- ナノ -


木ノ葉隠れ創設編

-三代目火影-


センリとマダラの読み通り、大軍勢を撤退させた事により、また戦場の被害は緩やかになっていた。ただ、センリの本体とマダラが里に帰還した時点で雨隠れではまだ自来也達が戦闘を繰り広げているようだった。

ヒルゼンと相談し、一週間経って帰らないようならセンリとマダラも援護に向かう事になっていたが、一週間目に当たるちょうどその日に綱手と大蛇丸が他の忍達を引き連れて戻ってきた。

センリはまさか自来也が、と焦りを見せたが、話を聞くとどうやら状況が違うようだった。




「全く、自来也め…勝手な事を」


ため息混じりにマダラが言うが、軽蔑というよりは、幼子のわがままを見て呆れるような言い方だった。

雨隠れの半蔵達と戦闘後、帰還しようとした綱手達の前に戦争孤児が現われ、自来也はその子どもに修業をつけるべく雨隠れに残ったとの話だった。


『なるほどね。自来也らしい』

「すみません……私達は反対したのですが」


綱手も自来也の事にはほとほと呆れ果てたという表情だった。二人は止めたのだろうが、恐らく自来也は独断で決めたのだろう。


「どうします?連れ戻してきますか?」

大蛇丸はそうする事に賛成だったが、ヒルゼンとセンリはそれを制した。



「いや……あやつが言い出したら聞かない男だということはワシがよくよく分かっておる」

『私は、連れ戻さなくていいと思う』


センリの言葉に意外にもマダラも賛同した。



「正直な所、自来也がいなくとも戦況はどうにでもなる。状況が変われば別だが、今は好きにさせておけばいいだろう」


綱手も大蛇丸も意外そうな顔をしたが、センリもウンウンと頷いた。


『今は活発な戦闘は起きていないし、多分どの国もひとまずは戦いから手を引きたいと考えてるみたいだから。綱手達が善戦してくれたからだよ、ありがとう』


それを聞いて綱手はかなり安心したような表情をした。


「沈静化しているとはいえ、まだ戦いが続いている所が何ヶ所かある。少し休息する時間はあるが、お前達にもまた向かってもらいたい」


普段よりも真剣な眼差しをしたヒルゼンが綱手と大蛇丸を交互に見つめると、二人は深く頷いた。



『でも雨隠れの近くでもちょこちょこ戦いが起きてるからちょっと心配だね……私も自来也の所に行くよ』

「お前が?」


センリはマダラの言葉に『うん』と頷いた。マダラは金色の瞳を見て数秒考えた後、小さくため息を吐いた。


「許可を貰わなかったとしても、お前は勝手に行くだろうが」

『よく知ってるね?』


綱手とヒルゼンは苦笑いをしたが、大蛇丸はセンリの横顔をじっと見つめていた。


『里には分裂体を置いておくから。何かあったら戻るようにするよ』

「世話をかけまする、センリ様……―――戦争孤児が路頭に迷う原因は大人達の身勝手な戦争故……どうか自来也らをよろしくお願いします」

『分かった!』


罪滅ぼし、とは言わない。だがこれで自分達が犯した罪がほんの少しでも洗われる事があるならば、ヒルゼンはそれを願わずにはいられなかった。




綱手と大蛇丸が一先ず体を休めに姿を消した後、マダラはセンリにいつものように忠告を重ねた。


「……満月の日は外を出歩くな。必ず自来也の近くにいろ」

『分かってる』

「それから文は必ず返す事。週に一度は連絡を寄越せ」

『もちろんそうします』



まるで親子のようなやり取りにヒルゼンは微笑ましささえ感じたが、マダラの手前、余計な口出しはしなかった。ヒルゼンにだけはセンリの燃焼日について教えてあるので、ヒルゼン自身もそれは少し心配していた事だった。


「このまま行けば何年とかからずに戦争も終わる。そうすればミトは九尾を次の人間に引き渡すだろう」

『……分かった。それまでには戻る』


センリはマダラの片目をしっかり見つめ、頷いた。
マダラのくどくども終わり、センリは髪の毛を一本引き抜き分裂体を造り出す。



『じゃあ、あとはよろしくね』

『こっちは心配しないで!頼りになる三代目火影も、マダラもいるから大丈夫!』


分裂体といえど言う事は正にセンリと同じだ。そしてその心の奥底の覚悟も、同じくらいに強いものだった。それを分かっているヒルゼンとマダラは、いつもと変わらぬ表情でセンリを送り出した。
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