木ノ葉隠れ創設編
-繋がり-
前日の夜、火影室では柱間とマダラと扉間が明日の会談に向けて最後の調整を行っていた。
扉間は共に行かない為に兄が粗相をしないかどうか非常に心配していたが、センリにどうにか宥められていた。
『扉間くんは柱間の事になると本当に心配性だなあ』
昔から兄に対して厳しい態度を取りがちな扉間を思い出し、センリはくすくす笑った。それが扉間の愛情故の言動だと分かっていたからだ。柱間ももちろんそれが分かっていてムキになって言い返したりはしない。
「そうは言うがセンリ、兄者はここぞと言う時に昔から粗相をする奴でな…少し目を離すと何をしでかすか分かったものでは無い」
「それは大いに同意する」
マダラまでひどいぞ…と大袈裟に柱間がショックを受けるとマダラはそれを見て鼻で笑った。
『ふふ、確かにそうかもね。でもそれが柱間のいいところでもあるよ!それに、柱間はとっても頼りになるって、扉間くんも分かってるでしょう?』
「そうだぞ扉間!それがオレのいいところぞ!」
センリが助太刀してくれる時はいつも調子に乗り出す柱間を見て扉間も小言を言い返したくはなったが、明日の会談の事が頭を過り、結局文句は押しとどめた。
「まあ……その辺はマダラが上手くやるだろうからな……」
兄には無いシビアな面があり、柱間に対しても遠慮をしないマダラならそれも上手く制御しながら事を運べるだろうと思い、扉間は心の中で納得もした。
「当たり前だ。柱間が馬鹿な事を言い出したら俺が幻術をかけてでも従わせてやる」
マダラは巻物をクルクルと巻き上げながら柱間をじとっと見て言った。それが冗談だと分かっているセンリと扉間はふっと笑いを漏らしたが、柱間だけは相変わらずガーンと打ちひしがれていた。
『凸と凹でちょうどいいもんね、マダラと柱間は!お互い足りない部分なんて、埋め合っちゃえば大丈夫だよ』
「そうだぞ!センリは相変わらずいい事を言うのォ!」
「全く、尻拭いをするのはこっちだってのに……センリも柱間も気楽で困る……」
センリが明るく言うと、柱間はすぐに元気を取り戻す。マダラも扉間もやれやれとため息をついた。だが二人とも柱間の単純なところは嫌いではなかったし、言葉ではこき下ろしつつ本当に肝心な時には大いに頼りになる事は承知の上でもあった。
柱間はひとしきり笑った後、少し神妙な顔になり、手元の書状に視線を落とした。五影会談で今回の戦争をやめさせることが出来る唯一の紙切れだ。
少し悲しげにも見える柱間の目を見てセンリがどうしたのかと問いかけようとした時、ふ、と柱間が口を開いた。
「……十三年前、苦労して作り上げた里だったが…その先の道がまたこんなにも大変なものになるとは、正直思いもせんかった」
里自体を造った事を後悔しているわけではない。戦争は一先ず幕引きとなったが、里長として、死んでいった者達への罪悪感が柱間の中にあるのも確かだった。
「木の葉隠れは他の里に比べて犠牲者が少ないのは確かだが……里長としてもう少し出来た事があったのではないかと思えてしまっての」
柱間がこうして小さな後悔を口に出来るのは信頼の出来る三人の前だからだったし、やっと明日、五影が揃って話し合う事が出来るという安心感からでもあった。
書状に目を落としたままの柱間を見て、マダラとセンリは目を合わせた。それが僅かな弱音だということは三人共分かっていた。
「戦争など、やっている誰もが自分自身は正しいと思ってる。里の奴らも、誰もお前の責任だなどとは言わないだろう」
マダラの口調は柔らかいわけではなかったが、確かにそこに気遣いの音を感じて柱間はふとマダラを見上げた。
「その通りだ。今は弱音など吐いている場合ではないぞ、兄者。明日の会談も重要だが……この先まだまだ道は長い。やれる事をやれる時にしていけばいい」
こういう時は扉間の方が鋭い事を言って柱間を奮い立たせていたが、それも柱間の気持ちを汲み取ったからこそだ。親友と弟に励まされ、柱間は少し元気が戻っていた。
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