- ナノ -


木ノ葉隠れ創設編

-火影と側近-


それからの時の流れは早かった。



決して交わることのなかった千手とうちはが手を組み、里作りを始めたことで今までの戦争が嘘のように無くなっていった。


柱間とマダラ、それからセンリはその先導に立ち、共に里作りをしていった。三人で描いて見た夢は今、現実のものとなったのだ。



次々に人は増えた。

忍一族ではなかった者達も噂を聞きつけやってきたし、センリが作り出した住居に次々と人が入り、商店街ができた。


目が回るくらい毎日忙しかったが、こんなに暖かく平和な日々を過ごすのは皆初めてだった。



センリは一日一日が本当に楽しく感じられた。今まで敵だった者、名前も知らなかった人々と会話をし、一緒に過ごす。敵味方は関係ない、そこにあるのはただ、里の同胞。仲間という繋がりだけだった。これほどまでに幸せで、嬉しい事はなかった。



そのうちに柱間の妻であるうずまき一族の姫であるミトとも会うことが出来た。そしてマダラもセンリも驚いたが二人には三歳になる息子がいた。センリはなぜか涙が出そうになった。戦乱の中、柱間は家族と一族を守る為に努力してきたのだと身に染みて分かった気がした。

センリはすぐにミトと仲良くなった。ミトは柱間より二つ年下で、第一印象はキリッとしたまさに一族の姫といった感じだったが、温厚で丁寧に話す女性だった。封印術が得意らしく、二つに結んだ赤髪のお団子には封印式の札が刺さっている。


柱間の住む屋敷に時々出向いてはミトと会話をして息子の浅葱(あさぎ)と遊ぶ。センリは久しぶりに幼子と触れ合う時間がとても好きだった。ミトも浅葱にとってもセンリの存在は着々と大きくなっていった。



それからセンリには気の合う友人も出来た。千手一族で、柱間の側近を務めていたくの一で、名前を桃華(とうか)と言った。

桃華は千手一族の幻術使いだった。センリも何回か手合わせをしたことがあった。歳は柱間より一つ上で、背がかなり高くまるで男のような顔立ちをしていて口調も柔らかくはなかったが、桃華の方も自分とは正反対のセンリを気に入っていた。あまりうちは一族には干渉しない千手一族だったが、二人はとても気が合った。

忍のくの一というのは戦国時代では珍しい。現にうちは一族にはセンリの他にはくの一は数名程しかいなかった。それもあってセンリは女性としても同じくの一としても桃華と仲良くなるのに時間はかからなかった。百年以上生きていて戦えば誰よりも強いのに、子どものような純真爛漫なセンリが桃華はすきだった。


千手一族の皆も、時間が過ぎるにつれてセンリと親しくなったし、他の一族も同じだった。

千手一族の人々に、「戦時中は本当に助かった」と隠れて感謝される事が度々あった。センリのお陰で一族達の多くが助かった事は事実で、センリの人柄に一族の者達は感謝せずにはいられなかった。

お前のおかげで戦争を乗り越えられたと、忍界の女神だと、千手桃華にまじまじと言われた時はさすがに言い過ぎだと思ったが、実際皆そう思っていた。



しかしセンリは本当に買いかぶりすぎだと思っていたし、もう過去の事は気にしないでほしかった。

今、自分たちの前にあるのはこれからの未来だけだった。



マダラとイズナ、それからセンリは同じ家に今までと同じように暮らした。前の家よりも大きく立派な家だったので最初は広すぎると感じていたが慣れてくると住みやすくもなってくるものだ。



里づくりを初めて、続々と他の一族達も仲間に加わった。里内での住む場所の位置は今のところ決まりは無かったが、その中でも戦場で活躍していた一族達は里の中でも一族ごとにまとまって住居を構えていた。うちは一族もその中の一つで、一族達から離れているのはマダラとイズナ、センリの三人と、他数名だった。しかしそれでも今まで関わることの無かった他の人々と触れ合えることは出来た。



マダラもイズナも毎日笑いを絶やさないセンリの姿を見て心から里作り始めて良かったと思っていた。


里を作って一ヶ月も経てば色々なことに慣れてきてより充実してきた。余裕が出来てくるとマダラとセンリの心には改めてお互いに対する感情が生まれたが大きな一歩を踏み出すことが出来ずにいた。それよりどうしても里の事を考えてしまっていた。


センリにとっては確かに兄弟喧嘩は丸く収まったが、重要なのはこの後だ。カルマと約束もした。あれから一度も会いはしていないが、センリはカルマの存在を心に感じていた。

二度ほど満月の日、燃焼日を過ぎたがどちらもセンリには変化がなかった。驚いたことにこれまで起きていた体の異常は何一つ無かった。しかしすぐにセンリは分かった。胸元の呪印が薄くなっていた。確かにまだチャクラは使えなかったがそれでも体にはなんの負担もなかった。


何もかもが上手くいっている気がした。

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