- ナノ -


木ノ葉隠れ創設編

-固まりゆく里の地盤とうちはの石碑-


カルマは尾獣についてを柱間に聞きに来たのだった。

「今現在の尾獣の状態を知っているか」


カルマは柱間に問い掛ける。柱間はセンリを見た後天井辺りに視線をずらし、うーんと悩む様な仕草をした。


「いや……尾獣達が何処にいるかはオレは分からん。一尾が昔から風の国に封印されている事は知っているが……何せ少し前まで戦乱の世だ。戦に尾獣達を利用しようとした者は数多くいたが、成功したという話は聞いた事がない。むしろ尾獣の事ならそちらの方がよく知っているのでは無いのか?」


柱間は様子を見ながらゆっくりと言葉を繋いだ。カルマは腕を組む。


「確かにそれらは我も知っている。では、我がセンリの中に再び入ってからの約十五年、その状態は変わらずという事か…」


カルマがセンリと再びこの世界で再開したのは今から十五年ほど前だ。それまでは度々尾獣共の元にも舞い降りていたが、その時の状態と変わりはないようだった。


『尾獣達に会いに行けないかな?』


先程カルマに問い掛けた言葉を、柱間に向かってセンリが言った。


「探せばもちろん何処かにはいるだろうが……尾獣に挑んで生きて帰った人間はゼロに近いぞ。殆ど尾獣にやられるか……瀕死の状態で帰ってくるかだ」

「それに会ってどうするつもりだ?いくらお前が強いと言っても相手は尾獣だぞ」


柱間に続いて扉間も鋭くセンリに問う。しかしその言葉に返したのはカルマの方だった。


「何も知らぬ、愚かな人間達よ。センリを他の者と同等と考えて貰っては困る。尾獣達に倒される事も無い上、未熟な人間と違って尾獣を痛めつける事もしない。まあ、知っていようがいまいが……御主達に説明するのも些か癪だ」


カルマ以外、センリが尾獣達とどんな関係にあったのかは知らない。しかしカルマは説明する気はなかった。いかにセンリの仲間であろうとまだ柱間達を信用する事は出来なかったからだ。


「センリが他の人間達と違うのは分かっているつもりだ。それに尾獣達を探しに行こうにも今は五大国の里が出来上がって来ている状態ぞ。無闇に他国に入れば侵入者として捕えられるかも分からん。今どこかの国で捕えられたとしたら火の国の立場や木ノ葉隠れにも影響してしまう。火影としても…センリが尾獣達を探すという事を、簡単に許可はできない」


それは火影としての柱間の意見だった。すまんな、と申し訳なさそうな柱間だったが、マダラも扉間も同じ意見だというふうに柱間に同調した。今の時期に他国を探し回れば怪しく思われ、捕えられてもおかしくはない。そんな中にセンリを送り出す事は容認できなかった。


「なるほど……確かにそれは一理ある。ならば我が出向こう。丁度今ならセンリの体から出ても問題は無いほど力が戻っている。少しの間我自身が尾獣達を探しに行こう。人間達には絶対に見付からないよう配慮もする。それならば問題は無いな?」


カルマはそう提案したが今度はマダラが言葉を挟んだ。

「本当に大丈夫なのか?離れる事によってセンリがまた…」


マダラはセンリが消えてしまう事を、また眠ったままになってしまう事を恐れていた。その恐怖を知っているからこそカルマの言う事を単に信用出来なかった。カルマは眉を顰め、自分を用心深く見るマダラを見返す。


「案ずるな。もうそのような事にはならぬだろう。術の縛りが戻れば、我はまたセンリの中に戻されるであろうぞ。安心するとよい、うちはマダラ。過去の出来事があった後だ、我もそれについてはかなり注意を払っている上、この呪いの縛りに対して抗体が出来てきておる。センリの身体が危なくなれば、その前に阻止は出来るだろう……。センリがこの先消える心配はほぼ無に等しい」


マダラは黙ってカルマの目を見ていた。気圧されること無く自分を睨む様に見るマダラの瞳を見返すとその瞳が微かに安心した様に見えた。

柱間もそこまで不安の感情はなく、小さく頷いていた。


「ふむ。センリの体にも何も問題がないようならばそれにオレは口出しはせんが……。十尾…いや、不死鳥とやらはどの尾獣にも勝る力を持ち、人間達からも一目置かれていたのはオレでも知っている。今まで人間に攻撃をしたというのも聞いたことが無いからな」

尾獣達を纏める程の力を持つと言われるカルマならば止める筋はない。


「尾獣達は、我の言う事なら無論すんなり聞き入れる。人間達に支配される事を拒むあの可哀想な尾獣達……センリの代わりに会いに行くとしよう」


カルマは柱間に向かって笑いとも悲しみともつかない表情を浮かべた。

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