木ノ葉隠れ創設編
-第2次忍界大戦-
「しかし……忍ではない、無関係の人間に気付かずに爆破させようとしたのはオレの落ち度だった。センリを見習って、もう少し気を配らねばならんな」
マダラが反応を見せずにいる内に、扉間は自分に言い聞かせるように呟く。その表情を見て、マダラは確かに柱間を思い浮かべていた。
「………お前と柱間は、似ていないな」
扉間は少し視線を上げ、不思議そうな目でマダラを見た。
「それはオレ自身も同感だ。幼い頃から周囲には言われ続けてきた事だからな。しかし……お前とイズナもあまり似ておらんだろう。見た目も性格も」
「……自分では分からん」
「最初の印象だとお前の方がかなり取っ付きにくくて横暴そうだが、実際イズナの方が我が強い。それに加えて頑固だ。だがお前達は二人とも…心を許した人間に冷たく当たる所はそっくりだ」
扉間は口角を上げたが、マダラはそれに比例するように眉をしかめた。
「俺はセンリに冷たく当たったりなどしていない」
「それはそうだ。むしろ普段のマダラを知る者ならば、驚くくらいの優しさだろう。兄者も羨ましがる程に」
「お前……俺を揶揄しているのか?」
「まさか。優しい男だと褒めているのだ」
「それをからかっていると言うんだ」
マダラは不機嫌そうに唇をムッとさせたが、むしろ扉間が面白がっているように見えて余計腹が立った。
「…お前と言い争っていても埒が明かん。さっさと寝ろ」
マダラはフンと鼻を鳴らして言ったがやはり扉間は全く気にしていないようだった。
「マダラは眠らんのか?」
さすがにそろそろ眠気も感じていた扉間は、出てくる欠伸を噛み殺しながらマダラに問いかけた。
「俺は不死鳥の力で、数日眠らずとも身体に問題は無い」
「十尾の力か。中々役に立つものだな」
「しかしお前はそうもいかんだろう。この戦時下に、それも火影とあろうものが寝不足で倒れでもしたら迷惑千万だ」
マダラの言い方は素っ気なかったが、扉間はその言葉に何日か前のセンリを思い出し、ふと笑みを零した。棘があるかないかに差はあるが、どちらも自分を思いやる感情が見えて、扉間は内心嬉しくもあった。
センリが及ぼす影響は、いつでもあたたかく、良いものだった。
「………何を笑っている」
扉間が妙に顔を綻ばせているのを見てマダラは眉間の皺を更に濃くした。
「いや……センリはきっと、お前の心も変えたのだろう、と思ってな」
「…」
マダラは眉間に刻まれた皺はそのままに、扉間の心情を図るようにその目を見返した。相変わらず何を考えているのやら分かり難い眼だった。
「人の心を変えるという事がどんなに困難で複雑なものかはよく分かっているが……それさえ無かった事に出来るのは、センリの力なのだろう。本当に大した奴よ」
扉間が自分に微笑んでくるのは癪だったが、それよりどこか憂いを帯びた、まるで罪悪感に苛まれているような表情は、なぜかマダラに苛立ちを覚えさせた。
「お前だって変えただろう」
場所を移動しようと思い立ち上がろうとした扉間は動きを止め、マダラに視線をやった。
暗さでマダラの詳細な表情は分からなかったが、どこか叱りつけるよつな口調だ。
「お前の側近になってから、イズナは……随分変わった」
「…!」
とても遠回しな言葉だった。
だがその呟きに隠された本当の意味が分かるような気がして、扉間はふっと表情を和らげた。
「やはり……お前は情深い奴よ、マダラ」
「…そういうのはいい。お前―――年々鬱陶しい男になっているぞ」
「嫌味ではない。本当にオレは…お前達兄弟を頼りにしている」
「フン……まだ戦争も終わっていないというのに呑気な奴だ」
今度こそマダラはむくれているだろう。長い前髪で表情が見えなくとも、扉間は確信していた。
里長である以上、他者に弱味を見せる事は以ての外だ。大き過ぎる感情が争いを呼ぶ事も、扉間はよく分かっていた。
だが、その感覚と同じ位、人を頼る事は、重要な事なのではないかとも思っていた。
「(まずは……この戦争を……―――)」
扉間は、二代目火影としてのこれからの役割をどう果たしていこうかと考えながら深い眠りについた。
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