木ノ葉隠れ創設編
-三代目火影-
定期的に行われる議会で綱手はとうとうその考えをヒルゼンにぶつけた。
医療忍者を今より多く育成する事、戦場に向かう班に腕の立つ医療忍者を組み込む事を綱手はヒルゼンに提案した。
「……よって、上級技術を持った医療忍者の育成とその体制の確立が現在緊急の課題であると思われます」
綱手の瞳は鋭く、縄樹を失くした悲しみからはまだ抜け出せてはいなかったが、その考えを通す事が今自分がしなければならない事だと思っていた。
センリは皆の前の椅子に座るヒルゼンを見つめた。彼の隣にはマダラがいたが、マダラもヒルゼンの反応を見ているようだった。
ヒルゼンは少し伸びた髭に手を当て少し考えたが、首を横に振った。
「今は戦争中だ…。敵はそう待ってはくれんからな」
ヒルゼンの言葉に綱手は目を見開き、ダン!と大きな音を立てて目の前の机を殴った。
「…っんだとコラジジイ…!」
「オレも彼女の意見に賛成です」
綱手が激昂する前に別の声が聞こえた。
声の主は月白色の長い髪の青年だった。センリはその忍の事は知っていた。この戦争で数々の戦績を上げている、加藤ダンという忍だった。
綱手は予想外の救世主にハッと驚いた。そこでセンリもヒルゼンに向かって手を挙げる。
『確かに綱手の意見には一理ある。最近になって戦場での死者が増えてきたのは事実。それは戦闘力が低いからじゃなくて、現場に怪我人を治療出来るような忍がいないから。里にいる全ての医療忍者を班に組み込まなくても、戦いが激しい場所には一緒に行った方がいいかもしれない』
センリが自分の意見に同調してくれたと分かると綱手は表情を和らげた。
「しかし……少ない医療忍者を戦場に向かわせ失うような事になれば、今より一層状況が悪化してしまいます」
『医療忍者全員を隊に入れる訳じゃない。その中でも戦える……いや、戦えるというよりは、きちんと自分の身を守れる医療忍者だけを組み込む。戦う事が出来なくても自分の身を守る事さえ出来れば医療忍者が戦場に向かう事は大きなプラスになると思う』
ここでヒルゼンはもう一度よく考え、そしてゆっくりと頷く仕草をした。
「ならばこちらで戦場に向かえそうな医療忍者を選出しよう。里に残る医療忍者、戦場に向かう医療忍者が半々になる位に分配し、戦闘班の忍にも多少の医療忍術を覚えてもらう。それでどうだ?」
マダラが腕を組んで綱手に問い掛けると、その表情が晴れる。ヒルゼンも納得したように深く頷く。
「…!……はい!」
綱手の意見通り、それからの戦闘班には医療忍者も加わる事になり、それ以外の忍も止血程度の医療忍術を覚える事が義務化された。
弟のような犠牲者を出来るだけ出したくない、火影になる事を夢見る子どもたちの未来を潰したくないという綱手の願いは里のシステムに大きく関わることになった。
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