- ナノ -


木ノ葉隠れ創設編

-弥彦と小南と長門-


「いただきまーす!」


その日の食事には川で取れた大きな魚だった。自来也が火遁で焼き上げた魚はこんがり焼けて美味しそうだ。


「自来也先生!オレ、釣りのコツ覚えたぜ。センリ先生みたいに掴み取りはまだ無理そうだけど!」

『あの技はめちゃくちゃ難しいからね〜!出来るようになったら弥彦はもう魚王だよ』

「あははっ、センリ先生ってば。魚王って何?」

『魚王って言うのはその名の通り魚の中の王だよ!……あれ、それじゃ半魚人みたいになっちゃうかな…』


弥彦とセンリの会話に小南は楽しそうに笑い、自来也もその様子を微笑ましげに見つめていた。


「!」


自来也はふと動きを止め、目の前の長門を見る。
長門はうっうっ、と嗚咽を漏らしながら涙を流していた。


「長門、どうした?」

弥彦が突然泣き出した長門を怪訝そうに見る。


「…家族の事……思い出しちゃって…そしたら……」

「泣くな!男だろ!そんなんだから雨隠れの男は弱虫だと思われる!」


弥彦は声を荒らげて強く机を叩いた。センリは長門の背中を摩ったが、弥彦は納得いかないようだった。


「雨隠れを囲む三大国は今は安定していないがの。この戦争もそう長くは続かん」


自来也は申し訳なさそうに言った。大きな戦いを繰り広げているのは雨隠れに隣接している木ノ葉、岩、砂の三里だったという事は確かだった。


「お前たちが大きくなる頃には国々もわかりあい、ここにも平和が…―」

「そんなの勝手だよ!」


弥彦は両手を机に突き付けた。


「オレ達は皆家族を殺されたんだ!分かり合うなら相手を同じ目に合わせてからだ!それが痛み分けってことだろ!?」


弥彦の目は怒りに燃えていたが、何の罪もない両親を失った事を考えればそれも当たり前だった。


「でも……そんなの無理だって事くらい分かってる。だから戦争は無くならないんだ!」

弥彦の表情が沈痛に変わり、小南も長門もそれを見つめた。


「…雨はキライだ。この国はいつも泣いてる……弱虫だ。オレがこの国を変えてやるんだ。みんなを守る!」

『弥彦…… 』


弥彦の目は強い覚悟を宿していた。

センリにはその考えが物悲しくも思えたが、それを言える立場ではなかった。

自分達の起こしている戦いのせいで子ども達が犠牲になり、その子ども達が他の国を恨むのは仕方の無い事だ。しかし同じ痛みを知らさなければと考える弥彦はどこか悲しい雰囲気を纏っていた。
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