木ノ葉隠れ創設編
-扉間とイズナの最期-
扉間の手から完全に力が消える。
薄く開かれたまま光を失った瞳の上に手のひらを当てて、センリはそっとその瞼を閉じた。
動かない遺体を前に、扉間とイズナが死んだという事実が突然二人の目の前に現れる。
「(扉間………お前、やはり…センリの事を…)」
一つの予想が弾けて消えたが、マダラは何も言わなかった。不快な感情は、全く湧かなかったからだ。
二人の手をぎゅっと握ったままのセンリの肩に静かに手を乗せるとその体がピクッと動いた。
『二人とも、すごく頑張った』
二人の顔を見つめたままセンリが誰に言うでもなく呟く。マダラは隣から、優しくセンリの涙を拭った。センリが切なげに鼻をすする。
「ああ、立派だった」
マダラは心からそう思っていた。誰もが二人のした事を侮辱などしないだろう。二人のおかげで守られた命がいくつもあるのだから。
『きっと、イズナは一緒に戦いたかったんだね、扉間くんと……。同じ目線で、同じ位置で、同じものを見られたのかな……』
センリは動かなくなった弟の顔をそっと撫でた。どこか誇らしげな、顔だった。
「イズナはこう見えて頑固だ。“友”が命を懸けようとしている時に、自分だけ置いていかれるのは納得いかなかったのだろう。共に戦う道を選んだのは、イズナの強い意志だ」
マダラを見上げるセンリは目を潤ませてはいたものの、もう泣いてはいなかった。
『さすが、私達の弟だね』
マダラは弟の顔をそっと見下ろした。最期の顔を見るのは二度目だ。
だが今回は不思議な事に、怒りや悲しみ、憎しみよりも、感心と尊敬の念の方がより大きく感じていた。自分の弟が選んだ道は立派で、とても誇らしかった。
『木ノ葉に……連れてってあげよう』
当たり前だというふうにマダラが頷く。
二人とも、まるで眠ったように穏やかな表情だった。お互い血塗れだったが、手を重ね合わせ、笑い合うように顔を傾けているイズナと扉間はただの友の姿だった。
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