木ノ葉隠れ創設編

-千年前の予言-


センリは里の子ども達と遊ぶ事に熱心だったが、里の相談役としての仕事もきちんとこなしてはいた。大体はマダラが解決してくれているがそれでも里の政権にはセンリの意見や実力が必要になる時があった。

火影室を訪れる度に扉間とイズナの確執は消えていっているように感じていたし、扉間の非情ともとれる考えが里の為に役に立っている事も嬉しい事ではあった。



イズナと扉間とは誕生日が近く、二人とも同月生まれだった為、その年の二月の半ばには一緒に誕生日をお祝いしようとセンリは小さな誕生会を開いていた。

センリが亭主と知り合いの居酒屋を予約して、全ての仕事が終わったのはそれなりに遅い時間だったが、ヒルゼンとコハルとホムラも駆けつけてくれた。仕方なしにといった様子だったが誘いをかけるとマダラもついてきてくれ、扉間が火影になってから初めての賑やかな宴となった。


折角だからとマダラとセンリはイズナと扉間に酒を勧め続けていると元々そこまで酒に強くなかったイズナは開始一時間しないうちに頬を赤らめ普段からは考えられないくらい陽気に振舞っていた。あまり呑ませ過ぎると明日の仕事に影響するのではとセンリは制していたが、イズナは自分から焼酎の入った徳利を傾けるまでになってしまった。

しかし扉間も普段は見せない楽しげな笑みを浮かべていたし、ヒルゼン達も楽しんでいたのでいいか、とセンリは困った様に微笑んでいた。



「…だーから、お前は昔から目付きが悪すぎるんだよ。もう目にキツい性格が現れてるよ」

「酷い言い草だ。これは生まれつきなのだから仕方なかろう」

「いーや、それにしたって悪すぎる。本当に兄と血ィ繋がってるのかよ?そんなんだから女も寄ってこないし、結婚も出来ないんだ」

「何だと?それはお前も同じだろう」

「お前と一緒にするな!ボクは結婚“出来ない”んじゃなくて“しない”だけだから」

「それならオレだってそうだ」


「おい、お前ら二人とも……呑み過ぎじゃないか?」


若干呂律の回っていないイズナと扉間の口論を見兼ねてマダラが制裁に入るがイズナはその手を振り払った。


「ちょっと兄さんは黙ってて。これはボクと扉間の問題だから」

「その通りだ。邪魔は感心せん」


扉間も白い頬を赤らめてマダラをじとっと見た。他の客は気付いていないものの、居酒屋で火影と側近が酔って喧嘩を始めたりしたならそれこそ警務部隊の御用だ。

マダラは大きくため息を吐いて、どうにかしてくれというふうにセンリの方を見る。


『まあまあ、別に結婚するだけが人生の全てじゃないよ』

酒を飲んでいないセンリが微笑んで二人に言い聞かせる。


『それに二人ともかっこいいんだからこれからだって期待出来るよ』

「そうですよ。心配しなくても御二方にならすぐにでも嫁になりたいと希望する者が現れますよ」


酒を呑んで普段より明るくなったコハルがセンリに同調すると、扉間とイズナは互いの顔を睨み合うように見た。


「……こんな奴に求婚するなんてよっぽどの変態か阿呆だね」

「他人にケチをつけるような奴こそ求婚されるとは思えんが」

「言うじゃないか扉間。ここで決着をつけてやってもいいんだぞ」


『何の決着?いや扉間くんは何で静かにクナイを出してるの!』


イズナより幾分か冷静に見えた扉間だったが、冗談なのか本気なのか分からなくなってセンリは慌ててそのクナイを降ろさせた。


「御二方は仲がよろしいですな」


少し焦ってはいたが酔っ払っているヒルゼンが何気無しに言うとイズナがキッと睨み付けた。ヒルゼンはひっと息を呑む。


「言っておくけどボクと扉間は仲良くなんてないからな」

「それは随分な言い方だな。オレはお前の事を側近として大いに信用しているというのに」

「そ、それとこれとは話が別だろ!」


扉間は真面目な表情で信用している節を伝えるとイズナは口ごもってしまった。やはりどうやら口の達者さと感情の制御のレベルは扉間の方が上のようだった。

イズナの口の悪さは自分を傷付ける為ではなく、少しでも心を許してくれている証だと薄々勘づいていた扉間は、イズナの暴言にも多少の事では揺らがない。


『そうだよ。扉間くんはすごくイズナの事を頼りにしてるんだから』

畳み掛けるようにセンリが続けるとイズナの勢いはまるで無くなってしまった。


「別に…それなら……これからも力を貸してやらない、ことも、ないけど」


未だに不機嫌そうな表情だったがどことなく嬉しそうな弟の気持ちが分かってマダラはそっと口角を上げた。

自分と柱間との関係のようにはいかなくとも、扉間とイズナは彼等なりのペースで試行錯誤しながら共に歩んでいるのだろうと思うと柄にもなくマダラの中に熱い感情が込み上げた。


「(柱間…お前にも見せてやりたかった)」


幾分静かになったイズナと扉間とがまた口論を始めた様子を眺めてマダラはかつての親友を思った。
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