- ナノ -


木ノ葉隠れ創設編

-三代目火影-


忍達に医療忍術を教え込んだり、負傷者の治療に当たったり、戦場へ向かったりとセンリは目まぐるしく毎日を過ごしていた。

時には分裂体を作り出し、里で治療を行いながらもう片方は戦場へ向かうという技も見せていた。分裂体は分身とは違い、多少の事では消えない。実体もあり、心臓も動いている為、殺されない限りは術を持続出来るがやはり本体と比べて精度は劣る上、何日も続けているとさすがにセンリの体に負担がかかる。


マダラや里の仲間に心配を掛けないように気を配りながらもセンリは前回の戦争の時のように戦場で舞った。


マダラと共に戦場で戦う事もあったが、その時の二人の共闘具合は誰であっても近付けない程だった。木ノ葉の忍達が手を貸す暇も隙もなく、驚いている間にセンリとマダラは敵を倒していた。たった二人で数百の忍達を相手にする事もあったが、それは意味のある事でもあった。

圧倒的な力を見せつけるという事は、ある程度必要で、これ以上死者を出さないよう牽制にもなる。

この時ばかりはセンリも感情を押し殺してはいたが、どんな多勢に出食わそうと、決して敵の息の根を止める事は無かった。

マダラは敵である以上は誰に対しても容赦がなかったが、死亡した敵里の忍の遺体にも花を手向けているセンリの姿には何も言わなかった。

人の死に意志を揺さぶられるような人間ではないが、元来どんな人間にでも愛を与えその心を受け止められるセンリの心は痛んでいるだろう事はマダラには分かっていた。

それに加えてセンリが全力で戦っていない事もマダラは知っていた。全力を出さずとも何人もの敵を一瞬で倒す事の出来るセンリの力は今でさえ興味深いものだった。



―――――――――――――

川の近くの広大な砂地だったはずの戦場が、今や見渡す限りの氷世界になってしまっていた。硬い土は全くは見えない。視界に映る範囲の全てがセンリの氷遁だった。

氷漬けにされた何百という忍達が、頭だけを出してそこら中で凍りついている。砂隠れと岩隠れと三つ巴の戦いだった為、千人以上いるかもしれない。その忍達は皆、植物の花粉を吸い込み眠ったように失神していた。


「センリ、明後日は満月だ。お前はもう里に帰った方がいい」


太陽の光が地面や辺りの氷に反射し、その中に佇んでいたセンリはふとマダラを振り返る。その美しさには未だに慣れないマダラだったが、燃焼日の方が気がかりだった。



『そうだね…ここはもう大丈夫だと思う』


センリは息のひとつも切らさずにいつものように穏やかに返した。マダラがセンリに歩み寄る。


「先日もかなり多くの者を戦闘不能にさせる事が出来たからな…上手くいけばそろそろ雲隠れ辺りが一度手を引くかもしれんな」



雲隠れと霧隠れの動きは今やほとんど見えていなかった。あとは自来也達が雨隠れの戦闘を終える事が出来れば、この戦争も収まりがつくかもしれないと二人は考えていた。



「この氷はチャクラを吸い取るのか?」


マダラが写輪眼で氷漬けにされた忍を観察しながらふと問いかけた。


『うーん、吸い取る、というか……チャクラの動きを止めてるだけ、かな?ゼロになっている訳じゃないから死なないけど、数日は忍術を使えないと思う』

「いい術だ」


なるほど、大丈夫とはそういう意味かとマダラは納得した。これでここにいる忍達は、センリの氷がなくなれば帰らざるを得なくなる、という訳だ。



「しかし……これは氷遁というより、そうだな…―――水晶に近いのではないか?」


マダラが忍を覆っている氷を触りながら言った。普通の氷ならこの状態では人間はいくらとも持たないが、この物質は氷のように冷たくはない。見ようによっては宝石のようにも見えた。


『そうかもね』


センリも目の前の氷を見てみるが、確かにそんな感じかもしれないとふと思った。マダラはセンリの様子を見て小さくため息を吐いた。


「お前はあまり術に興味を示さんな。柱間もそうだったが、飛び抜けて強い者はあまり自分の能力が気にならなくなるものなのか…」


今までもそうだが、自分の術に関して無頓着なセンリはある意味特殊だった。だが当の本人はむしろ不思議そうにマダラを見上げる。


『自分ではよく分かんないけど……マダラはそういうのに詳しいんだから、代わりに私の力を研究してみてよ』

「ふむ、それもいいかもしれんな。面白そうだ」


センリは冗談半分だったが、言われたマダラは少し考えて、楽しそうだと薄い笑みを浮かべた。
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