木ノ葉隠れ創設編
-千年前の予言-
しかしその後大蛇丸の両親が何者かに殺害されるという悲惨な事件が起こってしまった。二人は里の外へ出ている時で通りがかった木ノ葉の忍が見つけた時にはもうすでに息絶えていたという。
すぐに事件として犯人を探すよう任務も出していたが中々真相が掴めず、腹回りに大きな傷痕があった事から獣の可能性もあると判定された。
大蛇丸は元々物静かな方だったが、それを区切りに以前より修業に力を入れるようになっていった。色々な術を習得しようと努力するのはいい事だが、ヒルゼンはそれが間違った方向に行かないよう注意を払っていた。しかしいくら修業に夢中になっていようと心を許せる友である自来也や、センリの前では安心したような笑みを見せる時もあった。
千手桃華の命日にはセンリは必ず霊園を訪れていた。その日は雨でも降り出しそうな生憎の曇り空だったがいつものようにセンリは慰霊碑の前で手を合わせていた。
『…?』
僅かな風の変化を感じて、閉じていた目を開けてチラリと横を見ると少し離れたところに大蛇丸が立っていた。両親の墓参りに訪れたらしい大蛇丸は花を片手に抱えていた。センリは腰を上げて大蛇丸のところに向かった。
『私も、手を合わせていいかな』
大蛇丸が墓の前に花束を置くとセンリが問い掛ける。大蛇丸はその問いに大きく頷くのでセンリは先程のように手を合わせ、目を閉じた。
次に目を開いて大蛇丸の方を見ると蛇を思わせる瞳がじっとセンリを見つめていた。
『どうしたの?』
不思議に思ってセンリが首を傾げると大蛇丸はハッとして少しソワソワした後何かを思い出したように着物の胸のポケットに手を伸ばした。何かを取り出しセンリの前に出す。
「これ…センリ様にあげようと思って」
大蛇丸の手のひらに載っていたのは鱗を象った白い皮だった。
『これ…蛇が脱皮した後の』
センリは白蛇の脱皮した皮だとすぐに気付き興味深そうにそれを観察した。
「幸運と再生を表してるんだって。不老不死の象徴だって猿飛先生が言ってた」
いつもより穏やかに話す大蛇丸の顔をセンリは見つめる。
「だから、センリ様にピッタリだと思って。これ」
大蛇丸はそれをセンリに差し出す。
『私にくれるの?』
「これ、二つ目だから」
大蛇丸が頷くとセンリはその皮を受け取った。脱皮した皮はとても薄く、慎重に扱わないと破けてしまいそうだった。センリは目の前でそれを眺めて『ありがとう』と大蛇丸に微笑んだ。
『蛇の脱皮は運がいいともいうもんね。大事にする』
センリはそれを丁重に腰につけたポーチのポケットにしまい込むと大蛇丸も満足そうだった。
「猿飛先生はボクの両親はいつかまたどこかで生まれ変わるんじゃないかって」
『ん、そうだね。もしかしたら蛇になってそこの木の間からこっちを覗いてるかも』
センリが霊園の周りに生えている木々を指差すと大蛇丸は微かに口角を上げた。
「だったらボクも生まれ変わったら蛇になりたい」
『どうして?』
大蛇丸の言葉にセンリは瞬きを何度かして聞き返した。大蛇丸はすでにセンリと同じ位の身長になっていたが、中性的な顔立ちは変わらずで、その白い肌に僅かに色が見えた。
「だってセンリ様は蛇の事、好きでしょう?」
それでもセンリはまだ分からずにきょとんとしていたが大蛇丸はふっと微笑んだ。
「だったらボクは蛇になりたい。何度でも生まれ変わって、センリ様と同じになれる」
『大蛇丸くんは面白いこと言うね!』
センリはそれを大蛇丸なりの冗談ととったようだったが大蛇丸は何も言い返さずに穏やかに笑むセンリの表情を見つめていた。
大蛇丸はこの後もヒルゼン達と修業しなければならないのでセンリと共に演習場に向かっていた。
『自来也も同じ事言いそう』
「そうかな?」
『うん。蛇になれば女風呂覗き放題!とか言って』
「……自来也と一緒にしないで下さい」
大蛇丸は不機嫌そうに眉を寄せたがセンリは楽しそうに笑った。すると大蛇丸も可笑しくなって同じように笑って、演習場まで二人で歩いた。
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