木ノ葉隠れ創設編
-不死になった夫、捧げる愛-
マダラは正面からセンリを見つめ、しっかりとした口調で声を発した。
「俺の妻になれ、センリ。俺と共に生きろ。異論は認めない」
最初は面食らっていたが、マダラがここ最近見ない程熱心に命じるので、ついセンリは微笑みを浮かべた。
『もう……それじゃ要求じゃなくて、命令だよ』
拒否権が無い指令にセンリが笑い、つられてマダラも僅かに唇の端を上げた。
「…センリ、返事は」
センリはベッドの上に正座をして座り直し、真っ直ぐにマダラを見上げた。
『………ふつつか者ですが、どうぞよろしくお願いします』
変にかしこまって言うセンリを見てマダラは今度こそ笑った。
「どんなにふつつか者だろうと、絶対に離してやらないから大丈夫だ」
相変わらず高慢そうな言い方だったがそれさえも愛おしく思えてセンリはその体に抱き着いた。温かく、安心する温度。これからはその温度も当たり前になるのかと思うとセンリの心は満たされる様な、溢れる幸せを感じるのだった。
「お前の過去に、俺はいない。お前とはもっと早くに出会いたかったが……」
センリの耳元で聞こえるマダラの声は、ひどく愛おしげだ。
「お前がこれから生きる未来が、欲しい」
その言葉にセンリは目を瞬かせ、そしてすぐにマダラを抱きしめる腕に力を込めた。
『じゃあ交換こしよう。私のこれからの人生は丸ごとマダラにあげるから、マダラの時間は私にちょうだいね』
「当然だ。返却は受け付けないぞ」
センリは顔を上げ、マダラと微笑み合った。本当に幸せだと思った。
『マダラ、小さい時に言ってたもんね。“嫁の貰い手がなかったら俺が結婚してやる”って』
幼い頃の事を思い出し、センリはふふと笑った。あの時の言葉が現実のものとなるなんて、当時は思いもしなかっただろう。
「俺は約束は守る男だ。見直したろう?」
センリが腕を下げ少し体を離すと、マダラは意地悪そうな微笑みを浮かべていた。幼い頃を思い出すような、ニヤニヤ笑いだ。
『ええー?“お前みたいなおかしいヤツ嫁に貰う人なんていねー!”とか、“お前は馬鹿だから俺が面倒みてやるんだよ”とか言ってたくせにー』
センリがいじけたように唇を尖らせるとマダラはまた微笑んだ。
「そんな風には言っていないだろう」
話を少し誇張するセンリに向かってマダラは静かに言い返す。マダラは、自分の体に確かなあたたかい体温を感じた。そして、あの時のように自分の気持ちに蓋をすることは、この先もうないのだろうとも思っていた。
『ええっ、言ってたよ!私のこと馬鹿にしてたでしょ』
「いや、違う。“お前の事が好き過ぎて、他の誰かには絶対渡したくない”って意味だ」
センリは目をぱちくりさせて、その後ふんわりと頬を染めた。照れて恥ずかしくなり、マダラの胸に顔を押し付けた。
『…もう……そんな事言われると、照れるよ…』
服に押し付けられながらセンリがモゴモゴ言った。愛らしいその姿を見てまたマダラは幸福感で胸がいっぱいになっていた。
『マダラ』
センリが、ほんの少しだけマダラの服から顔を離し、小さく呼んだ。
「何だ?」
自分が呼べば、マダラはいつでもこうして必ず返事をくれた。センリはそれが心の底から嬉しかった。
『マダラ、大好きだよ』
マダラは一瞬目を瞬かせ、その後また優しくセンリを抱き締めた。
「俺も、お前を心から愛している。こんなにも愛おしいと思うのは……センリ、お前だけだ」
二人は見つめ合い、どちらともなく口付けた。あたたかく、幸せな温度だった。
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