木ノ葉隠れ創設編

-三代目火影-


木ノ葉はそれから半年間、他里よりは優勢の状態が続いていたが、突如戦闘が活発になっていったため、自来也とミナトの師弟生活も長くはいかなかった。

「もうすぐ戦争は終わらせる事が出来るかもしれない」とのセンリの予想も虚しく、また戦闘は活発化して行った。

マダラやセンリの想像通り、現時点で雲隠れとの戦闘は起きていなかった。ただ、木ノ葉隠れは砂隠れ、岩隠れと、雲隠れは霧隠れと、というふうに別々の所で戦いが起きていた。

自来也もまた戦場に赴く事が多くなり、特に三方を大国に囲まれた雨隠れ周辺では規模の大きい戦闘がいくつか起きていた。


そんな中、最悪の知らせが届いていた。



縄樹が戦死した。

衝撃的な報告を受けて火の国内の戦場に出ていたセンリは急いで木ノ葉に帰還した。


しかしそこで目にしたものは、すでに息をしていない縄樹と、泣き崩れる綱手の姿だった。


「縄樹は昨日、十二歳を迎えたばかりだった…!」


悲痛な綱手の叫びがセンリの胸を突き、震える綱手の体をそっと抱き締めた。それを歯切りに綱手の涙が息せき切って溢れ出した。


両親の戦死を聞いても大泣きする事のなかった縄樹が戦場に出たいと言ったのはたった数ヶ月前だった。


―――――――――――――――


中忍になったばかりの弟の縄樹はどうしても戦いたいと言って聞かず、比較的戦闘の少ない、里からもそれ程離れていない箇所に派遣された。


『縄樹、気を付けてね。隊長のいう事をよく聞くこと』

「絶対に前線には出るなよ」


負けず嫌いでよく無茶をする縄樹が心配だったが、当の本人は全く緊張感が無かった。


「大丈夫だって!オレは将来火影になる男だぞ!絶対に死なないから」


まだ縄樹は幼い頃よりずっと頼もしくなった。それでも綱手は特に心配をしていたが、確かにそれから縄樹は毎回怪我の一つも負わず戦場から里へ帰還していた。火影になるという夢を掲げた縄樹は、強かった。




「綱手…」


同じように戦場から帰還した自来也が沈痛な面持ちでそれを見つめ、大蛇丸も目を伏せた。両親が戦死してからは縄樹が綱手の心の拠り所でもあった。前線に行くのを止めなかった自分の事も責めているだろう。


仕方の無い事だと分かってはいたが、綱手にかける言葉が見つからなかった。

センリは泣き叫ぶ綱手の体を落ち着くまでずっと抱き締め続けた。



それからすぐに猿飛サスケさえもその命を落とした。

砂隠れの大軍勢と遭遇してしまい、果敢にも戦いを挑んだが勝ち目が無いことを悟り、自分を犠牲にして敵を道連れに戦死した。

この事は里の多くの忍に衝撃を与え、猿飛サスケの名は里の仲間を守って死んだ優秀な忍として名を残す事になった。



ヒルゼンは悲しんではいられなかった。

幼い息子がいるヒルゼンだったが、三代目火影として皆を纏めなければならなかったし、父を亡くしたからといって泣き言など言っている時間は無かったのだ。


扉間の策を継いで木ノ葉からは戦場に多くの忍達を送っていたが、それにも少しずつ問題が出てきた。

今回は戦場で戦う忍を多く確保する為に、医療忍者の育成より戦闘力が重視されていた。医療忍者は里に残って帰還した忍の怪我を治すという役割分担だった為、前線で戦う場に居合わせる医療忍者が極端に少なく、それが問題となってきていた。

里に医療忍者がいるとはいえ、その数は多くない。優秀な医療忍者がいるといっても、それも数える程。その医療忍者が戦場に着いて行き、そこで命を落としたとなればそれこそ重大な影響を与える。


だがそのやり方に異論を唱えたのは、戦場に医療忍者が居合わせなかったが為に弟を失った綱手だった。
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