- ナノ -


木ノ葉隠れ創設編

-扉間とイズナの最期-


『天気が怪しくなってきたね。みんな大丈夫かな』


扉間達を待っているセンリが火影室の窓から昼下がりの空を眺めて言った。マダラはチラリと外を見てまた机に置かれた地図に目を戻した。


「この時期に雨など降らんだろう」

『ま、そうだね。自来也と大蛇丸くん達ももうすぐ帰ってきそうな感じだし……少し一息つけるね』


マダラは一度地図のある箇所に印をつけてペンを置いた。


「勘か?」


マダラが問い掛けるとセンリは少し驚いたように『よく分かったね』と言ったがそれはセンリの性格を考えればすぐに想像のつく事だった。


『何か、そんな気がする』


これまで共に過ごしてきたからなのか、本当にただの予感なのかはマダラにも分からなかったが、センリがそう言うならそのような気がした。


『今日は負傷者も帰ってきてないし、よかった』


戦争が無ければ子ども達と走り回りたい気分だとセンリは思って外の様子を眺めていたが、ふっ、と不意に里に帰還するチャクラを感じた。


『………――――マダラ』


マダラは外の様子をじっと見つめているセンリの様子に気付き、何事かと同じ方向を見た。


『ヒルゼンのチャクラだ』


センリが一番最初に感知したのはヒルゼンの特徴のあるチャクラで、その他にも多数のチャクラが里に入ってくるのを感じた。


「帰ってきたか」


センリは窓の外からマダラに視線を移し、コクリと頷いた。


センリの予想通りそれから何分もしないうちに火影室のドアが少々乱暴に開けられ、息を切らしたヒルゼンが姿を現した。その後からはダンゾウ、コハル、ホムラ、カガミ、トリフの順で同じように呼吸を少々荒らげながら次々に現れる。

会談はどうだったのかとセンリが問いかけようとしたが、まるでそんな雰囲気ではない。


「交渉は決裂です。会談時に突然雲隠れの忍がクーデターを――――――!」


マダラとセンリの顔色が変わり、一体どういう事なのかと視線を見合わせた。


「すぐに雲隠れの里からは脱しましたが…二代目様とイズナ様が囮に…!」


ヒルゼンの顔には冷や汗が幾つも浮かんでいて、あのダンゾウでさえ焦った様子だった。


『みんなは怪我はないね?それなら少しここで待機して休んでいて。マダラ、行くよ。すぐに出れる?』

「もちろんだ」


センリは直ちにそう言うとマダラもすぐに意味が分かり短く頷く。


「ですが…!」


二人のところに向かう気だと気付いてダンゾウがセンリを引き止める。相手は扉間とイズナでさえ手こずる相手だ。見付けられたとしても戦闘で勝つのは難しいとダンゾウは考えていた。


『大丈夫、必ず二人を見付けるから。ヒルゼン、ちょっと来て』


深刻そうなダンゾウの表情を見てもセンリは安心させるように微笑んで、マダラと共にヒルゼンを連れて火影室を出た。

家々の屋根を飛びながらセンリはヒルゼンに問い掛ける。


『ヒルゼン、追っ手は?』

「雲隠れの金角部隊、約二十名…かなりの手練です…!」

『クラマのチャクラを取ったっていう金角銀角兄弟だね。扉間くん達と別れた場所は?』

「霜の国と湯の国の国境付近です!」


後ろからマダラが追い付いてヒルゼンの隣を走る。


「雷の国を出ている事を考えると…火の国内にいるかもしれん」


湯の国まではそれ程離れてはおらず一日走り続ければ辿り着ける距離だが、雷の国となると一番まずい。二人が火の国内にいる事を願うばかりだった。


『ヒルゼン、ありがとう。私達が帰ってくるまで里をよろしくね』

「分かりました。どうか気を付けて…!」


ヒルゼンの今にも泣き出しそうな顔が何を意味しているのか分かってはいたが、センリは大丈夫だと笑みを浮かべてみせた。

ヒルゼンの姿が視界から消え、速度を上げる。


里を抜けるまではすぐだった。センリは太陽の位置を見る。午後二時を過ぎたあたりだ。出来れば日が出ているうちにどうにか二人を見つけたい。マダラもセンリの速度に合わせ、隣につく。


「どうやって探す」

『防御結界を一旦外して、感知結界を張る。あれなら半径百キロくらいはいけるから』


センリは走りながら片手で印を結ぶ。感知結界を張ったのかとマダラは考えたが、相変わらずセンリの能力は忍の域を超えている。

雲隠れに向かうルートは大体決まっているので、そこに沿って感知結界を張りながら探せばすぐにでも二人は見付かるだろう。



それは生きていれば、の話だったが、センリもマダラもただひたすら二人の気配を探して走った。
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