと町を歩くのは戦をしていた頃からは考えられないほどゆったりとした時間だった。
まんぷく商店街と描かれた看板までの道を歩けば様々な人が二人に挨拶をする。
「センリ様、この間はありがとうございました」
そこに一人の少女が駆け寄ってきてセンリに頭を下げた。センリは微笑んでその頭を上げさせる。この間この里に越してきた商売一家の少女でその時の引越しを少し手伝ったセンリに、かなり感謝しているようだった。
『ちょっと手伝っただけだよ。それに、様なんて付けなくていいから!』
センリが手で制するが少女は勢いよく姿勢を正す。
「そういうわけにはいきません!」
少女の剣幕に苦笑いするセンリ。里の人々から慕われるのは当たり前の事なのにいつまでも腰が低いセンリを見てマダラも笑った。少女が再び頭を下げるのに困ったように笑って手を振り返すセンリ。
『そんな大層なものじゃないのになあ』
道端で売り物の玩具を覗いていた少年達に手を振り返しながらセンリがポツリと言った。
「慕われてる証拠だろう」
マダラの言葉にセンリはその顔を見上げる。
『それでもなんか変』
そう言って口を尖らせるセンリはまるで子どもだった。突然『あっ』とセンリが言うのでマダラが目線を前にやるとそこには道を歩いてくる袴姿の柱間がいた。柱間も二人に気付いて近寄る。
『柱間!今ね、マダラと崖の上に行こうとしてたんだけど、一緒に行こうよ』
センリは切り立った崖の上を指さして柱間に言った。
「む。そうか。オレもちょうど二人に会いに行こうとしていたところぞ」
柱間がにこやかに言うので三人は崖に向かった。崖の下に着くとセンリは朗らかに言う。
『よし、じゃあ直角崖登りかな!』
「やるか、センリ。今度は負けんぞ?」
『お?じゃあ勝負だ柱…』
「やめろ。里の者に示しがつかないだろう」
『マダラってば自分が負けるからって…』
「昔もオレに負けていたしな」
「なんだとコラ…」
『よしよし、階段で登ろう』
懐かしいような会話をしながらセンリが階段へと向かう。直角崖登りをせずともそこには上まで長い階段が設けられていた。
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