- ナノ -


木ノ葉隠れ創設編

-弥彦と小南と長門-


木ノ葉への帰り道、だんだんと晴れていく空を見ながらセンリと自来也は木々の間をすり抜けていた。

雨がだんだんの小雨になり、霧雨になり、そしてそれが止み、太陽の光が見えて鬱蒼と茂る森に入ると、何だか懐かしい気分になった。


「あの子達は、きっと何か大きな事をやり遂げる気がするのです」


木の幹をガッと蹴りあげながら隣から自来也が言う。偶然にもセンリも同じ事を思っていた。


『うん。三人なら、きっと雨隠れを変えられるよ』


未来の為、友の為に努力した三人なら、きっと今の雨隠れを変えていけるだろう。センリはその意志を三人に託した。


「もしかしたら…あの子達が予言の子なのかもしれません」

『ガマ丸……大蝦蟇仙人の?』


センリが聞き返すと自来也は前を見ながら頷いた。


「あの子達を正しい方向に導けたかどうかは分かりませんが……」

『大丈夫。きっと間違った事は教えてないよ』


大蝦蟇仙人の言う予言の通りに実行できたかは分からなかったが、センリの言葉に自来也は安心した。


「センリ様が来てくれて、本当に良かったと思っとります。感謝してもしきれません」

『私こそ、とっても素敵な出会いができて、すごく良い二年間を過ごす事が出来た。あの子達から学んだ事もあったもの』


自来也はふとミナトの事を思い出した。「たくさんの事を教えてくれた」と弟子達はいうが、センリが言うようにそれはむしろ逆なのではないかと思った。


『出会った時は「痛み分けが必要だ」って言ってた弥彦も、それは違うのかもしれないって気付いてくれた。あの子達は、幼くても、自分の家族の死を乗り越えて…痛みを乗り越えていけるんだって事を教えてくれた』


真昼の太陽が木漏れ日となってセンリの姿に降り注ぐ様子は確かに女神のようだと、無意識に自来也は頭の隅で考えていた。

そしてセンリの言葉は、あの子ども達を信じてみたいという自来也の中の大きな要因の一つになっていた。



「ワシは……この二年、センリ様からも大切な事をまたたくさん教えてもらいました」


予想外の言葉にセンリは少し速度を落として、不思議そうな顔を自来也に向けた。



「ワシも人間としてまだまだ未熟だと考えさせられました……」

『何言ってるの、私だって全然熟してないよ!人間だもん、たくさんダメなところもあるよ』


その言葉は自来也の心からの感謝だったが、やはりセンリはセンリだと思い知らされ、自来也はふっと笑みを零した。



『そんな風に言ってくれてありがとね、自来也。自来也も、とても頑張ったと思うよ!』

「ハハハ、まだまだセンリ様には敵いませんなぁ」


もう二十代も半ばだというのに未だに子どものような扱いをするセンリに笑いながらも、自来也の心は頭上の快晴のように曇りがなかった。この二年間、どう思い返してみても、無駄な事が一つもなかったからだ。



「長門が教えてくれた事……“信じる力”。ワシもあの子らを信じて託してみるとします」


木ノ葉隠れへと続く木々を蹴りながらセンリが真剣に言い、自来也も頷く。

この二年間自分の好きにやらせてくれた三代目火影と、協力してくれたセンリに、自来也は心から感謝していた。

里に戻れば今度は木ノ葉の里の為に尽くさねばならない。それに残してきた友と弟子達の顔も早く見たい。

風にヒラヒラとはためくセンリの白い服を目で追いながら自来也はまた意志を堅く決めた。
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