木ノ葉隠れ創設編
-三代目火影-
それからうずまきクシナが木ノ葉隠れに到着したのは数週間後の事だった。
センリはヒルゼンから直々に説明を受け、戦時中という事もあり、その事を極秘事項として扱った。今の現状でうずまきミトに九尾が封印されている事を知っているのはセンリとマダラを含め極わずかだ。ヒルゼンはその事をセンリに任せ、センリも深く頷いた。
クシナには母親が居らず、忍ではない父親と、数人の使用人を連れて木ノ葉隠れに引っ越してきた。ミトがいる大きな屋敷に移り住み、クシナは正式に木ノ葉隠れのくの一となった。
ミトからの要望通りにセンリはクシナに最初に接触し、すぐに仲良くなった。
うずまき一族の当主の娘であったミトの事を知っていたクシナだったので、その友であるセンリの明るさにはすぐに心を許した。
ミトと同じ赤毛が特徴的なクシナは最初こそ強ばった面持ちだったが、打ち解けると徐々に笑顔を見せるようになり、少し勝気なお転婆な少女だという事が分かった。綱手程の気の強さは持ち合わせていなかったが、自分の意見をハッキリと口に出来るくらいの自信は持っていた。
人柱力として選ばれた事は自分で知っていたが、見知らぬ地に来て緊張しているクシナの気持ちをセンリは支えたかった。
この頃はまだ大人の忍達だけで戦場は事足りる状況だったので、子ども達は通常通りに生活していた。もしかすると戦時中という事を知らない子どももいるかもしれない。
他里からの転校生としてクシナは扱われ、一ヶ月後にはアカデミーに転入する事になった。
しかし問題はそこからだった。
他里から転入してくるという例は滅多に無い事であり、そして転入したその日の最初に行われた将来の夢についての発表という授業でクシナは「女性で初めての火影になってやる」と公言した事ですぐに意地悪な同級生から目を付けられてしまったのだ。
赤い髪で少しふくよかなことを理由にクシナは同級生に“トマト”というあだ名を付けられてしまったが、クシナはその子ども達を返り討ちにしてやったとセンリに話していた。髪と外見をバカにされたクシナはそれはそれは怒り狂っていた。
「…それでね、そいつらがバカにしてきたから一発殴ってやったんだってばね!」
特徴的な口癖があるクシナは怒った面持ちで拳をグッと顔の前に出した。
『んん…そっかそっか』
曖昧な表情を浮かべながらセンリはクシナの話を聞いていた。暴力はやめなさい等とは言える状況ではないだろう事はセンリにも分かっていて、とにかく彼女の話を聞いてやっていた。
「人の外見の悪口を言うなんて小さい男達だってばね!私だって好きでこうなったんじゃないのに」
強気な言葉だったがクシナの瞳は伏せられていて、それに気付いたセンリがそっとクシナの長い髪に手を伸ばした。
『クシナの髪は、すごく綺麗だよ』
センリが優しげに目を細めて微笑むのでクシナは一瞬目を丸くさせてその顔を見た。センリは真正面からクシナの髪をそっと撫でる。
『私はクシナのこの赤い髪、すごく好きだよ』
「センリ…」
あまりにも真剣にセンリが言うのでクシナは頬までも赤く染めて目を逸らしてしまった。
「そんな事言ってくれるの、センリだけだってばね…」
『そんな事ないよ』
センリは笑ってクシナの頭をポンポンと撫でた。クシナは表には出さなかったが少し悲しそうで、センリは何とかして元気付けたかった。
『それに、私、トマト大好きだし!』
「えっ、そうなの?私はあんまり好きじゃない…
」
『それなら今度家で採れたトマトで何か料理作ってあげる。夏になったら一緒に収穫しようよ』
「ホントに?それってすごく楽しそうだってばね!」
センリの自宅には小さな畑があり四季折々の野菜も植えられていていつもは分身体が世話をしている為、クシナと収穫作業するのはセンリにとっても楽しみに思えた。
『それに、クシナはきっと可愛くなるよ。そしたら火影になってその子達を見返してやろう!』
「うん!誰よりも強くなってみせるってばね!」
センリは歩きながら右手を差し出すとクシナは少し迷ったがその手をぎゅっと握り返した。
母親をなくしたクシナにとってはセンリは母のような、姉のような、友達のような不思議な存在になっていった。
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