- ナノ -


木ノ葉隠れ創設編

-繋がり-



「そうだな、火影であるオレがくよくよしてはいられんな。きちんと向き合わなければ……―――しかし、分かっていた事だが…平和への道はなかなか厳しいものだの」


柱間は神妙な面持ちでこそなくなったが、僅かに苦笑を浮かべた。センリは、柱間が火影としてとても大きな覚悟を持ってこの戦争に挑んでいる事も、この先がどんな険しい道のりになるか知っている事も、分かっていた。


『確かに、本当に平和な世界になるには…きっと辛くて険しい道を選ばなきゃならないと思う』


センリはいつも通りの口調で言った。柱間は傾聴するような表情でセンリを見ていた。


『みんなが分かり合うには…みんなが腑を見せ合うには…すごく大変な道を行かなきゃならないと思う。でも、私は必ずそこにたどり着けると思ってる』

「センリ……」


柱間は、昔と同じく真っ直ぐに意志を貫こうとするセンリを見て嬉しくなっていた。センリは柱間を安心させるように薄く微笑んだ。


『だってこの戦争で戦ってた敵だって…誰もが自分の里の為に戦ってたんだから。同じ目標を見てるんだもん。それなら私達は絶対に分かり合う事が出来るはずだよ。少しずつだとしても…私達が信じる事をやめなければ、託す事をやめなければ……私は絶対にそれを成し遂げる事が出来ると確信してる』


センリ口調は本当に柔らかいものだった。それなのに凛としていて真っ直ぐで、でも馬鹿みたいな綺麗事で。心の暗い所で燻っていた一つの思想とはまるで逆の考えなのに、それなのにやっぱりマダラはその言葉に心から納得していた。

柱間と扉間は表情を崩し、小さく頷いた。胸の奥底がふんわりと暖かくなる感覚はどこか懐かしく、そして同時に諦めない精神を呼び起こしてくれるものでもあった。


『今出来ることは、この里を守る事。それから、きちんと話し合うこと、相手の心をまず受け止めること…。私達がそれを諦めないでやっていれば、きっと、絶対に気付いてくれる人はいる。必ず、私達の想いを受け止めてくれる人はいる。それを繋げていく事が、私達がすべき事だと思う。大切な何かの為に戦うという思いは、絶対に間違いじゃないと思うから』


センリ自身も、これからの険しい道を覚悟していた。ただ今回の戦争に“守るもの”があった事もまた事実だった。


『私はこの先の“未来”を、信じてる』


凛としたセンリの言葉と真っ直ぐな瞳に、柱間は無意識に首を縦に振っていた。


「そうだの…オレたちに出来る事は、里の同胞を信じ、火の意志を託す事だ。それはきっと正しき事だと、オレも信じている」


柱間がいつも通りの頼もしい口調になったので、センリはにっこり笑って頷いた。


『私も、柱間の事も扉間くんの事も、もちろんマダラの事も、』


センリは三人のそれぞれの顔を見回した。


『心から信じてるよ!』


結局、信じた者勝ちなのではないかと思いマダラは苦笑した。手放しに信じてもらうということは心の枷でもあり、縛りでもある。だがセンリが言葉にするとそれは、精神を縛る鎖ではなく、強い意志を支える大きな力に変わってしまうのはやはり不思議な事だった。


『それに、木ノ葉隠れには“最強”って言われちゃう忍がいっぱいいるんだから、きっと大丈夫!ほら、火影さまとか、忍一速い弟さまとか、この……うちはマダラとか?』


センリがにやりとしながらマダラの顔を覗き込んで言う。マダラはまた始まった、というふうに眉を寄せてやれやれとため息をついた。


「確かにそうだの!オレ達が共闘すれば向かうところ敵無しぞ!」

「調子に乗るなよ柱間…お前に合わせるのは容易な事ではないんだからな」

「そうは言ってもお前はいつも完璧にサポートするではないか!さすがはオレの親友ぞ!」

「フン、お前だけに活躍させるのも癪だからな」


柱間が陽気に言いマダラが迷惑そうに返すのを見て隣に立つ扉間は苦笑いしたが、本当の事なので何も言えなかった。二人が共に戦った暁には、中隊数隊程度なら全滅させられる事請け合いだ。
マダラは呆れた表情だったが満更でもなかった。親友と背中合わせで戦う事は吝かではない。

センリも心から信頼し合っている二人を見て改めて“愛“と”力”の双方の大切さを実感した。


『(きっと、大丈夫……)』



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