木ノ葉隠れ創設編
-火影と側近-
「まあ、しかし……オレはマダラが里の代表というのもかなりいい案だと思ったんだがなあ」
ひとしきり笑った後、ふと思い出したように柱間が言った。柱間は本当に心からそう思っていたが、マダラは不審そうな顔をした。
「俺が?」
「そうだ。千手一族にも、お前の優しさを知っている者が多くいるからな」
柱間が朗らかに言うが、マダラはますます眉間のシワを深くした。“憎んでいる”というならまだしも、柱間の言い方では語弊がある気がしたからだ。
「いや、戦場でお前は何度も千手の子どもを見逃してくれたろう。それに、助けたりもしていたじゃないか」
その言葉にセンリもマダラを見上げる。柱間は少し昔の話を二人に話して聞かせた。
――――――――――――――――
「それは本当か?」
うちは一族との戦があった数時間後、帰りついた千手の領地で、柱間と扉間は驚きに目を瞬いていた。
激しい戦いの場から帰る事の出来た、まだ十にも満たない千手の子どもの話を聞いて、扉間と柱間は顔を見合せる。
「詳しく聞かせてくれ」
「はい……あの時、僕はもうチャクラも戦う力も残っていなくて……でもうちはの大人達四人に囲まれてしまって……もうおしまいだって思ったんです」
少年の話は俄には信じ難いが、なにより驚いていたのはその少年のようだった。
「でも、突然……気付いたら目の前に、その四人が倒れていたんです……」
「それをやったのが、マダラ、だと?」
柱間の問いかけに、少年はゆっくりと頷いた。扉間はかなり混乱したような眼差しだ。
「多分、そうだと思います…気付いたらあの人が側に立っていて……“早く行け”と……」
柱間は驚きにしばらく少年の顔を見ていたが、どうやら嘘ではないようだ。それに、「マダラなら有り得るかもしれない」という奇妙な確信もあった。
「一体何を企んでいるんだ?」
一方信じられないといった様子の扉間は、眉をひそめながら柱間を見た。
「いや……あいつは何も企んでいないだろう。信じられないかもしれないが、元来心の優しい男なのだ、あいつは……」
それから千手一族の他の忍が、“もしかすると仇の一族は、戦いを望んでいないのかもしれない”と思い始めるのに、そう時間はかからなかった。
―――――――――――――――
「……そういう事が何度かあって、他の者達も徐々にお前の本当の気持ちを理解していったのだと思う。それに、センリ、お前も同じ事をしていてくれただろう」
目をパチクリさせながら話を聞いていたセンリだったが、まさか自分と同じような事をマダラもしているとは思わず、面食らってマダラを見つめていた。
「もちろん完全に哀しみを棄てたとは言えないが……今の千手一族で、お前達二人の事を悪く思う者は正直いないのではないかと思う」
柱間とセンリはマダラを見たが、マダラは特に反応を見せなかった。
『そうだったんだ…全然知らなかったな……―――本当にありがとう、マダラ』
「別に、礼を言われるような事じゃねェ。わざわざ力のない者に構っている時間が無駄だろうが」
マダラはしかめっ面でそう言ったが、柱間もセンリも目を見合せて微笑んだ。
結局の所、三人それぞれがこの目の前の景色を見る為に努力をしていたのだった。
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