- ナノ -


木ノ葉隠れ創設編

-重なり合う愛-



イズナの引越しも一昨日無事に終わって、何だか家が一気に寂しくなった気がする。これから夜ご飯はマダラと二人かあ。ハゴロモとかアシュラがいた頃は家を離れるとかなかったから何だか親離れしなきゃいけないお母さんみたいな気分。でもイズナももう大人だもん。いつまでもくっついてたら恋人も出来ないかもしれないしね…。


里の商店街へとゆったりと歩いている途中私はぼーっと考えていた。

十二月十七日、マダラの誕生日まであと一週間に迫った今日はいつもよりは暖かく晴れ渡った空には雲一つない。って言っても冬は冬。厚着してないと結構寒い。気温は…十二度くらいかな?ここの世界は冬でも氷点下になることは無い。たまにうっすらと雪が降る時もあるけど積もることはないくらい。夏だって三十度に届くことはないし……だから作物も結構育てやすいのかも。野菜類が多いのはそのせいかな?


里が出来てから物資の通りもだいぶ良くなった。今までは無かった商品も買えるようになった。洋服とかもそうだけど、布製品が多かったんだけど、今までになかった毛糸も手に入るようになったからマダラの誕生日にマフラーを編もうかなって思って、買いに来たんです。

一週間あれば編み上がると思うし、私はマダラやイズナ程忙しくないから時間もあると思うし…。柱間が言うには、忍にとって暇っていうことは平和ってことって話なんだけど、ついこの前まで戦争してたから何だかまだ慣れないんだよね…。でもちゃんと修業も時々やってる!もちろん分裂体とだけどね。

マダラとやる事もあるんだけど、手加減しすぎると怒るから……。


それに、木ノ葉隠れの街を歩くだけで楽しい。色々な人とお喋りできるし、新しい人と出会うのも楽しい。本当に戦争が終わったんだなって実感する。最近は飲食店も増えてきた。おでん屋さん、ラーメン屋さん、小さな食堂とか…飲み屋さんも何軒か出来た。

まだどこに何があるかは全部把握してるわけじゃないんだけど…。


あ、あったあった。裁縫用具関係のものを売ってるお店。商店街の少し奥まったところに佇んでるからちょっと分かりずらかった。中に入って商品を見る。


『(うううん……マダラにあげるならイズナにも…いや、もし好きな人とか恋人が出来た時邪魔になるかな………うーん、マダラの何色がいいかなあ。マダラと言ったら黒っぽいけど、マフラーまで黒だったらもっと怖いことになっちゃうかも……なら白とか?マダラが白………想像できない!んん……白と黒、白と黒…………んっ!?いいこと思いついた!)』


迷ったあげく、白い毛糸と黒い毛糸両方を手に持って会計を済ませる。お店のお婆ちゃんにお礼を言うと飴玉を三つも貰っちゃった。ラッキー!

触って分かったけどかなり良質な毛糸だ。これならすごく肌触りがいいマフラーが編めそう。百円ショップに売ってるのとはやっぱり全然違う。あ……百円ショップってこの世界にはないんだけどね。


お店を出て蜜柑味の飴玉を舐めながら大通りに戻ると、道の先に見覚えのある人影が見えた。こちらに向かってくる人影に私は駆け寄った。


『ヒカク!』


うちはヒカクだ。ヒカクもこちらに気付いて立ち止まって私が駆け寄るのを待った。手には何やら袋を提げてる。

          
「ああ、センリさん。今日“も”一人か?」


ヒカクは少し意地悪っぽく言う。ヒカクは黒髪を後ろで縦に二つに縛っていて、マダラ程じゃないけど目が何ていうかこう……キリッとしてる。

元々マダラとイズナと小さい頃からの知り合いで、戦争の頃はよく二人を支えてた。修業もよく一緒にしたかなあ。

マダラが社長、イズナが社長補佐、ヒカクが秘書って感じかな!イズナの次くらいに強くて統率力もあったけど、ただちょっと意地悪なところがある。


『うん、ひとり。イズナは仕事だし、マダラも柱間のお手伝い』


そう言うとなぜかヒカクに笑われた。小さい頃はイズナと一緒に「センリ姉さん!」って言ってきて可愛かったんだけど…。


「今まで一緒にいたから寂しいんだろう?イズナはこっちに移ったし」


うう、ヒカクの言う通りだ。実はちょっと寂しい。二人が里のためにやってくれてるってのはすごくすごく嬉しいんだけどね。ほとんど毎日何かあるからなあ。


『でも、私もいつまでもくっついてるわけにはいかないし、丁度いいよ』


そう。それは二人が独立して自分のやりたい事を見つけている証。そう言えばヒカクは何だか呆れたようにこっちを見ている。


「はは、センリさんらしいな……まあ、イズナの事は安心してくれ。オレが近くに住んでるし、あいつが写輪眼を使えないのは分かってる。心配するな」


ヒカクもそうだけど、うちは一族の人たちは何だかんだやさしい。他の人たちはうちはの人は強いけどちょっと冷たいって言うんだけど、そんなことは無い。確かに戦ってる時は怖い時もあるけどそれ以外では、特に身内にはとってもやさしい。この里の人たちも分かってくれるといいなあ。

私はそんなヒカクに笑みを返した。


「あ……そういえばセンリさん。これをマダラさんに渡しておいてくれないか?頼まれていたうちはの事をまとめてある。マダラさんと言うより…火影にか」


ふと思い出したようにヒカクは胸元に手をいれて巻物を取り出した。私はそれを受け取る。


『ん?分かった。暇だからいいよ』


今日の予定は特に考えていなかったからこのまま二人がいる火影邸にでも向かおうかな。


『じゃ私からはこれあげる。さっきお店のおばあちゃんに貰ったの』


私はポケットを漁ってさっき貰った飴をヒカクに渡した。ヒカクはお礼を言ってそれを受け取ってくれた。何味だろ?


「センリさんがおばあちゃんって言うってことは相当歳食ってるな……三百歳くらいか?」


ヒカクがまたいたずらっぽく言うので私まで笑ってしまった。


『ふふっ、そうだったかも』


みんながちょっと怖いって言う一族の人はこんな風に冗談言って笑うんだ。

ヒカクと別れてから私は一度家に戻って毛糸を置いてから火影邸へと向かった。

―――――――――――――

火影室の戸をノックすると柱間の声が聞こえてそっとドアを開ける。そこにはいつものように椅子に座る柱間の姿。そして扉間くんとマダラも一緒だ。柱間のそばには大体この二人がいる。


「おお、センリ。どうした?」


柱間が顔を上げて微笑んだ。私は一先ず柱間に挨拶して、マダラに近づいて先程頼まれた巻物を差し出す。

『これさっきヒカクから頼まれたの。マダラに渡してって』


マダラは心当たりがあったようでそれを受け取った。


「そうだったか。わざわざすまないな」


柱間の側で事務作業だったり執務をこなしているマダラを見ると少し嬉しくなる。マダラはぶつくさ文句言いながらも柱間が苦手な事をこなしてくれてる。それから扉間くんも。二人はほとんど同じ事をしてるのに、何故だかマダラは扉間くんが苦手だって言うんだけどね。

私は柱間と扉間くんにもう一度振り返って部屋を出ようとしたけど、柱間がなぜか引き止めた。


「センリ、もう行くのか?もう少しここにいて何か話していてもいいんだぞ」


振り返ると柱間の苦笑いしたような顔。どうしたんだろ、暇ってわけじゃなさそうだけど…。


「兄者、センリを使って休息しようとしても駄目だ。さっきから手が全く進んで無いだろう」


私が答えるより早く扉間くんが鋭く柱間に言い放った。なるほど、柱間はもう仕事に疲れちゃったんだな?柱間は扉間くんの言葉にわかりやすくギクッとしてる。


「うう、もう三時間も椅子から動いてないぞ……少しでいいからセンリを……」

「おい、柱間。お前が休憩ばかりするからこっちに全部回ってきてるんだぞ。自分だけズルするな」

「そうだ兄者。もっと早く頭と手を動かせば休憩させてやる」


マダラと扉間くんのダブルパンチだ。この二人柱間の扱い方が似てるな…。ガーンと項垂れる柱間には悪いけどやっぱり笑ってしまう。


『がんばれ柱間!早く終わらせて家に帰ればミトが“お風呂にする?ご飯にする?”って待っていてくれるよ!頑張って終わらせて楽しい事しよう!』


そう言えば柱間は机につっぷしたまま顔だけを上げた。心なしか目がうるうるしてる。そんなに休んでないのかな?


「うう、そうか…?」


弱々しく言うので私は大きく頷いた。きっとミトは疲れた柱間を妻のラブパワーで癒してくれるはず!

柱間が少しだけ元気を取り戻した時、火影室の戸をノックする音が聞こえた。柱間が返事をするとガチャリと戸が開いて、数日ぶりに見る桃華が姿を現した。


『桃華!』


久しぶりの桃華の登場に無意識に顔が綻んだ。だって一週間くらい会ってなかったからね!待ちきれなくて駆け寄れば桃華は笑顔を返してくれる。


「センリ、久しぶりだな。数日見ないと随分会っていない気になる」


柱間顔負けの……いや男の人顔負けの凛々しい表情で桃華が微笑むととっても絵になる。
普段桃華もキチッとしてて、戦の時とか特に厳しい表情をしてるけど、友だちになってからはイメージがひっくり返った。とうか、と言うより、ももかって感じだ。扉間くんもこうやって笑えばいいのにな。


『私も寂しかったよ!ねえ桃華、新しい甘味処が出来たから一緒に行こうよ!』


桃華の手を取り言うと、うんと頷いてくれた。


「この前建てていたところか。それなら一緒に行こう。火影から頼まれた任務はあと二日くらいで終わるよ」


なんだって?やったね!早速近いうちに二人で遊びに行けそうだ!むふむふと自分でも気持ち悪いくらいに笑いが込み上げる。


「お前たちは本当に仲が良いな」


私と桃華を見て父親顔負けのやさしげな顔で柱間が言う。柱間だって桃華にずっと側近をやってもらってたから仲良いのに。


『柱間とマダラと一緒だよ!』


我ながらピッタリな事を言った。のにマダラは眉をしかめて言い返してきた。


「そうでもない」


はっはー。これはマダラの照れ隠しですよみなさま。マダラがそっぽを向いてこんなふうに拗ねてる時は大体照れてるんです!特に柱間といる時!伊達に何年も一緒に暮らしてるわけじゃないでしょう?思わずにやっと笑ってしまう。


「む、そうだ。扉間、オレも一緒に、」

「行っていいわけがないだろう」


柱間が言いかけたけど終わらないうちに扉間くんが素早く突っ込んだ。この二人もほんとに絶妙なんだよね…。


「残念だったな、“火影様”」


桃華が柱間に向かってしたり顔。


『私と桃華のデートだもん、ね!』


桃華を見上げてそう言えば桃華はいつものようにフッと笑った。


「そうだな。その為にもさっさとやる事を終わらせるとするか………じゃあ火影、とりあえず頼まれていた案件の一部だ」


桃華は柱間の机に巻物を二つ置いた。みんな大変そうだな…。


『じゃあ柱間の仕事が進むように私はもう帰るよ。みんな、またね』


そろそろ戻らないとみんなの仕事に支障が出たらまずい。ドアのところまできてふと思い出した。


『あ、マダラ!今日はオロシさんからいっぱいサービスしてもらったから夕飯は冬野菜祭りで待ってるからね』


マダラ、と呼ばれて何事かと思っていたらしい彼は言い終わると笑った。何だか苦笑いだ。


「ああ、分かった」


言い回しが変だったかな?まあマダラは結構鼻で笑ってくる事があるからな……。

手を振って火影室を出て、歩きながら昨日オロシさんに何をサービスで貰ったかを考える。ほうれん草でしょ、カブでしょ、白菜でしょ……。うん、今日のご飯はやっぱり野菜祭りだな。お、おっと。高そうな壺と正面衝突するとこるところだった。火影邸も随分様になったなあ。


火影邸から家まではゆっくり歩いて五十分くらいだ。町からはかなり外れたところにあるからちょっと遠い。走ったり光速移動したりすればもっと早いだろうけど、里の中の生活の中ではあんまり術は使いたくない。家々の立ち並んだ土の道路をこうして歩いてると元の世界の事を思い出す。


色々考えてみたんだけど、カルマは前にこの世界は私のいた世界ともリンクしてたって言ってたんだよね。詳しくはあんまりカルマも知らないみたいだったけど、この世界は割と表立ってたらしい。

―――――って事はね、この世界でもう百年くらい生活してて考えたんだけど、もしかするとフィクションの世界じゃないかなって思ったんだ。何か……作られたものの世界。ほら、猫型のロボットちゃんの道具に、本の中の世界にいける道具とかがあったりしたじゃない?なんだかカルマならそういう事だって出来ちゃう気がするし…。


理由はね、確かに私のいた世界と似てるところがあるんだよね。文化もそうだけど、言語、文字、それから名前とかたまに歴史上の人物とか、なんか知ってるものが多い。猿飛一族には猿飛サスケって人がいるし、須佐能乎っていう術もあるし。あ、でも忍者ってのはかなり違うかな。

私の世界で本当に忍者がいたかは分からないけど……ここの世界の忍は何ていうか……そう、全然忍んでない。忍んでないって言うのは術の規模とかそういうのがね。

忍者って聞いた時は、こう…諜報活動とか、隠れて追跡したりとかそういうのかとおもってたんだけど、術の規模とかとてつもなく大きいのがあるし、派手だし……。いやいや、忍んでないよね!?ってツッコミたくなるくらい!まさかあのチャクラが忍者に繋がるなんて…思いもしなかった。

いやまあ……私がそれを言えるのかどうかは分からないんだけど…なにせ私といえばカルマがいるからとんでもない力を発揮しちゃうから…。さすがにカグヤと戦った時みたいな規模のものはもう使う事はないと思うけど…。

まさかあの時インドラが発明した“術”っていうのが、こういう形で伝わるとは…。



で、もう一つ理由があって、この世界の人々は普通じゃない。私が言うのもアレなんだけど……。顔立ちは、特に木ノ葉隠れの人達はどっちかっていうと東洋人寄りなんだけどね、髪とか結構色々あって…私はカルマがいるからだけど、みんなのは天然だ。扉間くんなんて白だし、ミトは赤い髪だ。黄色い髪の子も見たことあるなあ。とっても綺麗だよね。

目の色も様々だし……。それに顔にペイントみたいな模様描いてる人もいるし。扉間くんもそうなんだよ。あれは何なんだろ?うちは一族にも結構いるし…。戦化粧ってとこかな?

あと髪型も特徴的だし……。男の人でも結構髪伸ばしてる人が多い。マダラの髪なんてどうやったらそうなるの?って感じにツンツンしてる。何にもしてないのにだよ?

特徴的なことを言うと……そうだな、ミトは大人な美人さんって感じだし、桃華はクールでかっこいい美形って感じでね。

柱間は長身だし、男前!っていいたくなる外見で、マダラは精悍で凛々しいって感じかなあ。イズナはちょっと女性的なかっこよさがあるんだ。線が細めだからかな。

忍の人たちは女の人より男の人のが多いんだけど、それでもついついじっと見ちゃうくらい綺麗な人だったりが多い。

私が前に生きていた世界とは微妙なところで違っていたり似ていたりするし、やっぱりこれはなにかの物語の中なのかなあ。ってことはカルマって未来の不死鳥型ロボット……―――!?


――――って、そんな事カルマに言ったら「御主は相変わらずなんというか…馬鹿だ」とか言われそう……。いや、言うな…!

でも、この世界がどこであろうと、今となっては私はこの場所が好きだ。確かに私はこの世界で生きているし、この世界で大切なものもたくさんできた。

前、どうやって生きていたのか気にならない訳じゃないけれど…もう少し、いつか、ちゃんと覚悟が出来たらカルマに聞いてみよう。私の事だから、なんかすっごい間抜けな事して死んじゃった気がするな…。

今は、私が大好きなこの世界を生きる。大好きな人がいるこの場所で―――――。



今のところやってくれって言われた仕事もないし、帰ったらマフラーを編んで……マダラに内緒で作ろう……そしたら夕食の準備をしてマダラを待とう。よーし、今日の予定出来た!


マダラの誕生日ってね、クリスマスイブなんだよ。この世界にクリスマスはないんだけれど……。なければないで何か寂しいよね。来年からはツリー飾ろうかな。それでマダラにマフラー渡したら………その勢いです、す、すきだと………言ってしまいたい。言ってしまいたい、けど!いやでも、百歳差ってかなりまずいよね?ヤバい人だと思われるかな?その前に犯罪かなこれ!?


マダラが私を家族としか見てくれなかったら……。嫌だって思われたら……。
そう考えたらすごく緊張してきた。心臓がドキドキしてしまう。これ、カルマにも伝わってるのかな?伝わってるなら何かアドバイスちょうだいよ…!


――――――ダメだ。音沙汰がない…。
どうしよう。こうやって意識し始めると顔が熱くなるんだよね……はあ。恥ずかしい。いつも考えずにマダラと過ごしてれば大丈夫なんだけど。でもこうして一旦考え出すと……いや、やめよう!


深呼吸、深呼吸!


こういう時は何かに熱中するに限る!家まで光速移動なしで何秒で帰れるか選手権やろう。いや、まあ一人ぼっちだけど……。

センリ選手、行きまーす!
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