木ノ葉隠れ創設編
-扉間とイズナの最期-
「オレがやります!」
凛とした、ヒルゼンの声だった。
「!!?」
「猿飛…」
「ヒルゼン、お前…」
仲間が次々に驚き、ヒルゼンを見つめた。
その時ダンゾウは自分の震えが止まったことに一番驚きを隠せなかった。
「心配するな!こう見えてもお前らの中では一番出来ると自負してる。死にはせんさ」
仲間達を安心させるようにヒルゼンは笑ってみせた。
ダンゾウは服を握る手にグッと力を入れた。心の中でホッとしている自分にイライラした。何のためらいもなく囮役を買って出たヒルゼンにも腹が立った。
「これから皆を頼むぞダンゾウ。お前なら…」
ヒルゼンは隣のダンゾウの肩にポンッと手を乗せたが、ダンゾウはそれを勢いよく振り払った。
「黙れ!オレが手を挙げようと思っていた!一人でいい格好をするな!囮役はオレがやる!」
「ダンゾウ…」
あまりにも大きなダンゾウの主張にヒルゼンは思わず手を引っ込める。
「オレの父も祖父も、戦場で忍として死んだ!自己犠牲は忍の本分…!」
イズナは扉間の出方を伺っていたが、ここでやっとその口が開いた。
「囮役はもちろんオレが行く。貴様達はこれからの里を守っていく、火の意志達だ」
思っていた通りの事が扉間の口から聞こえてイズナは分からないように口角を上げた。しかしすぐにダンゾウが反対した。
「ダメです!あなたは火影なんですよ!」
「ダンゾウよ。お前は何かある事にサルと張り合ってきたな…。だがこの場で必要なのは仲間同士の結束だ。私的な争いを持ち込むな」
扉間の的確な意見にダンゾウは唇を噛んで俯いた。
「それに決断が遅かったのは事実だ。危機的状況に囚われずに冷静に判断するのが忍。学校でもそう教えたはずだ」
イズナの言葉にダンゾウは更に言葉を詰まらせる。全てが図星をついていた。
「とにかく、ダンゾウ、サル。その歳で焦る事はない。いずれその時が来る。その時までその命…とっておけ」
静かにそう告げて扉間は音もなく立ち上がった。
「サルよ……里を慕い、お前を信じる者達を守れ。そして育てるのだ。次の時代を託す事の出来る者を。案ずるな、お前が迷った時には足元を照らす光が、お前の側に必ずある」
側近として嫌でも扉間を側で見てきたイズナには横顔がどこか笑っているようにも見えた。
「明日からは……お前が、火影だ…!」
全員が驚いて目を見開いたがイズナだけがそれを分かっていたように扉間に続いて立ち上がった。
ヒルゼンは驚きはしたもののすぐに状況を理解して「はっ…!」と頭を下げた。
「では、行け。全力で木ノ葉に向かえ」
皆は覚悟を決めたように頷き、次々にその場から消えて行った。
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