木ノ葉隠れ創設編
-重なり合う愛-
「だがお前は死なないんだろう?お前はずっと俺と共にいるんだろう?」
マダラの手がやさしくセンリの耳あたりに下りてきて頬にかかった髪を梳いた。
「だったら何を悩む事がある。俺にとったらお前がいなくなる事が一番…怖い。確かに俺はイズナが死んだと思った時絶望していた。お前も今まで色々な死を見てきたんだろう?その苦痛は俺にでも分かる………だがそれでも俺は、お前と一緒にいたい。誰かが死ぬ所を見ようが死なない体になれば、永遠にお前と共に居られる」
予想外のマダラの言葉にセンリは思わず口を微かに開けた。
「お前と共に生きていけるならそれ以上の事は無い。辛い事があったとしてもお前と分け合える…そうすればお前も少しは楽になるだろ?」
マダラの意思はセンリが思っていた以上に固く、強かった。センリが思っているよりマダラはセンリの事を愛していた。辛く、長く果てしない道をセンリと共に生きる事を望んだ。
『マダラ…』
センリは開いた唇をぎゅっと噛み締める。マダラはまだ何か言いたげなセンリの表情に目を凝らした。
『でも、それに私………成長してなくて月のものも来ないから……赤ちゃんが産めない、と思う』
マダラと気持ちを共有出来たことは幸せなことだったがセンリにはそれ以上に考える事が多かったようだった。子どもがすきなセンリからしたら確かにそれは気に病む事だろう。襲いかかる何かに耐えるようなセンリの顔をマダラはそっと自分に引き寄せた。
「お前にとって何が大事なのかは分からないが、俺にとって大切なのは、お前が側にいるかどうかだ、センリ。子を成す事についても不死についても、お前が気にする事はひとつもない」
少し掠れた、穏やかなマダラの声がすぐ近くでセンリの頭に響いてくる。
「生憎俺は、お前がいればどんな辛い中でも生きていけそうなくらいお前に惚れちまってる」
『マダラ……』
マダラの声に嘘偽りは無かった。顔は見えずともその声を聞けばセンリは分かった。
「婚姻については今すぐしてもいいくらいだ」
マダラにとってはセンリの共に不死になるということは本当の意味でセンリと一緒になれるという事だった。センリはマダラの言葉に微かに体を動かす。
『そ、そんなすぐに決断することないよ。それまでに気持ちが変わるかもしれないし…』
頭に力を入れて自分を見上げるセンリを見てマダラは眉を顰める。これだけ言ってもまだ伝わっていないものか。
「だから俺は…」
『じゃあ、二年。あと二年待って。それでマダラの気持ちが変わらないなら…』
その時は夫婦になる。
という事か。マダラはセンリの提案に少しばかり納得いかなかったが、ため息をついた。
「ハア………それでお前が納得するっていうなら…二年だろうが何年だろうが俺の気持ちは変わらねーが…」
純粋なセンリにはやはり順序というものが必要だろうとマダラは結論を出して、センリの案を呑んだ。
『だって一回夫婦になっちゃったらもう離れられないんだよ?途中で違う人を好きになっても不死のまんまだよ?』
マダラは今度こそ盛大にため息をついた。頭をもたげているセンリを枕に押し付ける。
「馬鹿なこと言ってねーでもう寝ろ。お前眠いんだろう?」
マダラの言う通りだった。センリは押し付けられたマダラの手をそっと退かす。
『……ねる』
そう言うとセンリは少しマダラに擦り寄って目を閉じた。マダラは口角を微かに上げてセンリが目を閉じた事を確認すると自分も仰向けになって目を瞑った。
すぐにセンリの寝息が聞こえてきた。これじゃまるで生殺しだと思いながらも自分を無条件に信用してスヤスヤと眠るセンリに手を出す気にもなれずにマダラも夢の世界へと意識を手放した。
[ 29/230 ][← ] [ →]
back