木ノ葉隠れ創設編

-繋がり-


『もしかして、包帯巻き巻きの人かな?』

柱間から話を聞いたセンリが顎に手を当て考えながら言った。


「そう、そいつだ。土影の孫と共にいたはずだ。両天秤の小僧……名はなんだったか」

「オオノキ、とか言っておったな」


マダラの問いに柱間が返すと、センリは訳が分かって顔を綻ばせる。数ヶ月前、その名前を聞いたばかりだった。


『それなら確かに治療したよ!包帯の人は重傷だったからね。土影の側近の人だったんだ。助かってよかったよ!』


二人の無事が分かり破顔させるセンリを見て、やはり自分の言った事は間違いではなかったなと柱間は思った。



「戦争中に他里の忍を助けるとはな……全く…」


少々呆れ気味だった扉間だったが、センリは意に返さない。


『まあ、確かに私の勝手なわがままなんだけど…助けた事によってその人がまた木ノ葉の人と戦う事になるのかもしれないし……でも、助けられる人がいるなら、助ける。それは曲げられない』



人の命を救う事が必ずしも幸福を導くとは限らない事を、センリは理解していた。それでも、そうだとしても、人の命を救う事を間違いだとは思わなかった。現に土影の孫と側近は命を取り留めたし、火影である柱間に感謝を述べてくれた。

凛とした明るい表情で言い切るセンリに、三人とも文句は言わなかった。


『柱間とマダラはあの二人を知ってたの?』


センリがふと気になって問いかけた。マダラと柱間は一瞬目を見合わせた。


「里が出来た頃、同盟を結ぶのに岩隠れを訪れた時に会った事があるぞ」

「あの時は、特に両天秤の小僧は萎縮していたようだがな」


そういえば、とセンリは思い出す。二人が岩隠れへと出発した事は記憶に新しい。


「それに奴らとは、大戦が始まった直後にも戦ったな」

「そうだの。特殊な血継淘汰を使うので興味深かったな。特にマダラは楽しそうでな……」

「塵遁とやり合える事は中々ないだろう。まあ、それ程手応えはなかったが…」


戦いの最中、勝ち戦をする事より、相手がどんな術を使うのかに興味を示すマダラが容易に想像出来てセンリは苦笑いした。



「あの時は里に帰るのに急いでいたからなぁ。木人とマダラの須佐能乎で早々に戦線離脱させてしまってな。そのせいなのか、あの無とかいう側近は物凄い目でオレ達を見ておったぞ……」



人からの悪意や妬み恨みを向けられる事にあまり強くない柱間は嫌に悲しげに言ったが、マダラと扉間は全く気にしていないようだった。



「そんな事をいちいち気にしていたらキリがないぞ兄者」

「そうだ。お前は気にしすぎだ柱間。そもそも奴らが俺達に勝てないのが悪い」


言葉の意味合いはマダラと扉間で少々違っていたが、小さな所で無意識に結託して柱間を乱雑に扱う所だけでいうとかなり気が合うのではないかとセンリは思っていた。


『でも、出会って早々に須佐能乎と木人が一斉に攻撃してきたらって考えると、二人が気の毒だね…』

「圧倒的な力の差を思い知った後に、無条件の優しさというものがある事も知れたのだ。良い経験になったんじゃないのか」

扉間は少しだけ表情を崩しながら言った。


「確かにそうだの!扉間、たまには良い事を言うのぉ!」


柱間はいつもの単純さを発揮して、ハハハハと笑い声を上げた。


「……会談にマダラが着いていなかったらと思うと恐ろしいな」


昔と変わらず短絡的すぎる兄を見て扉間はやれやれと息を吐いた。


『まあまあ扉間くん!無事に終わったんだし、よかったじゃない!尾獣の事も言ってくれたし、本当にありがとう、柱間!柱間が他の影達に頭を下げてくれたのだって、私は間違ってはいないと思うよ』


柱間は完全に元気を取り戻し、「オレもそう思うぞ!」と後頭部に手を当てながら陽気に言った。


「柱間を甘やかすなセンリ」

「そうだ。兄者に甘い顔をしてもいい事がない」


いつもながらに厳しい二人の言葉に柱間は今度はがっくりと肩を落とした。


「お前ももう孫が出来るんだからもう少し威厳を持ってくれ。示しがつかんだろう」

『柱間らしくていいんじゃ…―』


センリはマダラの言葉に笑い、そこまで言いかけてふと引っ掛かりを感じた。


『…え?』


センリは柱間の顔を見てぽかんと口を開けていると「何ぞ?」と柱間が不思議そうな顔をしていた。しかしセンリにとっても状況が理解出来ない。


『えっ、ま、孫って……え?柱間の?』


驚いた様子のセンリを見て柱間とマダラが顔を見合わせた。


「ミトから聞かなかったか?」

センリはミトとの最近の会話を思い出してみるが思い当たる節は無い。ぶんぶんと首を横に振ると柱間の表情がほわりと崩れた。


「何ぞ、とっくに話しているのかと思っていた!いや、浅葱が今度結婚する予定でな、相手の腹には赤ん坊がいるのだ」


ハッハッハといつものように豪快に笑った柱間だったがセンリはその言葉を呑み込むのに数秒かかっていた。


『えっ、そ、そうだったの!?通りで浅葱を見かけないと思ったら…私がいない間にいつの間に』

「浅葱の十八の誕生日に正式に婚姻する予定でな。あと半年もすればオレも祖父になるんだ」


徐々にセンリの顔に笑みが広がり、花が咲いたように満面の笑みに変わった。


『誕生日…ミトと近いからもうすぐだね。おめでとう柱間!』


突然の事で驚きはしたがあの柱間に孫ができるというのは何だか感慨深かった。


「どんどん年寄りになるな」

「む、まだ四十ぞ!」


マダラが意地悪げにニヤッとすると柱間が言い返した。四十歳という実年齢にしては若く見える柱間がもう祖父になるなど本当に驚きだった。


『や〜、おめでたいなあ。私ちょっとミトのところに行ってくる!』


センリの心は明るく踊っていた。
あのミトもおばあちゃんになるのかと考えて一人笑いながら歩いた。
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