- ナノ -


木ノ葉隠れ創設編

-失ったものと続く未来-


「随分遅かったな」


火影室で待っていたのはヒルゼンとマダラだった。約二年間の事を詳しく説明すると、マダラは少し呆れたようにため息を吐いていた。


「孤児が自立するまで二年間も帰ってこんとはな…」

里には分裂体もいた上、時折状況説明の手紙を送っていたこともあり格段怒っている訳では無さそうだった。センリはマダラの呆れたその表情を久々に見た気がした。


「いやぁ、ご迷惑をおかけしました」


自来也は後頭部に手をやり、苦笑いした。ヒルゼンは二人の姿を見て随分安堵したようだった。


「まあ、無事に帰ってきてくれて良かった。センリ様も、自来也が世話をかけましたな。このままいけば戦争も終結に向かいそうですので…孤児が増える心配もないでしょう」


ヒルゼンの穏やかな表情にはそういう訳があったのかとセンリは理解した。ヒルゼンは見ないうちに突然老けた気がしたが、目元の皺はむしろ穏やかさを感じさせた。

戦争は徐々に沈静化を見せ、特に大きな損害を受けた岩隠れと砂隠れは、いつかインテツが言っていたようにすでに降参の乏しを見せていた。


センリはそれを聞いて安堵し、自来也と共に微笑み合った。そうなれば雨隠れに残してきた三人も生きて行きやすいだろう。


前回の戦争時のように大きな区切りがある訳ではなかったが、徐々に戦は沈静化していった。


「それで、自来也。帰ってきて早速ですまんが、少しお前にやってほしい事がある。それから少し報告もな……」

「休息くらい与えてくれても良いじゃないですか。相変わらず人使いが荒い…」


自来也は露骨に嫌そうな顔をしたが、何やらヒルゼンとマダラは目配せをしていた。



「センリ」


不思議そうな顔でヒルゼンを見ていたセンリはマダラに呼ばれて視線を移した。名前を呼んだだけだが、どこか意味ありげな目をしたマダラが背を向けるのでセンリはその背中を追った。




センリは自来也とヒルゼンに手を振り、マダラと共に火影室を出た。するとマダラはセンリの腕を掴み、突然ギュッと抱き寄せた。


『まっ、マダラ…!』


センリは誰かに見られたらどうしようと少しジタバタしたがマダラは離さなかった。


「何日お前に触れてないと思っている」

『で、でも分裂体がいたんだから……―――』

「あれはお前ではない」


マダラはきつくセンリを抱きしめた後、誰かが来る前にその体を離した。センリの体の柔らかさが少し懐かしかった。思っていた通りの事を言うマダラに少し笑いながらセンリは懐かしい瞳を真っ直ぐに見つめた


『ん、ごめん。ただいま』


センリが困ったように微笑むと、つられて呆れたようにマダラも笑う。


「途中、迎えに行かなかった事を有難く思ってほしいくらいだ」

『うん、ありがとう』


素直に礼を言うセンリの口調も久々のものだったが、それに浸っている暇はないとマダラはいつもの表情に戻る。



「それから、お前に少し言わなければならん事もある…―――」
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