木ノ葉隠れ創設編

-弥彦と小南と長門-


『私が思うに……』


センリは少しだけ視線をずらし、そしてまた忍に戻した。自来也よりも若く、見たところまだ十代後半だ。実力も中忍程度といったところだろう。


『岩隠れの忍の君は、そこの森を通り抜けるルートで木ノ葉隠れに向かっていた。君のチャクラ的に偵察部隊、かな。少し遠回りになるけど、主要なルートには重ならない、でも地形的にかなり分かりやすい、利用しやすい道だ。他の隊員達は任務を終えて帰ったけれど、何か理由があって君は最後まで残っていた。だから食料なんかが足りなくなって、この周辺の集落の人を脅して物資を確保しようとしていた……』


センリが言葉を紡ぐ度に男の目が見開かれていく。


『だいたい合ってる、かな?』

「殺すなら殺せ!」


男の言葉に、今度はセンリが眉を寄せた。
弥彦が一歩前に進み出たが、自来也が右手で制した。



『殺さないよ。話をしているだけ』

「話だと?お前、どこの国のモンだ?」

『木ノ葉隠れだよ』

「木ノ葉だと?敵国の忍と話など必要ない!動きが活発でないといえ、今は戦争中だぞ!」

『戦争中かどうかは、話し合いをするかしないかには関係ないよ。君と話をする事は、私には必要ある』

「な、お前、何を言っている?」

『あなたと話があるって言ってるの』


男は頭がこんがらがってきていた。センリの言葉を聞いていると怒りよりも、訳が分からないという気持ちが強くなってきて、腕の力を緩め、センリの瞳をじっと見た。


「―――!あんた、もしかして“再生の女神 ”か?」


センリの瞳を見ていた男がハッとして言った。センリは忍の男と、怯えて座り込む住民を交互に見て、ようやく男の腕を離した。男に、攻撃する気配がなくなったからだ。

前回の大戦で何度か聞いた懐かしい呼び名に、センリは少し表情を崩した。


『私は人間だよ。君と同じ、ね』


センリが纏う不思議な空気に、完全に男は戦意喪失…というより、毒気が抜かれなくなっているようだ。

その様子を見て自来也は三人を見下ろし、センリ達に近付いた。



『落ち着いたなら続けたいんだけど、君は彼に攻撃する気だったね?』

「そ、それは、」


センリは怯えていた初老の男の肩にそっと手を乗せ、二人の間に入るように半歩前に出た。



『少し脅すつもりだったかもしれないけど、君のその行動は間違っているよ』

「それは……――――こっちだって生きる為に必死なんだよ―――」

『お腹が空いていたの?』

「……ここ一ヶ月録に寝てねェ。食い物だってそりゃ粗末なもんしかねェ……」

『だったら、こんな事をしないで、口頭で「食べ物を分けて欲しい」って言えばいい』

「んな事言って、本当に食い物を分け与える奴がいると思ってんのか?敵国の忍に?」

『そんな事は聞いてみなきゃ分からない。それをせずに最初から「脅してとろう」って思うこと自体が、私は賛成できない』

「………」

『もし貰えなかったとしたら、あの森に住む動植物を食べたらいい。魚だってたくさんいる。方法はいくらでもあるよ』

「………」



とうとう忍は黙り込んでしまった。近付いてきた四人も、口を開かなかった。


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