木ノ葉隠れ創設編

-第2次忍界大戦-


それから二十分後、穢土転生体が敵地にたどり着く頃合になっても、爆発した様子は全くないようだった。
扉間達も現場に程近い場所まで来ていた。


「センリ様が本当に五乗起爆札を止めたのでしょうか?」

「あの術を止める事なんて可能なのですか?」


ヒルゼンが心配そうな表情で問いか、立て続けにダンゾウも質問した。



「爆発が起こっていないという事は、そうなのだろう」

「姉さんならやりかねないな」


爆発音が聞こえないので扉間とイズナは少し安心した様子だった。


「しかし不発という事は、増援の連中はどうする?」

マダラの問いかけに、扉間は少し考えた。


「少し待ってくれ」


扉間の言葉に、他の六人はサッと足を止めた。扉間が地面に片膝を着き目を閉じ、指の腹を土の上に当てた。感知をしている事が分かったので、六人は黙っていた。



「!」


そして扉間が何かを察知して目を開くのと同時に、センリの白い服が再び現れた。

砂隠れの忍のくノ一を抱き抱えている。失神しているようだ。



「姉さん!」

「無事だったかセンリ。無茶ばかりして――――そいつは…?」


イズナは胸を撫で下ろし、マダラは安堵したように息を吐き、くノ一を腕からそっと下ろしているセンリに問いかけた。見たところ怪我もないようだ。


「……先程生贄に使ったくノ一か」

「!」


扉間は見覚えのある顔に気付いて小さく言った。ヒルゼン達も確かにそうだったと思い出した。


「生贄、って…それに使った人間は死ぬはずでは…――」

ダンゾウは驚いたように呟いたが、扉間もマダラも特に際立って動揺している訳ではなかった。穢土転生の術を解く寸前であれば、センリが生贄の人間を死なせずに助けられる事を知っていたからだ。


『爆発する前なら大丈夫だよ』

センリは砂隠れのくノ一の首元に指を当てて心音を確認しながら返した。脈拍も問題ないようだ。あと数十分もあれば目を覚ますだろう。



「無事で良かったです、センリ様…爆破を止められたのですか?」

ヒルゼンは見るからにホッとしたように言った。



『うん、ギリギリ間に合ったよ。あのまま爆破してたら村が一つなくなる所だったけど…何とか大丈夫だった』

センリも一安心して少し微笑んだ。


「砂の増援の奴らはどうした?」

『倒してきたよ。戦闘不能にしたから大丈夫だと思うけど…近くの村には結界を張っておいた』


まるで戦った後とは思えない程に穏やかに言うセンリを見てヒルゼン達は少し驚愕の目をしていた。



「さすがだな、センリ。やはり心配は無用だったか」

増援が倒せた事を聞いて扉間も少し唇を引き上げる。
相変わらず余裕のあり過ぎるセンリを前にしてマダラとイズナは感服していた。


「お前が舞うのを見られなかったのは少し残念だな」


マダラの言葉にセンリは苦笑いをしたが、ダンゾウとヒルゼンはその言葉に同意するような目をしていた。



『でもこれで木ノ葉に帰…――――』



その場にいた七人が一斉に戦闘態勢をとった。センリも地面に膝を着いたまま近くの木の影を凝視した。



「それで隠れているつもりか?」


同じ方向を写輪眼で見つめながらマダラが言った。扉間もイズナも睨むように見つめ、コハルは刀の柄にサッと手をかけた。

隠れていた人間は数秒後に姿を現した。扉間はその姿を見て僅かに眉をピクリとさせる。



「お前…忍ではないな?」


木の影から姿を現した若い男は、辺りから感じる殺気に顔を引き攣らせながらも、その表情は怒りに燃えていた。そのチャクラと、手に持っている刃物が包丁である事から忍でないと分かったが、相当の憎しみの視線だ。



「そんな飯事に使うような物を持って、一体何をするつもりだ?」


忍でないと分かった為にマダラは余裕を持って問いかけたが、それとは逆に、男はかなり切羽詰まった様子だった。



「お前達木ノ葉隠れには用はない!どけ!」


男は包丁を両手で掲げながら大声で言った。憎々しげに睨んでいるその先を辿ると、くノ一とセンリがいる。男の様子に、扉間とマダラはピンと来ていた。


「なる程…敵討ちといったところか?」

扉間の言葉に、男は一瞬面食らったような顔をしたが、すぐに歯を食いしばった表情に戻った。



「そうだ!!そいつら砂隠れの連中は…オレの村を滅茶苦茶にしやがったんだ!」


ここまで言えばセンリにもヒルゼン達にも訳が分かった。恐らくこの木喰山のふもとの村の住人の一人だろう。


「村の近くで待ち構えていた奴らをそこの女が倒すのは見ていた……だが…そいつはオレが殺る!そこをどけ!」


そしてセンリを追ってここまできたのだろう。男の瞳は完全に怒りに染っている。自分の手で仇を取らなければ絶対に気が済まないといった様子だ。その瞳を見て扉間もマダラも、かつての乱世を思い出した。



「殺して、どうする?」

マダラは男に鋭く問いかけた。


「そんな事は知った事か!オレの姉貴はそいつらに殺されたんだぞ!!報いを受けるべきだ!」

『どかない、と言ったら?』

「っ――お前達だってそいつらを助ける道理はないだろうが!お前らはどうだっていい――とにかくオレはそいつを殺す―――!」


敵討ちは達成させたいが、忍相手に勝ち目がないと分かっているのか、男は周囲の殺気立った空気に冷や汗を流していた。



「やめておいた方がいい」

「そんな事をしてもお前の家族は帰っては来んぞ」


イズナに続いて扉間が諭すように語りかけるが、男はますます憤怒を湧き上がらせている。



「うるせェ!!お前達のような奴らが――お前らが勝手に争いを始めたせいでこんな事になってんだぞ!!オレは―――オレはそいつを殺す――!」

『…』

「!」



男がくノ一に向かって足を踏み出した次の瞬間、様々な事が一斉に起こった。


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