- ナノ -


木ノ葉隠れ創設編

-第2次忍界大戦-


二十歳になったばかりの大蛇丸達も戦場へ行かねばならなかった。その為に旅に出ていた自来也も里に戻り、大蛇丸と共に早々に戦場へと旅立って行った。

心配そうに見送るセンリに大蛇丸は何処と無く自信あり気な笑みを見せていた。


「心配なさらないで下さい。この自来也でも一応それなりにやれますから」

「おい大蛇丸、それなりたぁ何だ!失礼な」


それは大蛇丸なりの優しさで、センリもふふ、と笑みを漏らす。


『うん、分かってる。それなりには強いからね』

自来也と大蛇丸も同じように戦闘服を身に纏い、木ノ葉の額当てが太陽で反射していた。


「センリ様まで!」


自来也も大蛇丸も戦争は未経験だったが、強い覚悟があった。



フガクはまだ十代だったが、自ら戦場へ赴くと志願し、大人達に混じって砂隠れ方面へ向かった。

特に優秀な医療忍者は里に残り、負傷者の治療に当たるというのが今回のやり方だった為、優れた医療忍術を扱える綱手はセンリの分裂体らと共に里で待機していた。



その後だんだんと戦争の規模が見えてきた。

自里の状況に大いに不満のある砂隠れは、領土拡大の為に他の国を侵略したいと考えていた。その動きに非常に反発していたのは岩隠れで、“やられる前にやる”という思想の元積極的に戦闘に参加していた。


『今の所は岩隠れと砂隠れが主に大きな戦いを起こしてるみたいだけど……この先、木ノ葉を含めたこの三つの国に囲まれてる草隠れ、石隠れ、雨隠れは特に警戒した方がいいね』

「そうだな。現時点でそちら側の国境付近にほとんどの忍を派遣している。マダラはここ……この地点にヒルゼンの小隊と共に先に向かってくれ」


扉間が広げた地図をトントンと指差して言った。マダラは短く頷く。


「その後ボクと扉間も向かうから。姉さんの分裂体はあとどのくらいで戻る?」


イズナの口調は普段よりも少し早口だ。センリは少し考えるように火影室の天井を見た。


『小国の小さい集落に避難勧告を出して、結界も何ヶ所かつけるだけだから……あと三日もすれば帰ってくると思うけど』


自分達の里を守る戦いで必死だったが、変わらず弱い立場の者を守ろうとするセンリの姿を見て、マダラとイズナは一瞬顔を見合せた。


「避難後はどうする?」
扉間が問いかけた。

『ひとまずは火の国内の孤児院や私がお世話になってる村に移動してもらう。それから私の影分身達に物資を運んでもらえば、とりあえずは大丈夫だと思う。資金は大名や資産家が協力してくれるみたい』


いつの間にそんな状態に持ち込んでいたのやら、扉間は驚いて面食らったが、正直センリに疑問を抱くだけ無駄だった。


「お前なら千人でも一万人でも影分身を創り出せるだろうからな」

苦笑しながらマダラが言った。センリは少しだけ笑みを返す。


「それなら、お前の分裂体が戻ってきたら怪我人治療の方にも協力できるか?」

『オッケー!』


扉間の問いに敬礼を返したセンリを見てイズナは無意識に口角を上げていた。



前回の戦争を経験し、そこで蓄積された知識や戦略を存分に生かし戦っている手練部隊がいる所がいくつかあった。マダラはそのうちの一箇所に派遣され、前線に加わった。


扉間の言う通り、里には優秀な医療忍者が増え、里で行われる治療も前回より圧倒的に精度が上がっていた。しかし戦える忍の人数が大幅に増えた分、怪我人も多く出る。負傷者や、戦闘の規模でいえば前回の戦争よりもかなり大きいものだった。


扉間としてはやはりセンリは里において負傷者の治療に当たってほしかった。センリの医療忍術の精度は群を抜いている。戦争が始まってから、木ノ葉は戦闘力でいうとかなり優勢の位置にあったので、前線に出て戦うより怪我人の治療を優先した。

とはいっても扉間は戦場へ送り出す忍の数を決して減らさなかった。


「恐らく、前線に精鋭の忍達を多く送り、死者が出ようともそれを緩めず、数で攻めて早々に他里に降参させる、という考えなのだろう。扉間らしい、効率的で非情なやり方だな」


マダラには扉間の戦略が分かっていて、そしてそれが一番手っ取り早く戦争を終わらせられる手段だとは分かっていたが、どこか嫌味を含んだ口調でもあった。


しかしその本人はあまり里には留まらず、自ら戦場へ駆け付けていた。

そこで大いに活躍したのは扉間が編み出した術の数々だ。

先の大戦の時にも使用していた穢土転生は、この頃には他里の忍達を震え上がらせる程になっていた。これは生きた生贄と、蘇らせる者のDNAが必要であり、術自体も扉間にしか行使できなかったし、扉間も他者にやり方を教える事はなかった。

敵の一人を生きた状態で捕え、それを生贄にして他の者を蘇らせる。蘇らせた人間自体には何の力も無いが、この術の使い方にいたってはその方が良いとの事だった。

扉間は、蘇った穢土転生体に起爆札を仕込み操り、敵の陣地へと送り返していた。すると味方の姿に敵達は安堵し、その瞬間には爆破をするという手順だった。

それに、蘇った者に相手方の作戦や、それぞれの忍の個人的情報を無理矢理喋らせるという事も出来た。写輪眼があれば尚良しだ。うちは一族がその場にいればこの作戦は全くの落ち度がなかった。

あまりにも非情なこの術にセンリもさすがにいい顔をしなかったが、だからと言ってそれを使うなとも言えずにいた。

木ノ葉が優勢にたっているのはそのお陰でもあったからだ。扉間にとっては木ノ葉の里を守る事が最重要事項だ。木ノ葉の忍を犠牲にせず、尚且つ効率的な術でもあった為、マダラもイズナも首を振る程度だったが、やはりセンリにはどうしても良い方法とは思えなかった。

しかし扉間が里を守るために非情に徹しているのも事実で、その根底には早く戦争を終わらせたいという考えがあるからこそだった。
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