- ナノ -


木ノ葉隠れ創設編

-千年前の予言-


綱手が少女期を過ぎて完全な大人に近づく頃には、大蛇丸と共に上忍の仲間入りを果たしていた。里の忍の中で抜きん出ている存在というのは稀に現れる。その中の一部に綱手と大蛇丸の存在はあった。


その他にも名だたる一族の中で実力のある子ども達は多かったがうちはもその括りに入っていた。

マダラはカガミや、まだ幼いフガクにも特に目をかけていたし、里の為に尽くしている彼等に扉間も期待をしていた。


「中々良い太刀筋だ。しかしまだ踏み込みが浅いな」


汗を流し、今にも地面に膝をついてしまいそうになっているフガクを見下ろして息切れもしていないマダラが鋭く言い放った。


「は、はい…!」


フガクは上がった呼吸をどうにか押さえ込んで返事をする。

アカデミーを卒業した頃から稀にフガクの修業に付き合ってやっているマダラは変わらず厳しかったが、それでも会う度にフガクの実力は確実に増していた。今の一族の中では自分とイズナを抜いて一番強いのではないかと予想するくらいだった。



『もうすぐ日が暮れるよ』


夕日に目を細めると赤く染まったセンリの姿が見えてマダラは写輪眼を通常の瞳に戻す。


「次に会う時までには改善しておけ」

『全く、相変わらずマダラは厳しいなあ。フガク、大丈夫?』


センリは息切れをしているフガクに水の入った竹筒を渡す。フガクは礼を言ってその水を一気に口に含んだ。夕方とはいえ夏の今頃はまだ気温も寒くはなく、少し動けば汗ばむくらいだ。


「ありがとうございます。でも…こうしてマダラ様が修業に付き合ってくれているだけで名誉な事ですから」

「その通りだ」


マダラがまじまじとセンリを見て言うので苦笑いを浮かべる。

フガクは昔から年の割に責任感が強く礼儀正しかったが少年になってもそれは変わらなかった。


『フガクはいい子だね』

「いえ、そんな事は…」


センリが感心して褒めるとフガクはふいっと顔を逸らした。


「そうだ。このくらいその歳なら思って当たり前の事だ」

『まったくもう、すぐそういう事言う…』


厳しいマダラに呆れてセンリが返すが当の本人は気にしていないようでさっさと帰り支度を始めていた。


「帰るぞ、センリ」

『分かったよ…。フガク、またね』

「あっ、はい。ありがとうございました」


センリはフガクに手を振るとマダラの後を追いかけて演習場を去っていった。

センリに歩幅を合わせていつもよりゆっくり歩いて行くマダラの姿をフガクは見送った。


「今日の飯は何だ」

『今日はオロシさんからサービスしてもらったからトマト祭りだよ。それからお酒も貰ったから。あのマダラが気に入ってたやつ』

「ほう、それはいいな」



夕日に照らされながら帰っていく二人の会話が少しだけ聞こえた。

センリと話している時のマダラの声音は誰が聞いても分かるくらい穏やかで、優しかった。まさか先程までの鬼のように扱いていたマダラのものとは思えなくてフガクは無意識に唇を上げた。
[ 170/230 ]

[← ] [ →]

back