木ノ葉隠れ創設編
-火影と側近-
イズナが忍養成施設の教員の忍に採用されると二日後から早速仕事へと赴いて行った。
それからイズナの評判が良く現れるのには半月かからなかった。毎日家に帰ってくると、疲労した表情でため息を吐きながらも、その日の様子をさぞ楽しげにセンリとマダラに聞かせてくれていた。子どもに教えるのは戦の時より大変等と言っているイズナだったがその顔は戦っている時よりも清々しく輝いていた。教員という仕事がイズナに合っているというセンリの予想は当たっていたということになる。
しかしそれ以外にセンリにとって予想外のことも起きた。イズナが教員として仕事を始めて二週間経った日、イズナが施設の近くにある住居に引っ越したいとセンリとマダラに言ったのだ。
『じゃあ三人で引っ越そうよ』
センリが言うがイズナは首を横に降った。
「小さい平屋だし、ボク一人で行く」
イズナは、この家にはマダラとセンリで暮らしてほしいと言うのだ。だが、幼い頃からずっと一緒に暮らして来たセンリにはすぐに頷くことが出来なかった。
『でも、』
「大丈夫。一人でも家の事は出来るし、それにすぐ会える距離だろ?」
イズナはセンリがそう言うことは分かっていた。隣のマダラも口を結び眉を寄せている。しかしいつまでもセンリとマダラに頼っているのもイズナにとっての少しの悩みでもあった。二人と離れ、一人で生活することは兄弟離れをするという意味もあった。
『……どうしても?』
センリの寂しそうな表情に一瞬揺らぎはしたが、それでもイズナの意思は変わらなかった。
「何百キロも離れる訳じゃないし、同じ里内だろ?心配しすぎだよ、姉さん」
センリは口を窄めてマダラを見る。
「…イズナがそうしたいと言うなら俺達に止める事は出来ないだろうな」
事の成り行きを見守っていたマダラがそれを許可すればもう何を言ってもイズナは家を出て行くだろうとセンリは思って長く息を吐いた。
『………むう……分かったよ。いつまでも弟離れ出来ないのもいけないしね…』
センリの返事にイズナはにこりとした。しかしセンリはすぐにイズナに詰め寄った。
『でも!休みの日はこっちに帰ってきてよ。一人で寂しい時は三人でご飯食べよう。いつでも来ていいんだから。あと暇な時は一緒に遊ぼう。それから…』
「弟離れするんじゃなかったのか?」
次々と要望を言っていくセンリに呆れたように笑いかけるマダラ。
「ヒカクが近くに住んでるし、別に寂しくないさ。もう子供じゃないんだから。それに恋人だってできるかもしれないよ?」
その言葉にセンリはハッとしたように口元に手を当てる。うちはヒカクはイズナと同い年の忍で小さい頃からイズナとマダラとは割と仲が良い。
『そ、そっか……そうだよね。イズナももうお年頃だもんね……そっかそっか。恋人かぁ……うん、そうだよね!』
何やら一人で呟いてセンリは明るい表情になった。単純で良かったとイズナは心の中で思って、笑った。
「明日休みだから早速荷物を運ぼうと思ってる。そんなに多くないしすぐ終わるだろうけど」
『ん、そっか。じゃあ私ちょっとイズナの洋服まとめてくるよ!』
センリは思い付いたようにそう言って立ち上がった。洋服関係はセンリが洗濯して分けておいたりしているので、その方がありがたかった。
「ありがとう、センリ姉さん」
センリは『いえいえ』と言って箪笥がある部屋へと向かって行った。センリが廊下を歩いて行く足音が遠ざかるとふう、とイズナがため息を吐いた。
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