木ノ葉隠れ創設編

-弥彦と小南と長門-


四人が寝泊まりしていた地区はまだ内戦や外部からの奇襲により、他の地域より治安が悪かった。

その為自来也とセンリはいざと言う時に逃げられるように床下に隠し通路を掘り、「かえる板」という安否確認の為の小さな板もつくっていた。

かえるの絵が描かれている方とそうでない方があり、それをひっくり返したり戻したりする事でどこにいるかすぐに分かる上に偽物防止にも繋がる。


自来也は通称ガマ仙人という事で主役になるのはいつもかえるだった。

かえるの着ぐるみに身を包み、かえるになり切って修業する四人は周りから見たら滑稽に見えるかもしれない。

だがその時間がどれほど大切なものか、自来也もセンリもよく分かっていた。三人が大人になった時、必ず道を選ぶ時のしるべとなるだろう。



三人に修業をつけている中で、せっかく本体がいるのだから、とセンリは毎度のように周囲の集落に訪れて問題がないか見て回る事もしていた。



――――――――――――

今回は修業終わりの他の四人もセンリに着いて、少し離れた小さな村を訪れていた。

周りを塀に囲まれてはいるが、住人が百人いるかいないかといったかなり小さな村だ。

珍しく雨が止んでいる。


「こんなとこ来て一体なにをするって言うんスか?センリ先生」


未だに目的が分かっていない弥彦は唇を尖らせながら問いかけた。接し方が随分様になってきたものだと弥彦の後ろで自来也は苦笑した。



『うーん、なんかちょっと嫌な気配がするって。さっきの子が言うには、この集落なんだけど………―――!―――』


さっきの子、というのはその辺を彷徨いてた野良猫の事だったが、センリがふと耳を済ませるとすぐにその内容が正しかった事を知った。


「!」

「どうしたの?」


僅かな物音が聞こえた。
センリはサッと自来也に目配せすると、自来也も気付いたようでシーッという動作をした。三人が同時に口を噤む。

センリは目を閉じ、辺りを感知すると、気配はすぐに引っかかった。



『こっちだ』


センリが手招きをして先導を切る。家々の間を通り抜けて、道の角を曲がった瞬間だ。すぐに現場が見えた。少し遠いが、四人の目にはそれがハッキリと映っていた。


「!?」

「……―――くなければ言う事を聞け―――!」


額当てをした忍の一人が、家の扉の震える住民に向かって手を上げた瞬間までは、ほんの僅かな時間だった。

四人が現場を目にし、息を飲む瞬間、瞬きをする間もないその刹那の間。


「!?」


瞬きの後、弥彦達の目に映ったのは、忍の手を掴むセンリと、怯えから戸惑いの顔に変わる寸前の住民、そしてその忍の驚愕の表情だった。

本当に一瞬の出来事に、自来也さえも状況を把握するまで数秒程かかった。


「な、なんだテメーは!」


突然自分の手を掴まれた、という事実を実感した忍が怒鳴る。


『私の名前はセンリ。君の名前は何?』


怯えも怒りもせず静かに答えるセンリに、忍は訳が分からないと眉を盛大に寄せた。
腐っても忍。腕を掴まれるまで全く、何の気配も感じないというのは、センリがどれ程の実力者かという答えを導き出す要因の一つになる。故に忍の男はすぐに反撃しようとするが、まるで金縛りにあったかのように身体が動かない。

センリは掴んだ腕を離さない。


『一体、何をしようとしていたの?』

「何、って……―――」


目は鋭くセンリを睨み付けたままだが、忍の声音が少し動揺したように思えた。センリは、目の前の忍が、自分のした事に罪の意識を持っている事を感じた。


自来也達四人は何も言わずに、センリの行動を見つめていた。

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