木ノ葉隠れ創設編
-弥彦と小南と長門-
それから自来也は子ども達に生きる術を教えながら弥彦の言った事を何度も思い返していた。
『自来也』
夕食の為の魚を前にし、準備をする自来也の手が止まっている事に気付きセンリが名前を呼んだ。
自来也がその事についてこの頃考えている事は薄々センリも気付いていた。
「あの子の思想を…どうにか変えてやる事は出来んのでしょうか…」
弥彦の思いを理解できない自来也では無かったが、やはりそれを正しく導いてやりたかった。
センリは俯く自来也の背に手を当てる
『大丈夫。出来るよ。弥彦も、絶対分かってくれるから。だから、私達がそれを教えなきゃ。まずあの子達の心をきちんと受け止めて、そして私達の方から伝えなきゃ』
「センリ様……」
センリの瞳を見て、自来也は小さく頷く。いつか自分に教えてくれた時と同じく、センリの瞳は真っ直ぐだった。
「そうですな…まずはワシの方が、あの子達の本当の思いを受け止めてやらんといけませんな」
『そうだよ!自来也なら大丈夫。だってミナトは“自来也先生は大切な事をたくさん教えてくれた”って言ってたもの』
自来也は里に残してきた弟子の事を思い、クヨクヨは言っていられないと自分に喝を入れた。
しかしその時、小屋のドアが勢い良く開き、焦った小南が姿を現した。
「センリ先生!自来也先生!大変…!弥彦と長門が……!」
『!』
センリと自来也は目を見合わせすぐに裸足のまま走り出す。
小南に案内されたところへ二人が向かうと目に付いたのは地面に仰向けに倒れる大量の血に塗れた忍の姿だった。
その近くに弥彦が倒れ、長門は座り込んでいた。
「二人を連れてきたわ!」
小南と共にセンリと自来也が駆け付けると、弥彦は「うっ」と声を上げて起き上がった。
『大丈夫?』
センリが弥彦を助け起こす。見たところ大きな怪我は無いようだ。
「一体何があった?」
自来也は弥彦に鋭く問い掛ける。
「オレ達に…食料か金目のものを出せって……忍の残党が………そしたら、長門の奴が…」
倒れている忍の額当ては岩隠れのもので、すでに死んでいた。着用している服を見る限り中忍以上の忍だ。
長門や弥彦は術などは使えないはず。一体どうやって、とセンリと自来也が考えていると二人は同時にある事に気付いた。
放心したように息をする長門の前髪から見えたのは、センリの記憶にもよく残っていたものだった。
『(この眼………輪廻眼…!)』
何重にも渦を巻いたその瞳は、紛れもなく輪廻眼だった。
センリがチラリと自来也を見ると驚いた表情で見返した。反応を見る限り自来也も輪廻眼の事を知っているようで、三人に気付かれないよう二人は意味ありげな視線を交わした。
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