木ノ葉隠れ創設編

-弥彦と小南と長門-


その後、木籠から溢れる程の山菜やきのこを貰い受けたセンリは、言葉通りに結界を貼り、その集落を後にした。

小屋までの道を歩き出すと、岩隠れの忍は何も言わずに着いてきた。



「オイ、お前!オレ達に絶対に攻撃するなよ!」

センリの左側を歩きながらその向こうを歩く忍に向かって弥彦が言った。さすがは三人の中で一番の怖いもの知らずだ。


「別に、そんな気はねーよ」


岩隠れの忍は弥彦を見下ろしながら不機嫌そうに言い返した。


「その心配は必要ないのォ、弥彦」

「うん?……まあ確かに、自来也先生もセンリ先生もいるからな!」

「……」


自来也も、男を観察していたが、そうなる事はないとほぼ断言出来た。


「戦う気なんかねーよ。だいたい戦ったとして勝てねェしな。あんた、何ヶ月か前に雨隠れの半蔵と戦ってた三忍の一人だろ」

「ほほぉ!よく知ってるのォ」

「さすが自来也先生!」

自来也は少し驚いたが、弥彦は自分の事のように嬉しげだ。


「雨隠れを行き来してる奴らで、あんたらの事を知らない奴はいねェよ」

『自来也は有名になったんだね』

「いやあ、照れますなあ」


自来也は大袈裟に照れた振りをして後頭部をかいた。小南と長門は尊敬の念で自来也を見上げる。


「あんたこそ有名だろ。女神さんよ」
忍の言葉に、センリは軽やかに笑った。


『私は人間だよ!それで、君の名前は?』

「……インテツ」

『インテツくんね、よろしく。私もお腹空いたから早く魚を取って一緒に食べよう』

「何で敵国の忍なんかと…」

『でもお腹空いてるんでしょう?それに、私達はインテツくんに攻撃する気もないし、インテツくんも同じ。それなら一緒にお昼ご飯を食べれば解決じゃない』

「……」

「確かにそれもそうですなぁ」


自来也はすでにセンリの性格も不思議な説得力もよく知っていたので、むしろ納得してしまっていた。


「助け合いは大切な事だからのォ」

自来也は弥彦達に言い聞かせるように言った。


「うーん……でもまあ確かに、オレ達も先生に助けられてるからな」

「困ってる人は、助けたらいい」

『そうだね、長門。とても素敵な事だ』

センリが長門の頭を撫でると、長門は少しだけ誇らしげに微笑んだ。


「こんなにたくさん食材を貰ったから、四人じゃ食べ切れないしね!」

『本当だね!寄せ鍋にしたいなー』


小南が、自来也の腕の中の木籠を覗きながら嬉しそうに言い、センリはニヤニヤした。インテツは四人のやり取りを黙って見ていた。

先程までの切羽詰まった感情が嘘のように解けてなくなっていた。敵国の忍に囲まれているというのに、不思議と緊張はなく、むしろ安堵の感情の方が大きいのは本当に不思議な事だった。



子ども達は率先してインテツに釣りの仕方を教え、今回はそのインテツが過去一番大きいといえる巨大魚を釣り上げた。

揃って昼食を食べる頃にはインテツは完全に四人に気を許していた。ただ場所は、万が一の為に小屋の中では食べずに、それ程離れていない洞窟の中だ。

可能性はかなり低いといえ、岩隠れの忍達が探しに来た時に小屋が見つかると困ると自来也は考えていた。センリもその心を組み取り場所を変えたのだった。






[ 219/230 ]

[← ] [ →]

back