木ノ葉隠れ創設編
-扉間とイズナの最期-
雲隠れとの会談の真っ最中。示談はいい方向へと進み、あとは互いに契約の印を記すだけだった。
突然襲撃を受けたのだ。
クーデターだ。
襲ってきたのは雲隠れの忍だった。穏健派の二代目雷影を良く思わない、協定に反対をしている忍達による集団クーデターだった。
扉間一行は突然の事に驚嘆したものの、すぐにその場を脱し、逃げだす事に成功した。
しかし雲隠れの勢力は思った以上のものだった。バラバラに飛び出した扉間小隊だったがすぐに合流し、集まって作戦を立てねばならなかった。
辺りは鬱蒼と茂った森林地帯。
一際大きな木の幹に隠れるようにして全員が集合していた。夜になりかけた森の中は薄暗く、不気味だった。
扉間が瞳を閉じ、地面に指の先を当てて気配を感知する。
「囲まれたな……敵は…二十………。この追跡力からして雲隠れ、手練の金角部隊か」
雲隠れの金角、銀角兄弟は他里でも誰もが知っている忍だった。クラマがミトに封印される前にクラマに戦いを挑み、そして九尾の力を手に入れて帰ってきた極めて実力のある忍だった。センリやカルマがいれば分かるだろうが、クラマのチャクラを少しでも有してしまった人間には並大抵の忍では勝てない。
「こちらは二代目様を含めて八人……これじゃとても」
「そんな弱腰でどうする!ホムラ」
敵の力量を知っているホムラが諦めたように呟いたがコハルはそれを一喝した。
「敵はまだこちらの位置をハッキリとは把握出来ていない。ここは待ち伏せして不意をつき、逃げ道の突破口を……」
「無理だコハル。この場合…誰か一人が陽動で気を引くしかない」
コハルの考えにカガミは異論を唱える。
イズナは隣で何も言わずにその言葉を聞いている扉間を横目で見た。イズナの視線に気付いたのかそうでないかは分からなかったが、扉間は相変わらず無言だった。
「囮役か………まず命はない。誰が…」
切羽詰まったトリフが冷や汗を流した。
辺りに沈黙が訪れた。
暫くは誰も口を開かず、風を受けて木の葉が微かに音を立てる。
ダンゾウは鋭くヒルゼンの顔を窺った。
「(オレは忍だ……忍らしく戦場で死ぬと決めていた…!猿飛……お前は今、何を考えている?お前にはその覚悟があるのか?)」
ヒルゼンは表情を崩さず、何かを見つめる様に真っ直ぐ前を向いていた。
ダンゾウの膝をつかむ手のひらが震え、それが全身に伝わらないよう必死で力を込めた。
「(言え!言うんだ!オレは――)」
ダンゾウはきつく目を瞑る。体を走る震えが止まらなかった。
「(どうした!?オレがやるって、何で…!)」
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