- ナノ -


木ノ葉隠れ創設編

-千年前の予言-


同じ頃、術を誤って行使していまい運良く助かった自来也だったが、新しい術を会得する修業を行っているらしかった。遠い昔、センリも一度訪れた事のある蝦蟇の里、妙木山だった。



『カルマ、妙木山って…』

「そうだな。御主なら覚えておるだろうが…ハゴロモに仙力を教えていたあのガマ丸が居るところだ」

『蝦蟇の里の事ちょっと忘れてたな…』


何年ぶりかにカルマが外に出てきてセンリが話してみるとそこへ行けないかと話が進み、自来也にお願いしてみる事にした。

すると幾日か経って自来也がお許しが出たとセンリに言いに来て共に蝦蟇の里へ訪れる事になった。

口寄せの術は契約した忍動物などを呼び寄せる術だったが、妙木山には蝦蟇達に逆口寄せされて飛び、センリが次に目にしたのは懐かしい、記憶に残る風景だった。


「センリ様、こっち」


不思議な力に溢れている空気に触れてセンリは当時の事を思い出していたが自来也が手招きをしているのでそちらに向かう。

大きな開けた洞窟のような場所もセンリの記憶にあるものだった。

自来也に案内されて向かうとそこには今まで見た事もないくらい大きな蝦蟇が座っていて、その前にはそれと比べると豆粒にも見える二人の蝦蟇が左右に並んで待っていた。


「大蝦蟇仙人、センリ様を連れてきました」


どうやらこの蝦蟇の国で一番偉い蝦蟇のようで自来也は地に膝をついていた。


「そんな事言ったって分かる訳なかろうが!このジジイのボケ具合って言うたらもう…」

「母ちゃん!そげな言い方すんなといつも言ってるじゃろ」


反応したのは小さな蝦蟇の方で、どうやら夫婦らしく痴話喧嘩を始めそうになっていた。だがセンリはその奥に座っている大蝦蟇を見てふと記憶が蘇った。

その蝦蟇には見覚えがあった。特徴的な瞳、首にかけた“油”の首飾り。センリの思い出と合致してつい驚きに目を見開いた。


『えっ、ガ、ガマ丸…!?』


ハゴロモ達と過ごしていた時に世話になっていた蝦蟇のガマ丸の面影を感じたのだ。

センリの声に大きな蝦蟇は閉じていた瞳を薄く開き、そして僅かに驚嘆する仕草をした。


「お前さんは……まさか、」


しかし驚いたのはどちらかと言うと夫婦の蝦蟇の方だった。


「この地でまだ生きておったのか………センリ」


地の底から響いてくるような声にセンリは確信した。


『ガマ丸!』

センリはそうと分かると顔を輝かせた。ガマ丸はかなり年老いてシワだらけだったが、センリにはハッキリと分かった。


「と、父ちゃん!大ボケジジイが、ボケておらんで!」

「これは…今日は嵐でもくるんか?」


夫婦は驚きというより焦って困惑していた。
夫婦が言うには大蝦蟇仙人はいつもであれば人の顔など覚えていないらしかった。それが今何の迷いもなくセンリの名を口にした驚きで自分達の開いた口が塞がらない。


「死んだと思っておったが……それならば鳳凰も一緒か?」


センリがウンウンと大きく頷くとその体が突然発光し、瞬く間に辺りが明るい光でいっぱいになった。光が消えたと思ったらセンリと自来也の隣にはカルマの姿があった。人間ではなく、不死鳥の姿だ。広い洞窟にギリギリ収まりきる程の白銀の巨鳥を目にして自来也は尻餅をついていた。


「久しいな、ガマ丸……いや、大蝦蟇仙人よ」

「やはりまだこの娘についておったか…」


突然の状況展開についていけずに自来也はカルマとガマ丸とを交互に見つめていた。


「ま、まさか、伝説の不死鳥と大ボケジジイは知り合いやったんかい?」

「母ちゃん、こりゃ嵐どころではないかもしれんわ」


夫婦が絶句している中ガマ丸とカルマはお互いの姿を約千年ぶりに目にして懐かしんでいるようだった。


「やはり、この場所は実体化しやすい。ガマ丸…お前も老いたものだな」

「お主も死んだと思っておったんでな…まさか生きているとは思いもせんかった」


若干会話が噛み合っていなかったがガマ丸はゆったりとした口調で、それでも驚きを隠せなかった。

「色々あってな……またこの地でセンリと共に生きておるのだ」


カルマは足元のセンリを見下ろす。


『まさかガマ丸が偉い仙人になってたなんて……びっくりだよ』

ガマ丸はハッ、ハッ、と異常にゆっくりと笑い声を上げた。


「やはり……あの時の予言はお前さんの事だったのかもしれんのう」


ガマ丸の脳内にはかつて見た予言の夢が鮮明に思い出された。

“白銀の女神がこの世を救い、そしてその時、九匹のケダモノの名を呼び戯れる碧眼の少年が現れる”

忘れかけていた記憶はセンリの出現と共に再生され、それが確実なものになった。


再びこの地で自分の前に現れた白銀の女神を目にしてガマ丸は確信していた。


「(もしかすると…この娘は本当に……)」


世界を変えるのかもしれない。

確信の衝動が湧き上がったが、それを口には出さずに美しい笑みを浮かべるセンリを見下ろしていた。
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